ブランディング考

2020.08.27

新たな時代に対応する商品ブランディングとは?
今、ブランドに必要なのは
顧客の共感を得る「世界観づくり」

山崎 晴司 取締役社長、クリエイティブ・ディレクター

今回は、改めてウィズコロナ時代のブランディングの重要性について「世界観」というキーワードを中心にまとめてみました。


<目次>


顧客行動の変化が加速、「オンライン強化」は必須に

新型コロナウィルスの影響によって、消費のデジタル化などの変化が加速しています。私たちはあの緊急事態宣言の自粛生活で、不便且つ不自由な日々を経験する中、ある意味で強制的に「オンライン」の「便利さと自由さ」を体験することとなりました。

コロナが終息した後にこれが元の状態に戻ることはなく、今後も人々はより一層デジタルの効果的な活用に関心を高め、利用していくことでしょう。そして次々に新たなオンラインサービスが生まれ、生活様式自体もさらに変化していくことは間違いありません。そういった顧客の新たな生活様式にブランドは対応していかねばなりません。

ここ数ヶ月の間に弊社にいただいた業務相談の中で特に多いのは、やはり「自社ブランドのオンライン強化」についてです。社会的に見るとこの流れは今に始まったことではなく、ミレニアル世代を中心に多くの支持を集め、既にアメリカで勢いを増しているD2C(Direct to Consumer)ブランドがそうであるように、インターネットやSNSの普及により、これまでのやり方とは異なった顧客との関係づくりが可能になったことで、新しいブランドが次々と市場に乗り出し、業界の勢力図を一変させることも珍しくない状況です。

そんな流れの中で起こったこのコロナ禍が、前述の通り、人々のオンライン利用をさらに加速させたことにより、多くのブランドにとって「オンライン強化=顧客との関係性の見直し」が、注力すべき課題として改めて認識されてきています。

オンラインで存在感を強めるには「世界観」の構築が重要

コロナ禍はあらゆるブランドに対して、顧客がその繋がり方を見直すきっかけを作りました。これまではあって当たり前と思っていたものが、本当に自分に無くてはならないものなのか、価値があるものなのか?と。そのようにして多くの顧客がブランドから離れてしまいました。

再び顧客を取り戻すためには、ブランドの「提供価値」と「コミュニケーション」を顧客視点でバージョンアップし、もう一度「繋がり直してもらう」ことが必要です。そこで重要なのが、独自性のある「世界観」の発信です。

近年のインターネットの発達はブランドの顧客へのアピール方法に大きな変化をもたらしました。ユニークなCMで印象を残す、個性的なパッケージで店頭で目を引くなど、それまでのアピールはインパクトのある「点」が重視されていましたが、インターネットやSNSの発達によって、顧客に「いつでも」「より多く」の情報を届けることが可能となりました。

タイミングや枠という制約が無くなったことで、ブランドの優位性を決めるのは「点」から線や面、そして現在では「立体」的な訴求ができているか否かの勝負となってきています。そしてこの「立体的なブランドイメージ」こそが「世界観」と言えるでしょう。

世界観づくりには、独自性のあるコンセプトが不可欠

もう少し説明的に表現すると、世界観とは「独自性のあるコンセプトに基づいて構成されたブランド表現全般から感じる雰囲気」といったところでしょうか。要するに「他にはない、そのブランドらしさ」。

例えば、Appleは製品や店舗デザイン、WEBサイトや広告など様々なメディアから、統一感のある先進的かつ洗練されたイメージを感じ取ることができます。それが世界観であり、顧客はその世界観に触れることでファンになります。そして世界観の中心にあるべきなのが、独自性のあるコンセプトです。

ブランドコンセプトとは、そのブランドがどんな目的や使命を持ち、それを果たすためにどんな価値を顧客に提供し、それはどんな考え方に基づいて行なわれていくのか、といった「その活動全体において貫くべき基本的な考え方や価値観を言語化したもの」で、ブランドのあらゆる活動はコンセプトを起点として行われることが理想です。

それは世界観を形作るデザインやコミュニケーションといったブランド表現の方針決定においても同じであり、結果的に「そのブランドらしさ」が顧客の頭の中に定着していくことになります。以下の図は、ブランドコンセプトを起点にした世界観やその構成要素についてまとめたものです。


図:世界観の構成要素について

例えば、仮に「地元の食材に拘り、古き良き食文化を次の100年後まで伝える」というコンセプトのブランドがあるとします。それは、ある地域で古くから採れる作物を使用し、昔ながらの製造方法で作られた素朴で体に良い食材を提供するブランド。世界観作りのために、視覚的要素には「ナチュラル」「飾りのない」などのキーワードが規定され、ブランドロゴやキービジュアルの方向性を定めていきます。

そして言語的要素は、昔話を現代風にしたような調子で語り口調を統一し、若い世代に興味を持ってもらうために絵本や動画を作る。感覚的要素では「懐かしさと新しさを融合」する製品やパッケージデザインの開発を行なう。行動的要素では「温故知新」をテーマに、作物の収穫や調理体験イベントを開催したり、他地域や世界にある同様のコンセプトを持つブランドとコラボレーションを企画し情報発信をしていく…。
以上、大雑把な例えではありますが、ブランドが伝えたいコンセプトと、それを伝えるための世界観づくりとの関係が、少し具体的にご理解いただけたかと思います。

情緒的価値がブランドを強くする

ではまず、世界観づくりの元となるコンセプトを強化するためにはどうすれば良いか。ブランドの力は「機能的価値」と「情緒的価値」の掛け算で決まりますが、自社商品やサービスの特徴といった機能的価値の訴求だけでは世界観の発信とは言えません。同質化競争が進む現代においてブランドが競争力を高めるためには、「情緒的価値」の強化が不可欠です。

また、冒頭に申し上げたように、顧客視点で提供価値をバージョンアップするためにも、この情緒的価値をしっかり構築し、コンセプトの独自性を明快にする必要があります。


図:ブランド力=機能的価値×情緒的価値

顧客がブランドの世界観を感じるのは、この情緒的価値の視覚的および身体的体験からと言っても良いかも知れません。そして上の図の左右を比べていただければ判りますが、ブランドの情緒的価値は機能的価値よりも、非常に「人間的」だと思いませんか?

例えば、人にはそれぞれ、絵が上手、計算が得意、英語が話せるなど様々な「能力」(機能的価値)があります。ただ、お互いを認めて「友達や仲間」になるには、能力以上に「考え方や性格」(情緒的価値)が非常に重要だと思います。現代のブランディングにはこれに近い考え方が必要で、顧客を顧客と捉えるのではなく、共感してもらえる仲間を得るための活動として、ブランドコンセプトを練り、コミュニケーション戦略を設計することが重要です。

これらをしっかりと体系化し発信しているブランドは、あらゆる顧客接点においてイメージの一貫性や統一性が保たれた、効果的なブランド体験の提供を可能にします。現代においてブランドとは、単に製品のことではなく、顧客にとっての「世界観の体験から得られる肯定的な価値」と捉えたほうが良いでしょう。

露出を増やすだけでは逆効果。まずはブランド力向上を

では、そのブランドは今、顧客に製品ではなく「世界観の体験」を提供するための工夫ができているでしょうか?まずは費用さえ掛ければ、ブランドの見た目を整え、オンライン上で露出を上げ、顧客接点を増やすことはできますが、その前にコンセプトを磨くことをお勧めします。

曖昧なコンセプトのままの状態、すなわち、ブランド力を良好な状態にすることなく、露出(コミュニケーション)だけに力を入れた場合、瞬間的な注目は高まるかも知れませんが、逆に「他との違いや良さがわからない」「魅力的でない」ということを顧客に広めてしまうことにもなります。これではせっかくの販促が逆効果です。

ブランド価値向上のための効果的な世界観の発信には、やはりコンセプト、特に情緒的価値を強化し、きちんと方針を固めた上でコミュニケーションを強化することが望ましいと言えます。


図:ブランド価値=ブランド力×コミュニケーション力

以上のことは、これまで弊社がブランディングの重要性について申し上げてきたことと大きくは変わりませんが、このコロナ禍によって訪れたニューノーマルが顧客の意識や行動を変えたことは間違いなく、改めて皆さんのブランド活動においても、上記のような観点で評価をしてみてはいかがでしょうか。(完)

商品ブランディングに関する過去の記事


商品ブランドデザイン開発について<Part1> コンセプト開発
商品ブランドデザイン開発について<Part2> 商品デザイン開発
商品ブランドデザイン開発について<Part3> プロモーションデザイン開発/ブランド管理

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[筆者プロフィール]

山崎 晴司
株式会社TCD 取締役社長、クリエイティブ・ディレクター

日用品や医薬品、化粧品、食品などの様々なパッケージデザイン開発を中心に、グラフィックデザイン、プロダクトデザイン等、マーケティング思考を前提にしたクリエイティブワークに幅広く携わる。
また百貨店等における新ブランドの立ち上げに際しての戦略立案や商品パッケージから店頭ツール類、店舗までトータルデザインプロデュースも行う。


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