引っかかるネーミングとスイーツ。

6月5日、グランフロント大阪北館に「インターコンチネンタルホテル大阪」が開業しました。関西初進出となり、「コンテンポラリーラグジュアリー」をコンセプトに掲げています。

北館1階の通路を進んでいくと、思いのほか小さなドアが出現。大きな正面エントランスが外側にあるのですが、こちらの目立たない入り口は、見物だけの立ち寄り客をシャットアウトしているかのようにも見えます。さらに進むと、こちらも小さな入り口で、店名が非常に気になるパティスリー「STRESSED(ストレス)」が現れます。

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ホテルのWebサイトによると、
「STRESSEDを逆さに綴ると、“DESSERTS”。

忙しくストレスフルな日々の生活の中でほっと一息、夢の世界に入ったような美しい彩りのスイーツや、ホテル特製のベーカリーアイテムを気軽にお楽しみいただけるパティスリーです。」とのこと。
http://www.icosaka.com/restaurant/

ホテルのラウンジやティールームといえば、自然や立地などにちなんだ店名が一般的。同じインターコンチネンタルを見ても、東京は「カスケイドカフェ」「アトリウムラウンジ」、横浜は「マリンブルー」とベーシックです。

そんな中で、重圧、緊張などの意味を持つ「ストレス」という大胆なネーミングには、「大阪の人は、これくらいのインパクトには慣れているでしょう?」というチャレンジ精神とひねりを加えた遊び心を感じます。

店内に入ってみると、大きな窓から庭を見渡せる落ち着いたカフェは、意外にも前払いシステム。さらに「お席までお持ちします」と渡されたアルファベットにはキリンが。単に上品なだけの空間ではないと、あえて小さなひっかかりを演出しているのでしょう。食した「チョコレートミント」も、なかなかチャレンジ精神あふれるケーキでした。
グランフロント大阪内のカフェは、行列ができて落ち着かない場合もあるので、ゆっくりしたい時にこちらは便利に使えそうです。

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行列店といえば、特に人気が高いのが、ニューヨーク発のベーカリー&カフェ「THE CITY BAKERY」。アメリカでは“THE CITY”といえばニューヨークを指すのだとか。潔いほどシンプルな店名は誰もが覚えやすく、素材をストレートに生かした味を想起させます。

名物の「プレッツェルクロワッサン」は、店の前を何度通りかかっても「完売」の貼り紙。意を決して販売開始前から30分ほど並び、ようやく手に入れました。こちらもストレートな商品名の通り、2種類のパンが組み合わされていて、今までにない食感が楽しめました。

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そして、いつも目にとまる行列は、南館2階の連絡デッキ近くにある「Qu’il fait bon(キルフェボン)」。静岡からスタートした、雑貨屋のようにかわいらしいタルトの店は、フランス語で「何ていい陽気なんだろう」の意味です。

覚えにくいフランス語店名が多く見られる中、比較的短く、音の響きも愛らしく、親しみやすさを感じさせます。ただし、フランス語の宿命として日本人には読みにくいので、Webサイト文中でもカタカナで表記されています。

この店のタルトは、個人的には東京で食べ尽くした感がありました。そんな私も、大阪店オープン記念の、ミックスジュースをイメージしたというタルトにはひかれ、テイクアウトの行列へ。メジャー過ぎず、大阪の人が好きなミックスジュースとは、さすがの目の付けどころ。約40分並んで購入した「ちょっとおもしろい味」を、一気に食べてしまいました。

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大型複合施設のガイドブックや案内板では、多くの店名が小さな文字で並びます。また、インターネットで検索や情報共有される機会も多い今、「覚えやすい」と、「他にはない」「何だかひっかかる」が同時に成り立つことが重要ですが、これが開発者にとっては頭のひねりどころ。
グランフロント大阪のガイドに並ぶ店名、施設名からもさまざまな主張や思惑が読み取れ、興味は尽きません。


[筆者プロフィール]由良綾子 株式会社TCD コピーディレクター
印刷媒体、WEBのコピーライティング、ネーミングなどを担当。趣味は国内外を問わず、旅行と街歩き、食べ歩