「グランフロント大阪」に少ないもの。

4月26日の開業からゴールデンウィークを経て、11日間で367万人の来場者を記録したグランフロント大阪。既に各所を体験された方も多数おられると思いますが、その印象は如何でしたでしょうか。
ゴールデンウィーク明けから現在までの報道によれば、施設全体として一人あたりの売上高が思うように伸びていない中でも、想定の2倍から3倍を売り上げた店舗も出てきており、早くも好不調の二極化が進んできているようです。各店ここからが正念場ですね。

さて、行かれてみて感じられた方も多いでしょうが、グランフロント大阪はその周辺の他施設とは違い、店舗数や面積、フロア数の割には「自動販売機」や「ゴミ箱」が少なく感じられます。これはおそらくナレッジ・キャピタルのデザインコンセプトと各店舗の世界観によってつくられる環境の独自性をより鮮明にするため、“ノイズ”を最小限に抑えているからでしょう。

他にもう一つ、グランフロント大阪に見られないものがあります。それは中小規模の「イベント案内のポスター」です。
「ここに来れば様々なオモシロイことに出会える」というのがグランフロント大阪の謳い文句の一つ。例えばナレッジ・キャピタルの特命集団「うわさ話広め隊」と連動した、「ワールドワインバー」などでの噂の検証イベントといった、ポップでユーモアあるイベントが各所で展開されています。

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しかし、グランフロント大阪の中には、一般的なショッピングモールなどには必ずあるはずの「共通の告知スペース」がほとんど見られません。
推察される理由の一つには、各店舗のファサードを最大限に取ったため、施設として共有できる壁が少ないことがあるでしょう。また、告知スペースという意味では、大きな吹き抜けから見える巨大広告があるものの、そこに掲示できるイベントといったら世界一展のような大型企画だけ。各店舗レベルでのオモシロイベントの告知には、まず利用されることは無いでしょう。

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中小規模のイベントを紹介する場が多ければ多いほど、ブラっと立ち寄った方がオモシロイことに出会う可能性は高まります。しかし、そういう掲示物が多ければ多いほど、先ほど述べたようにノイズは増えてくる。そのトレードオフの関係にあるのだと思います。

こういった状況の補完機能として働いているのが、前回も紹介しましたコンパスサービス。あるいは来場者のカバンに常に携帯されているスマートフォンです。
スマートフォンに専用アプリをダウンロードすれば、アナログな壁面掲示のプッシュ型のポスターではなく、スマホで自分から情報を取りに行き、小さくともオモシロイベントを見つけ出すことができるという仕掛けです。

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そういう意味では、情報強者であればあるほど、グランフロント大阪での楽しみ方を見出すことができるわけです。日ごろからスマホを情報の受発信に使いこなしている方、その場でコンパスシステムを活用できる方であれば、すぐに自分の興味にマッチした新しい世界に出会えます。グランフロント大阪が今後も継続的に来場者を獲得し続けられるかは、この情報強者向けの中小規模のイベントにどれだけ人を集められるか、というところが一つのポイントだと思います。

もちろん大きなイベントには潜在的な興味を喚起する役割があります。世界一展では「すごい!ステージ」として毎日「世界に誇るすごい技を持った人」が登場するイベントが行われています。これをUSTREAMで配信することで事前の関心を高め、集客につなげようとしています。
http://the-sekai1.jp/stage/

こうした大きなイベントと中小のイベントがそれぞれうまく機能すれば、それらを目的としてグランフロント大阪まで「わざわざ来てくれる人」を集めるだけではなく、そのイベントに参加する人のモチベーションや興味の質を上げることができます。また、それぞれのイベントのインパクトや印象度が深化すれば、ファンがどんどん増えていくでしょう。
グランフロント大阪のプランナーたちは、このようにして時間をかけながらも、ここに集まってくる方々の興味のレベルを引き上げようとしているのかもしれませんね。

さらにその先を展望するなら、イベントに集まる人の質が上がれば上がるほど、同じ興味を抱いた人との“化学反応”が期待できます。その化学反応は、今はまだ数が少ないものの「ソシオ」というグランフロント大阪ならではの集団へと昇華されることが期待されています。

次回はこの「ソシオ」についての動向を追って行きたいと思います。


[筆者プロフィール]西川将史 株式会社 TCD チーフプランナー
心理学 × マーケティング × 写真 × デジタルガジェット × サッカー × 子煩悩 ×のコラボでブランドプランニングをオモシロク。甘党。