理系目線のグラフィックデザイン①

数学や物理というと、xとかnとか見るだけで鳥肌が立って脳みそがフリーズしてしまう、という方も少なからずいると思います。でもグラフィックデザインには数学が役立つ場面が多々あって、レイアウトや配色に数理的な秩序を与えることでデザインがまとまったり、色やカタチに根拠や必然性が生まれたりします。美しいデザインの中には、こういった数理的な規則性・正確性が内在されてることが多いと思います。

デザインと数学の関係で有名なのは「黄金比」です。最も美しい比率とされ、パルテノン神殿やモナ・リザ、Appleのりんごマーク……さまさまなデザインに使われています。でも私はこの「黄金比は美しい」という神話については、予てから疑問を抱いています。

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「縦と横が黄金比になる黄金長方形は、正方形部分をとり除くとまた黄金長方形になり、これを繰り返すと無限個の正方形で埋め尽くされる」確かに神秘的な比率です。この「永遠に続く」という数理性には、命に限りある人間は古代から憧れを抱いてきたのかもしれません。でも……

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数字で表すと割り切れません。これがまず気持ち悪い。名刺のサイズも黄金比だと言われていて「55mm×91mm」なのですが、これも気持ち悪いのです。なんで60mm×90mmじゃないの?!と思ってしまいます。

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オウムガイの形状としても有名な黄金螺旋ですが、半径が大きくなる率(ピッチ)が大きいので、見れば見るほど滑らかに見えません。もっとピッチの小さい螺旋の方が、美しく見えるのではないかと思います。

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「おへそから上:おヘソから下が5:8でほぼ黄金比」というのですが、ほぼって何?!とか、人間の体に長さは無数に存在するので何とでも言えるのでは?!と益々疑わしくなってきます。

美しいカタチとは何なのか?デザインを考える上でのヒントが数学の中にもありそうなのですが、黄金比については「もっとも美しい」とする根拠があやしく、何でも美しくする魔法の比率という訳ではなさそうです。デザインと数学の関係のおもしろさは黄金比のような都市伝説(?)ではなく、もっと別のところにあるのではないでしょうか。次回も引き続き、理系目線でグラフィックデザインを見ていきたいと思います。


[筆者プロフィール]
青木 睦 株式会社TCD デザインディレクター
京都工芸繊維大学 工芸学部 造形工学科卒。
CI・VIデザインの経験をベースに、エディトリアルからパッケージまで、「整数値」なデザイン求めて奔走中。