車の顔つきFront Design

TCD’s Philosophy from the Chairman’s Study

201207cars

車にも顔つきがある。ヘッドライトやボンネット、ラジエターグリル等の形と配置は車にとって単なる存在ではなく、車に個性豊かな表情を醸し出している。
予々、私はそんな車達を擬人化して密かに楽しんで来た。目や口のデザインに”頼もしい奴だ””可愛い娘だ”と車の性質まで想像出来た。しかし最近、その表情に少々違和感を覚える様になった。
それは、一様に吊り上がった目、噛み付きそうな口、まるで人を威嚇する如き顔つきに起因している様だ。夜ともなればカッと見開いた目からHIDを発射し相手かまわず目つぶしを仕掛ける。まるで襲いかかろうとする獰猛なロボット怪獣さながらの形相だ。

車の性質を印象づけるためにデザインは重要な役割を果す。特にフロントデザインの在り方は、人と車の関わり方にも大きな影響を与える。
優しい人は愛らしい表情の車を、働き者は頼もしい表情の車を好むだろう。であるならば、恐ろしい目つき、威嚇する様な顔つきの車の場合はどうであろうか。逆説的だが所有者をその気にさせてしまうかもと、心配してしまう。
車の性質とオーナーの性格は密接な関係にある以上、車のデザインが人間のもつ攻撃的な潜在意識を刺激してはならない筈だ。

最近の車のデザイン。やりきれない社会環境にいらだつ人間の心理を模したものではあるまいが、デザインの進化、巧みなマーケティング戦略、トレンド等と簡単に片付けてしまってはならない様に思う。


山田崇雄 株式会社TCD 代表取締役会長、クリエイティブ・ディレクター
[筆者プロフィール]
山田崇雄 株式会社TCD 代表取締役会長、クリエイティブ・ディレクター
1938年大阪に生まれる。1961年~1971年早川良雄デザイン事務所にてチーフデザイナーを務める。1971年独立。1977年株式会社TCD設立。
大阪府アートディレクター、大阪デザイン団体連合会長などの公職を歴任。現在、日本広告制作協会関西代表、大阪広告協会理事、佐治敬三賞審査委員長、広告電通賞選考委員などを通じ、関西のクリエイティブ界を牽引している。