「商品」を「ブランド」へと成長させるためのプロセス
〜商品ブランドデザイン開発について〜<その1>

こちらの連載では、「商品ブランドデザイン開発」について紹介していきます。第一回目は、第1フェーズのコンセプト開発についてです。

これは「商品」なのか「ブランド」なのか?

「商品」と「ブランド」この二つの言葉はよく混同して使われますが、明らかに違う意味を持つ言葉です。「商品」が発売された段階ではまだそれは「ネーム」でしかありません。商品を利用し機能やサービスを経験した上で、顧客のその商品に対するイメージや評価の蓄積が「ブランド」の実体を形成していきます。これが好意的に捉えられているなら、「ブランド価値」があると言えます。こうなれば、多少高くても「やっぱりこのブランドがいい」というような顧客の望ましい態度や行動を引き出していけます。つまりブランドとは、顧客が感じる「物性的価値」+「感性的価値」の合算で表すことができます。まずブランドが成立する絶対条件として、市場で競争力を発揮しうる機能や品質といった「物性的価値」が不可欠です。さらに強いブランドになるためには、顧客にとって良い経験と感情を積み上げ、良好な「感性的価値」を作り出すことが重要です。

そういう意味では、「新商品」はブランドではないでしょう。それは顧客にその商品に対する経験(認知)がないからであり、良好な感性的価値が生まれていない状態。「まだブランドになっていない」ということです。ブランドになる為には、顧客にとっての良い経験を作ることが重要です。商品ブランド開発とは、他にはないコンセプトを創出し、それを価値として、顧客との様々な接点(タッチポイント)で理想的なイメージを持ってもらう為の経験をつくり、ファンになってもらう為の活動です。それにより時間をかけて、顧客の頭や心の中で商品が「ブランド」へと育っていきます。一方、課題を抱える既存ブランドの商品ブランド開発(リ・ブランディング)においては、課題の主立った原因は、企業側が思う理想的なブランドイメージと顧客が持つイメージとの間にギャップが生じていることであり、そのギャップを埋める為にコンセプトや価値規定を見直し、ブランドイメージの方向性を調整していく活動という事になります。何れにしても、商品ブランド開発の大きな目標は「伝えたいことを明確にし、それを顧客に的確に伝わるようにすること」といえるでしょう。

私達TCDのクリエイティブワークの最大の特徴は、商品やブランド、サービスの戦略策定からプロモーションデザイン開発まで、商品ブランドデザイン開発をワンストップでお手伝いできる機能があることです。テーマ内容によって、プランナーやコピーライター、グラフィックデザイナーやWebデザイナー、パッケージデザイナーやプロダクトデザイナーなど、総勢45人のクリエイターの中から必要なメンバーで適宜チームを編成し、メンバー全員がプロジェクトの始まりから参加、その流れを随時シェアし深層での理解をすることで、商品ブランド開発における各フェーズでのブレを無くし、一貫したブランドコミュニケーションを行なう事が出来ます。

エイジングの髪と頭皮のためのヘアカラーブランド「LUVIONA(ルビオナ)

最近の事例としてご紹介したいのは、タカラベルモント株式会社の理美容室向け商品ブランド開発事業であるLebeL(ルベル)からこの3月に発売された、エイジングの髪と頭皮のためのヘアカラーブランド「LUVIONA(ルビオナ)」。私達はこのプロジェクトにおいて、ネーミング、ブランドデザインコンセプト、ブランドロゴデザイン、パッケージデザイン、そしてカタログや映像等のプロモーションまで、トータルでブランドデザイン開発をお手伝いしました。LebeL独自開発のアミノ酸を活用した処方でカラーとケアを両立する、革新的なカラープログラムにふさわしいブランドコンセプトとターゲットイメージを規定、大人の女性が美しい髪のために毎日丁寧に自分と向き合うライフスタイルをイメージし、さまざまなコミュニケーションへと落とし込んでいきました。

もっと詳しくご覧になりたい方はこちら
LUVIONA(ルビオナ)TCD事例紹介

効果的な「商品ブランド開発」の基本フロー

TCDではこれまでも多くの商品ブランド開発をお手伝いしてきましたが、基本的には以下のようなプロセスで行なわれます。本連載では3回に分けて、このプロセスを各フェーズ毎に解説していきたいと思います。


tcd_brand_flow(PDF)

<第1フェーズ>ブランドのエッセンスを凝縮させる「コンセプト開発」

第1フェーズの「コンセプト開発」は、ブランドとしての価値を規定し、この先のデザインやプロモーションなど、顧客に対するコミュニケーション施策の方向性を定めるための重要なステップです。

 

1) 調査・分析

まず、ブランドや新商品を投入する市場環境などの理解、再認識をする為に調査を行います。従来的な顧客調査はもちろんですが、TCDでは「社内調査」を重要なステップとして組み入れています。そのひとつが、経営トップ層の方々や事業責任者などに自社ブランドや商品に対する思いや向かうべき方向性について話を聞き、ディスカッションを行なう「キーマンヒアリング」、もうひとつが、社内の関係各部署から横断的に選出したメンバーに参加していただき、弊社ファシリテーターがメンバーの考えるブランドの良さ・強み・今後目指したい方向性などの認識を引き出していく「ワークショップ」です。まず自分たちが自社ブランドをどう捉えていくのかを明確にすることなしに、顧客に正しく伝わることはありません。

 

2)ブランドコンセプト策定

調査結果を基にブランドがどのような価値を提供していくのかを、機能的、感覚的、情緒的などの各項目で可視化していきます。またそれらを基に、ターゲットや商品開発、商品デザインやプロモーションなどについて、マーケティング戦略の基本ポリシーへと落とし込んでいきます。

 

3)商品開発サポート

調査からブランドコンセプト策定までの流れの中で、想定ターゲットと商品のアンマッチが見えてきたり、価格戦略の変更に伴う商品コンセプトの見直しが必要になったりと、それまで考えられてきた商品の在り方について変更する必要が出てくる場合があります。ブランド力を向上させるには、まず顧客にとっての商品価値(物性的価値)を上げる必要があります。その価値が低いままイメージだけを良くしても効果的ではありません。そのような場合は、企業の強みや理想的なブランドの提供価値を再度見直し、新たな商品開発戦略をたてるべきでしょう。

 

4)ネーミング開発

新商品の場合、上記コンセプトを表現する上で最も重要となるのがネーミング開発です。ネーミングはそのブランドの個性を顧客に示すためのもので、まさにブランドそのものであると言えます。分かりやすいか?言葉にしやすいか?ロゴデザインする際に効果的か?など、コピーライターとプランナーがディスカッションをしながら、さまざまな角度から可能性を探っていきます。そして多くの機会でデザイナーもディスカッションに参加します。デザイナーの意見は思いがけず新たな発想の広がりをディスカッションの場にもたらし、また言葉にイメージを与えます。ユニークなネーミングはこうしたチームワークから数多く生まれてきました。

 

5)ブランドシンボルデザイン

策定されたブランドコンセプトやネーミングをブランドのシンボルとして視覚化します。ここでデザインするのはシンボルマークやブランドロゴですが、単に視覚化するだけではなく、当該ブランドや商品が置かれている市場および競合状況をふまえた上で、オリジナリティのあるデザインを創出しなければいけません。また、以降あらゆる媒体に使用されること考慮し再現性が高く保たれる、クオリティーが高いデザインが必要となります。

 

6)デザインコンセプト策定

ここでは、ブランドコンセプトとロゴデザインに始まり、ブランドの世界観を示すイメージボードとキーワード、パッケージや容器などの商品デザインイメージとプロモーションのキーとなるビジュアルイメージに至るまでを、ひとつのストーリーとして仮説提示をします。このデザインコンセプト策定に際しての提案方法は、TCDの保有機能を最大限に生かした大きな特徴のひとつでしょう。この段階までは言葉の表現のみでそれぞれの頭には違ったイメージを想像していたとしても、プロジェクトの比較的早い段階でこれらを視覚化することで、プロジェクトメンバー全員の認識を共通に出来ます。これによりさらなるブラッシュアップへの議論がスムーズになり、幾度かの調整を加えていくことでブランドのエッセンスを凝縮していきます。この後のフェーズにおけるメンバーの認識のブレを最小限にするためにも非常に大切なステップと捉えています。

以上が第1フェーズの流れです。次回は、商品ブランド開発の視覚化段階として重要な第2フェーズ「商品デザイン開発」についてご紹介します。


[筆者プロフィール]
山崎 晴司 株式会社TCD 取締役、クリエイティブ・ディレクター
日用品や医薬品、化粧品、食品などの様々なパッケージデザイン開発を中心に、グラフィックデザイン、プロダクトデザイン等、マーケティング思考を前提にしたクリエイティブワークに幅広く携わる。
また百貨店等における新ブランドの立ち上げに際しての戦略立案や商品パッケージから店頭ツール類、店舗までトータルデザインプロデュースも行う。