2020.07.01

商品ブランディングについて<Part3>プロモーションデザイン開発/ブランド管理

山崎 晴司 株式会社TCD 代表取締役社長 クリエイティブディレクター

こちらの連載では、3回に分けて商品ブランドデザイン開発(商品ブランディング)について紹介していきます。最終回となるPart3は、第3フェーズの「プロモーションデザイン開発」および、第4フェーズの「ブランド管理」についてです。

商品ブランディングに関する過去の記事

<参考>商品ブランド開発の基本的な流れ


tcd_brand_flow(PDF)

<第3フェーズ>ブランドの魅力を伝える「プロモーションデザイン開発」

tcd_brand_flow

<第3フェーズ>ブランドの魅力を伝える「プロモーションデザイン開発」
プロモーションデザイン事例(Yamaha Venova

1)プロモーション戦略策定

第1〜2フェーズの開発によって商品コンセプトとデザインが固まり、大凡のブランドの輪郭がはっきりしてきた段階で、次に検討が必要なことは「ブランドの魅力の伝え方」です。ブランド毎にジャンルやターゲット等は異なるため、一口にプロモーションといってもその内容や手段は様々です。複数の施策を組み合わせることにより、顧客とのタッチポイントを最適な体験として作り上げます。そうしたゴールを目指すために、プロモーション全体を通じて何をコミュニケーションコンセプトとして、どのようなタイミングや期間で、どういった手段で発信していけば効果的かを計画します。TCDでは多くの場合、カスタマージャーニーとして顧客体験をわかりやすく視覚化しています。また、実施後には効果測定を行い、必要に応じてコミュニケーションを最適化していきます。

2)Webサイトデザイン

ブランドコミュニケーションの中心として欠かせない存在になったWebサイト。オウンドメディアであるWebサイトは、広告とは違って企業側が伝えたいことをしっかりと伝えられるツールです。リッチなブランドサイト、EC機能をもたせたサイト、SNSと連動させた更新性の高いサイトなど、ブランドの方向性やターゲットの属性に応じて、どういったWebサイトであるべきかを検討、企画して構築していきます。また、Webサイトの特性として分析が行いやすいという点があります。計画した通りの効果が現れているか、ユーザーとの乖離がないか、さまざまな指標で振り返り、改善をして行くことができます。

3)ツールデザイン

そのブランドが出て行く場所によっては、Webサイトなどのデジタルツールよりもリーフレットやカタログといったペーパーメディアの方が有効なシーンはまだまだ残っています。また、ブランドの”手ざわり”を直接伝えられるのもペーパーツールならではです。最近ではペーパーツールとWebサイトを並行して制作する事例も増えています。

ツールデザイン
Web・ツールデザイン事例(Touch&Hug(タッチ&ハグ)

4)広告デザイン

TV-CM、駅貼りや車内吊りなどの交通広告、雑誌広告、新聞広告などのマス広告に加えて、最近ではWeb広告も広がりを見せています。予算や効果を見据えつつ、そのブランドの世界観に合ったクリエイティブとメディア選びが重要になります。

5)映像デザイン

インターネットの発達に伴い、顧客とブランドのコミュニケーションにおいて重要な役割を担うのは、文字から映像へと変化してきています。動くことで注目を引き、より感覚的にブランドの特徴を伝え、映像と音楽で表現される世界観やストーリーが共感を生み出す、など、映像には様々な役割があります。また、Webサイトに掲載するだけでなく、FacebookやInstagram、TwitterといったSNSでの展開が可能なのも魅力です。

6)店頭・販促デザイン

独立した店舗を持つブランド形態を目標とした商品ブランド開発では、商品デザインと共に、店舗デザインから販促ツール等のデザインに至るまでの売り場全体を、一貫したストーリー性を持たせた世界観でまとめていく必要があります。そのため、ブランドシンボルの掲示方法やブランドカラーの使い方、インテリアのデザインや素材などを一点一点吟味し、ブランドコンセプトに合った店頭作りを目指します。また、効果的な商品陳列やPOPの配置の仕方といったVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)の観点でのデザイン計画も忘れてはなりません。顧客との重要なタッチポイントである店舗デザインのキモは「ストーリー性+機能性」という事です。

7)展示会企画・デザイン

広く一般に向けたプロモーションとは異なりますが、商品デビューの場として流通向けの展示会も重要なメディアです。TCDではブランドの世界観を踏まえた展示会什器や会場全体のイメージづくりなどもサポートしています。

展示会企画・デザイン
展示会事例(左:パナソニックのエイジフリー/右:アサヒ興洋
 

<第4フェーズ>ブランドを守り、理想的な形に進化させる「ブランド管理」

こうして満を持してブランドがお披露目となります。しかし、ブランドはデビューして終わりではありません。これまで様々な検討のもと時間をかけて作り上げたブランドを台無しにしてしまわないよう、デビュー後のブランド管理が大変重要となります。以下にそのプロセスについてご紹介します。

1)ブランドデザインガイドライン

ガイドラインガイドラインイメージ

ブランドが存在し続ける限り、そのブランドとしてふさわしい振る舞いをし続けて行く必要があります。しかし会社組織で運営する場合、ブランドを立ち上げた担当者が変わってしまうこともよくあることです。それを見据えて、ブランドの世界観をガイドラインとしてまとめておくと、さまざまな関係者にそのブランドが何なのかを理解してもらいやすくなります。ブランドコンセプトの考え方からビジュアルのトーンや言葉の選び方など、そのブランドに応じて規定する要素を決定し、ガイドライン化していきます。

2)新商品開発サポート

ブランドを発展させて行くために、新たな商品やサービスの開発が必要になる場合もあります。TCDでは、ブランドコンセプトや市場を踏まえて、どういった商品が求められているのか分析し、クライアントとともにデザイン・開発していきます。

3)定期調査と戦略調整

プロモーションスタート時に策定したKPIに基づいて、定期的に振り返りや改善提案を行います。必要に応じてユーザー調査なども組み込み、戦略をブラッシュアップさせていきます。

4)その他フォローアップ

社内だけでブランドを管理していくのが難しい、というクライアントには、定期的なブランドコンサルティングも行なっています。月に一、二度程度のプロジェクトミーティングを通じて、今現在のブランド課題を抽出し、解決策についてディスカッションや提案をしていきます。


以上、3回に渡って書いてきました商品ブランド開発の現場。ご紹介した内容は私達の経験に基づいて作られた基本的な流れであり、テーマに合わせて各フェーズや実施項目の組み合わせを調整する等アレンジが必要です。

モノや情報があふれている今日、消費者にとって本当に欲しい商品を選ぶことが困難になっていると感じています。1回目の連載の中で述べましたが、商品ブランド開発の大きな目標は「伝えたいことを明確にし、それを顧客に的確に伝わるようにすること」です。そのような活動により、他の商品と何が違うのかが明確に理解され、ブランドの魅力がはっきり伝わったなら、消費者は納得してその商品を選ぶ事が出来るのではないでしょうか。「選ばせる」のではなく「選ばれる」ブランドづくりの為のデザイン開発を目指し、これからも様々なお手伝いが出来ればと思います。


TCDの商品ブランディング開発実績はこちら

[筆者プロフィール]

山崎 晴司

株式会社TCD 代表取締役社長 クリエイティブディレクター

日用品や医薬品、化粧品、食品などの様々なパッケージデザイン開発を中心に、グラフィックデザイン、プロダクトデザイン等、マーケティング思考を前提にしたクリエイティブワークに幅広く携わる。また百貨店等における新ブランドの立ち上げに際しての戦略立案や商品パッケージから店頭ツール類、店舗までトータルデザインプロデュースも行う。

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