ファンの心をつかむ、ブランドの資質。


ブランディングには、大きく分けて3つのステップがあります。一つ目がブランドの戦略を考えるステップ。二つ目がブランドをカタチにしていくステップ。三つ目にブランドのコミュニケーションを行っていくステップ。
ここでは、3つ目のコミュニケーションのステップにおいて、ブランドがファンの心を掴むためのポイントをご紹介したいと思います。


【①共感のスイッチ】ユーザーと“社会課題”を共有する。

いわずもがなですが、モノのクオリティが標準化され、モノが市場に溢れ、情報が世間に溢れる現代においては「良いものを作れば、売れる」という時代ではなくなりました。それがブランディングが必要になった一つの側面でもあります。それではモノとして果たす機能以外にブランドに必要なコトは何か?と考えてみると、モノを手に入れる自己の満足の外側、つまり社会側でどのような満足があるでしょうか?
以前、家具メーカーの広告づくりに取り組んでいた際、コピーライターから出されたコピーが以下のものでした。

これは、メーカー側の「家具を永く使って欲しい」、森や木々に対する思いから生まれたコピーです。まさにブランドの思いと社会の思いがぴったり重なった力強いメッセージとなっています(コピーは文屋の西川佳乃さん)。
エコシステムに限らず、現代社会では様々な社会課題が沸き上がっています。そうした社会課題を共有することで、ユーザーとの間で新しいカタチの満足が生まれるのではないでしょうか。

【②参加のスイッチ】ユーザーと“歩み”を共有する。


共感を得た次のステージは何でしょうか。例えば、ご自身の好きなブランドを振り返って「ファン」になるプロセス、またはその瞬間でどのような体験があったでしょうか?
私は、会社に入って初めてMacintoshを使いました。実は小学校時代すでに深夜ラジオを通してApple IIのことを知っていましたが、そのAppleとMacintoshとは、まったく記憶が繋がりませんでした。社内にはMacintosh Quadraシリーズがメインに揃えられており、文字通り「車が買えるほど高い」時代で、実際にそう紹介されました。
当時もMacintoshは毎年新しい製品やOSを発表し世界を驚かせていました。しかし、当時の新製品にはバグやハズレが多く、世間では「初期ロットは絶対買うな」とまで言われていましたし、私もPower Macの登場に飛びついて痛い目に会いました。しかし、そのSomething Newのために犠牲になったエラーと付き合うことが、ある意味そのブランドに参加しているような気持ちにもなり、エラーすら愛おしくなっていきました。
応援したくなるモノは何か「足りなさ」みたいなものを常にはらんでいるのかもしれません。狙って作るものでもありませんが、チャレンジについてまわるバグは残しておいてもいいのかもしれません。

【③応援のスイッチ】ユーザーと“こだわり”を共有する。

さて、共感を得、ブランドへの参加意識(帰属意識)が高まった次のステージは、ユーザーが他の人に推奨してくれる段階になります。
人に何かを勧めるというのはなかなか勇気のいるものです。間違ったことは言えないですし、それが高価なものであればなおさら、品質が確かであることが必須条件になります。
例えば「今度、地元の友達が遊びに来るから、コスパのいい店を教えて」と言われたらどのような店が思いつくでしょうか?



◯ウニが美味しいカジュアルフレンチ

◯ミシュランの星を獲った居酒屋さん

◯リゾットカレーが楽しめるイタリアンバル


「ウニ」というシズル感だったり、「ミシュラン」という権威だったり、「リゾットカレー」という意外性だったり、レトリックとしてはいくつかありますが、他にない何か、ここでもSomething Newが重要になります。
そして、人に何かを勧めるというのはなかなか勇気のいるものではあるものの、実はこうしたコアになる価値は、まず先進層(レストランであれば食通、カメラであればカメラマニア)の間で定評が築かれていくものです。
そうした先進層とこだわりを共有することができればしめたものです。それはみんなのワードとして世の中に知れ渡っていきます。

ぜひ、共感のスイッチ、参加のスイッチ、応援のスイッチを意識して、ブランドコミュニケーションを組み立ててみてください。



筆者プロフィール
川内 祥克 株式会社TCD マネージングディレクター
企業ブランド、事業ブランドやサービス・ブランドの立ち上げ、プロモーション業務に従事。『ブランドのウェブ活用』などのセミナーも開催。