2019.03.01
ライフスタイルデザイン展に見る 3つのデザインキーワード
田中 恵子 株式会社TCD クリエイティブディレクター
たまたま機会があり2019年2月にフランクフルトで開催された「Ambiente 2019」を視察してきました。
「Ambiente」は家具やインテリア雑貨、キッチンウェアやギフト・グッズなどが一堂に会する世界最大級の消費財の見本市で、今年は92カ国・4,400社が出展しました。総展示面積は18万㎡、といってもちょっとピンとこない数字ですが、東京ビッグサイトで開催されている関連イベント「Interior Lifestyle Tokyo」の20倍近い広さになります。会期中はブース展示だけでなく、ライフスタイルデザインの最新トレンドが発信されたり、ジャーマンデザインアワードの発表や、さまざまなセミナー・シンポジウムも開催されていました。
TCDではさまざまなブランディングのサポートを行っていますが、このところ雑貨などのプロダクトそのもののデザインやブランディングに携わることも増えてきましたので、リサーチを兼ねて2日間かけて会場を一巡りしてきました。そこで目にしたさまざまなデザインから3つのキーワードをピックアップしてご紹介します。
(写真はいろいろと撮ったものの掲載許可をいただいていないので、ここでは共有エリアとトレンドゾーンにあったものだけを掲載しています。)
◯エシカル&サスティナブル
昨年あたりから日本でも使い捨てストローなどが環境破壊につながると話題になっていますが、環境に優しい、負荷の少ない製品を、という考え方は世界共通の流れだなと実感。竹などの自然に還る樹脂やリサイクルできる素材でできたプロダクトや、マイボトルといったエコなライフスタイルに合うアイテムが多く見られました。日本のプロダクトに比べると、樹脂製の食器でも陶器やガラスの器のような形状と仕上げが印象的でした。
◯大胆なペイント&ドローイング
グラフィックデザインのトレンドとしても注目されているペイント&ドローイングはインテリア雑貨の世界でも注目でした。プロダクトのデザインだけでなくブースデザインとしてもドローイングを大胆に用いたものが目を引きました。会場で展示されていた「Trends 2019」でもこうした傾向が取り上げられていました。「Trends 2019」では「tasteful residence」「quiet surrounding」「joyfilled ambience」という3つのテーマでキートレンドが紹介されています。
◯日本的なデザイン
藍染のような模様や白磁の陶器など、日本企業以外のメーカーによる日本的なデザインやネーミングも散見されました。日本画調の鶴や桜などの和風なモチーフをうまく取り込んでいるブランドもあり、ヨーロッパ感覚での和風ミックスは上手いなという印象。とあるブースでは「JAPONORDIC DESIGN」といった打ち出しも。日本と北欧のデザインは親和性がありそうと思ってましたが海外でもそう受け取られているようでした。鉄瓶や包丁といった日本を代表するプロダクトも想像していたより多くのブースで展開されていました。
このほか、1カ国がフィーチャーされるパートナーカントリーゾーンにはインドが選ばれ、インドデザインが特集されたブースも。インドと言うとエスニックデザインの印象が強いですが、手工芸の味わいとモダンなデザインが融合した空間となっていました。
カラーとしてはヴァイオレットカラーが目を引きました。キッチン雑貨としてはあまり見なかった色だったのでより印象に残ったのかもしれません。また、毎年カラートレンドを発信しているPantoneのブースでは2019年のカラーとして「Living Coral」がセレクトされていました。今年の後半にはコーラルカラーの雑貨たちが目立ってくるかもしれません。
さまざまなブースや各国のパビリオンなど、インテリア雑貨好きとしても楽しいイベントで、ついつい消費者目線でも素敵なものを探してウロウロしてしまいました。またこうした機会を作って、ご紹介していければと思います。
◯エールフランス85周年
余談ですが、今回のフライトで利用したエールフランスが85周年ということで記念のアメニティが配られていました。広告デザインなどもモードの国らしく洗練されているエールフランス、周年ロゴも素敵でした。公式Instagramでは記念ムービーとして制服の変遷も見ることができますので、航空会社好きな方はチェックしてみて下さい。
[筆者プロフィール]
田中 恵子
株式会社TCD クリエイティブディレクター
コンセプトからそのデザイン、コミュニケーションまでさまざまなブランド開発プロジェクトに携わる。デザイン領域にこだわらず暮らしをよりよくできるモノゴトをめざす。