売れ続けるパッケージデザイン 〜長期的な視点でのデザイン計画〜

こちらの連載では、パッケージデザインにおけるTCDの取り組みをご紹介します。
前回は、売れるパッケージデザインを店頭から導き出していく方法をご紹介しました。


1.売れるパッケージデザイン 〜ヒントは店頭にあり〜
2.売れ続けるパッケージデザイン 〜長期的な視点でのデザイン計画〜


今回は、発売後、いかにして売れ続けるパッケージデザインにしていくかを考察していきたいと思います。

店頭に目を向けると、日用品や食品、化粧品や医薬品などすべてのカテゴリで、ロングセラーのパッケージデザインを見つけることができます。そうした商品は、多くの人が一目見ただけで「あの製品だ」と気づくはずです。それは、その商品のブランド価値が、理解され、愛されてきた証拠です。
そしてその結果には、パッケージデザインが少なからず重要な役割を果たしているのです。

売れ続けるパッケージデザインを考える時、ポイントは次の3つと考えます。

1. ブランド・アイデンティティをつくる

ブランド・アイデンティティとは、ロゴ、色やデザインエレメントなど、ブランドの世界観を表現し、長期にわたって資産となりうるものを指します。
ここで間違ってはいけないのは、それをつくればブランドが出来る、ということではなく、あくまで、消費者の心に残ることで商品とのつながりをつくるものだ、ということです。ブランドとは、消費者のその商品に対する良い評価の積み重ねで成るものだからです。
つまり(潤沢な予算でマス広告を打てる商品でない限り)まずは、手にとってもらう、トライアル獲得を目的とした「広告的パッケージデザイン」が必要であり、その後「ブランド的パッケージデザイン」にスムーズに移行していくことが理想と言えます。その際にブランド・アイデンティティが重要になってくるのです。

2. 時代に合わせたメンテナンスを怠らない

仮に、30代をターゲットにした商品があるとします。ターゲットの感性にフィットしたパッケージデザインでヒットし、購入した人はリピートして買い続けてくれるかもしれません。でも、10年、20年とそのままのデザインを使い続けるとどうでしょうか?ターゲットとともに商品ブランドも年をとり、いつの間にか前時代の古いブランド、という烙印を押されてしまいます。そうなってからブランドの若返りを図ろうとしても時すでに遅し、ブランドは衰退の一途をたどるかもしれません。
そうならないためにも、ブランドの鮮度を保ち、現行のコアユーザーが離れていかない程度に、次の若い消費者へもアピールしていく必要があります。そういう努力を怠らなかった商品だけがロングセラー商品の称号を得ることが出来るのです。

3. ブランド・アイデンティティを守る

ただ、ブランドの鮮度を保つため、といって何でもかんでも変えていいわけではありません。一貫する必要があるもの、それが①で述べたブランド・アイデンティティです。
そこで、注意しないといけないのは、ブランド・アイデンティティを決めるのは、メーカーでもデザイナーでもなくユーザーだということです。ユーザーが何をもってブランドを識別しているのか、ということが大切なのです。
ここの判断を誤ったがゆえに、リニューアルをするたびにアイデンティティが変わり、ユーザーに覚えてもらえず、愛着ももってもらえず、衰退していくブランドもあります。

このように、売れ続ける商品のパッケージデザインとは、一朝一夕でつくれるものではなく、ブランドに対する深い理解と、長期間に及ぶメンテナンスが必要になるということです。
昔から変わらないと思われているロングセラーの商品も、ほとんどの商品が、実際に年代ごとに並べてみると、その時代に合わせて少しずつ進化していることが分かります。10年、20年越しで見ると随分違って見えますが、それでも変わっていないと普段感じるのは、ブランドのアイデンティティが守られつつ時代にフィットしてこられた結果なのです。

我々TCDが、デザイン開発のお手伝いをしている小林製薬のロンセラー商品「アンメルツ」。1974年のデビューでは、肩や背中を塗りやすいように、首を曲げた形状をそのままパッケージデザインにしてヒットしました。その後、赤白青のトリコロールカラーのロゴをアイデンティティに据えて、これまで幾度もリニューアルされてきています。現在でも多くのラインエクステンション商品が生み出され、舞台も世界各国へと広がり、進化し続けています。

 

TCDでは、長年に渡りパッケージデザイン開発に関わらせて頂けるクライアントに恵まれ、長期的な視点でデザインを考えることができます。パッケージデザイナーとしてはこの上なく幸せなことなのかもしれません。


[筆者プロフィール]
鎌尾 典明 株式会社TCD デザインディレクター
エディトリアルや広告を経て、ここ10年はパッケージを中心に、店頭ツールや売り場づくりまで、“売れる”を目標にどっぷり従事。