パッケージデザイナーが見る
〜『バドワイザー』のリニューアル・デザイン〜

2016年1月、バドワイザーのリニューアル・パッケージが発表されました。

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出典:JKR-NY

1876年にアメリカで誕生してから今年で140年を迎える『バドワイザー』。
JKR-NYにより品質とブランドを揃えることを目指し、グローバルリブランディングの一環として、新しいビジュアル・アイデンティティが作成されました。彼らはこの完成までに2年を要したといいます。

このような長年愛され続けてきた製品のリニューアルのデザインを手がけるとき、我々もとても慎重を期します。
長い歴史を持つ老舗ブランドには、なじみのある「安心感」「信頼感」というポジティブなイメージと、それに反する「先進的でない」「新しさがない」というネガティブなイメージがあるので、リブランディングの際のブランド・エクイティの “資産”と“負債”を見極める事がとても重要になってきます。
ですので、“負債”を抱えたままゴールしてしまったケースや、必要な“資産”もおいてきてしまったケースなど残念な結果のリニューアルデザインに遭遇する事があります。

では、『バドワイザー』の新旧のリニューアルデザインではどうだったのでしょう。

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出典:JKR-NY

これは歴代の『バドワイザー』。赤、青、白のカラーリングと中央にABのエンブレムが印象的なデザインで、「赤、青、白」と「ABエンブレム」がブランド資産といえるでしょう。

下の画像は、2011年(日本では2012年)にリニューアルされたデザインです。

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出典:JKR-NY

350mL缶はこれまでのロゴの青を排除。中央のエンブレムも外されボウタイロゴをシンボリックに使用した、スタイリッシュなデザインにリニューアルされました。
長年守ってきた「赤、青、白」の“青”ロゴと中央の「ABエンブレム」をなくし、ビジュアル・アイデンティティをドラスティックに変更し、ブランドイメージの刷新を図ったのでしょう。
しかし、2013年にアメリカで行われたパッケージデザイン調査では、ブランド認知を低下させる結果となりました。
今までの『バドワイザー』イメージを持つ330mLボトルも新しいブランドイメージの拡大を妨げる要因の1つになったのかもしれませんが、“資産”をなくし過ぎたことでのバドワイザーらしさも少なくなってしまった事が上記のブランド認知の低下という残念な結果となったのでしょう。

さて、2016年版デザインでは、その反省すべき点を加味したリニューアルになっています。
ボトルと缶のビジュアル・アイデンティティを揃え、青のスクリプトレタリングワードマークを復活。
金色を外し、『バドワイザー』の赤、青、白のイメージが強調されています。
ロゴ上に配置されていたABのエンブレムも復活され、なじみのあるレイアウトに戻されました。

また、バドワイザーロゴとして残された“ボウタイ”ロゴは2Dに。
上部にあったクラウンも外され、よりシンボリックなデザインにリニューアルされました。

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出典:JKR-NY

歴代『バドワイザー』のなじみのある印象を残しつつ、それぞれがブラッシュアップされ、王道感のあるモダンなデザインにリニューアルされた2016年版バドワイザー。
私個人としては、パッケージのリブランディング・デザインとしては良いお手本ケースと見ています。


[筆者プロフィール]
山本 みき 株式会社TCD デザインディレクター
パッケージデザイン一筋20年。
“店頭で強いパッケージ” を念頭におき、デザイン制作に勤しんでいる。
趣味はスーパーマーケット、ドラッグストアなどのストア探訪。
ユニークなデザインや特殊印刷を施したパッケージを探求している。