ソシオ=ブランドの殻を破るトリックスター

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前回の話に引き続き、今回はソシオについて書きたいと思います。

そもそもソシオとは何か、皆さんはご存知でしょうか。私はサッカーを通じて馴染み深くなった言葉なのですが、もともと”ソシオ”はスペイン語の「仲間、パートナー」の意味を持つ言葉です。FCバルセロナやレアルマドリードなどに代表されるように、クラブ運営に関する中核組織が会員の会費によって運営されている場合に用いられる名称です。
勿論サッカークラブに限定されているわけでなく、街の団体として市民に愛され、また長い歴史をかけて組織の発展に貢献している会員達が会費を払い、運営を主体的に実施していれば、その団体は”ソシオ”と呼ばれます。

このように、”ソシオ”はもともとその団体を「運営、経営すること」というニュアンスを含むので、参加する一人一人の姿勢、特にそこに関わる「主体性」というものが重要視されてきます。 このためサークル活動やお稽古事、文化教室のような受動的な活動よりも、少し意識のハードルが高く、その団体への愛着や思いの深さ、関わり方への積極的な感覚が強いといわれています。

さて、グランフロント大阪にもソシオと呼ばれている団体が複数あります。 例えば先日23日にうめきた広場にて、「うめきた大運動会」というイベントを行った「キッズスポーツソシオ」。 残念ながら当日は雨天だったので大運動会に最適な天候だったとは言えなかったのですが、スポンサーも入り、メディアも入り、ボランティアの方々も多数参加され、一大イベントとして盛況でした。

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文部科学省が実施した全国体力テストにおいて全国最下位に甘んじた大阪府。
これを受け、「全国体力テスト最下位の大阪の子供たちを、いつの日か全国トップにしたい!」という夢に向け、趣旨に賛同するアスリートやトレーニングのスペシャリストなどが一致協力して、イベントに取り組まれていました。

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他の”うめきたソシオ”も参加されており、「ハートソシオ」では「キッズスポーツソシオ」の子どもボランティア達とコラボレーションし、心停止になった方を救うための心臓マッサージの仕方、AEDの使い方などをダンスミュージックのリズムに合わせてデモンストレーションされていました。

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心停止した方の役をしているピエロも実はソシオリーダーです。 子供達と一緒に夢中で遊びながら、文法や綴りを全く気にせずとも自然と英語を身につけていく、イングリッシュアドベンチャーソシオのリーダーです。

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このように、イベント会場では様々なテーマで多くのソシオが来場者を楽しませていましたが、その笑顔、距離の近さ、一体感などはよくある催物で見られる、演者と観客が分離した光景ではなく、演者も観客に楽しませてもらっているように見える独特の光景でした。

ところで彼ら”うめきたソシオ”はうめきたにとってどのような役割を担っているのでしょうか。
ソシオと付いていることからもわかるように、冒頭に紹介しましたスペインの概念と同様、自立して主体的にテーマへ取り組んでいる、熱量を感じさせる組織であることは確かです。
また、うめきたでは街の牽引役となるTMOやKMOのような運営母体があるので、そこがエリアの方向性を定めていることはプレスリリースなどからもわかります。そして、このような牽引役が引いている路線からは少し離れ、自立して独自のオモシロサを追求する”うめきたソシオ”が遊撃隊のように絡まっているようです。

つまり“うめきたソシオ”は、既定路線とは違った知や体験の幅、オモシロサ、未知の化学反応のようなものを生み出す役割を期待されているのだと思います。

このような未知の可能性はプレスリリースなどの文章やニュース写真などでは伝えきれるものではありません。そのエリアを訪れる方々がソシオを肌で感じ、街の息づかいを体験してはじめて、そのエリアが価値あるものだと認識し、オモシロサを経験として蓄えていく―――今後、ソシオと訪問者との接点がより多く築かれることを期待します。

こう考えていくと、企業ブランディングでも同じ事が言えるのかもしれません。

企業ブランディングの重要な取り組みの一つにあるインナーブランディング。
これは社外や市場にブランドの魅力を訴求する際、企業が一丸となって取り組めるよう、社内のブランドへの熱量を一定の方向に向けて上手く束ねるための施策です。

ブランド戦略の担当部署が牽引役となり、自社ブランドの市場への浸透の方向を明示し、社内協力を要請します。しかしその際、社内の至る所に価値観や姿勢の異なる小さなグループが出てきて方針の浸透が難航することがあります。

この場合、牽引役はそのグループの意見を駆逐する行動に出ることが多いのですが、こういった社内のグループがソシオのように、
「このテーマをオモシロイものにするため人生を捧げる人達からなっている」
「彼らがテーマに取り組んでいる姿には熱量を感じられる」
のであれば、既定路線と違っているからといって排除する必要はありません。むしろ、その熱量を上手くブランド価値に活かせるよう、場を与えたり状況を整えたりすることで、結果ブランドの活力が刺激される、という循環を生む事が必要なのだと思います。

ソシオはその熱量が続く限り、必ずブランドの新たな可能性を生み出す源泉となるので、その所属が国であれ、地域であれ、企業であれ、その根本に流れるオモシロイものへの熱量と自立性というものを失わなければ、ブランドの殻を破り次のステージへ引き上げてくれるトリックスターの役割を充分担えるものなのだと思います。


[筆者プロフィール]西川将史 株式会社 TCD チーフプランナー
心理学 × マーケティング × 写真 × デジタルガジェット × サッカー × 子煩悩 ×のコラボでブランドプランニングをオモシロク。甘党。