ブランディング考

2020.04.27

Think about ”DESIGN”
現代のデザイナーに求められる、
「デザインすること以外の価値」とは

山崎 晴司 取締役社長、クリエイティブ・ディレクター

Think about ”DESIGN”

ブランドは「モノ」ではなく「魅力のあるコトを生み出す」存在へ

ブランドが現代の競争時代を生き抜くために必要なのは、独自性のあるコンセプトとそれを体現したデザイン、そしてその価値を顧客に届けるコミュニケーション、これらトータルでの「一貫性のある顧客体験の醸成」です。コンセプトは強いけれどデザインやコミュニケーションが弱いという状態では、そもそも顧客にその価値が届きませんし、デザインは斬新なんだけどコンセプトが差別化できていなければ、一時的な注目や売り上げは期待できるものの長続きはしない。プロジェクトの目標をどこに置くかによって多少の違いはあリますが、「コンセプト×デザイン×コミュニケーションの一貫性」がブランディングの成功方程式と言えるでしょう。

中でも重要なのは、コンセプト×デザインの部分。コンセプトとはブランド価値を言葉化したもので、デザインは視覚化したものです。顧客にとってはこの掛け合わせが、ブランドイメージの大きな部分を占めることになりますので、しっかりとコンセプト×デザインを構築することがブランディングの基礎となります。しかし、独自性のあるコンセプトを作るのは容易ではありません。特に、モノづくりに力を注ぎ、商品の機能や質の良さをアピールしてきた多くの日本企業にとっては、コンセプト=商品機能(モノの良さ)と捉えがちと言われています。あらゆるモノが平準化した現代では、ブランドは「良いモノを作る」から「魅力のあるコトを生み出す」存在へと変化を求められています。機能的価値以上に、情緒的または意味的価値が重要ということです。

デザイナーに期待されるのは「革新的なアイデア創出」

翻って、私たちのようなデザイン会社もまた、変化の必要性を感じています。実際に最近のご依頼内容の変化として言えるのは、私たちへの期待が必ずしも「デザインすること」ではなくなってきたということ。例を挙げると、弊社がブランドコンサルティングと基本的なデザイン構築を行ない、デザイン展開についてはクライアント社内で進めるといった業務形態や、ユーザー調査からブラントコンセプトとネーミング開発までのご依頼。また、商品開発自体に弊社プランナーとデザイナーが参画するなど、これまでのような具体的な要望ありき、納品物はデザイン制作物、といったデザイン業務とは大きく様変わりをしてきました。

クライアントとなる企業やブランドがその存在の意味性に変化を求められている今、これまでにない発想で顧客価値の改革が必要となるのですが、社内メンバーだけではそういったアイデアを醸成する「場づくり」がうまくできない場合があります。そこで弊社のような外部のクリエイターがブランディングのスタートから参画することによって、革新的なアイデアの創出を期待していただくようになった。それがご依頼の変化に現れていると思います。プロジェクトの進め方も、クライアントと弊社メンバーでのワークショップ実施や、定例会議形式で社内機能として弊社ディレクターが参画するなど、その形態は様々です。

必要なのは「経験」「感度」「創造力」

先に「コンセプト(価値の言葉化)×デザイン(視覚化)が重要」と書きましたが、ブランディングを進める過程においても、この「言葉化と視覚化」は重要なプロセスです。仮説を作り、視覚化し、検証し、仮説を調整し、また視覚化し検証する。これらの反復によってアイデアの精度が上がり、メンバーの認識や理解が深まることで、プロジェクトが着実に前に進んでいきます。「アイデア」は言葉化と視覚化の相互刺激によって発想されると考えていますが、「考えながら形にする」ことこそいつもデザイナーが行なっていること、その能力が生かされるところなのです。

一昔前とは違って今はコンピュータで誰もがある程度の精度でデザインが出来るようになりました。またそのためのサンプルや情報もネットに多くあります。デザインすること自体ではすでに、プロフェッショナルとアマチュアとを明確に分けることは出来ないのかもしれません。では、企業やブランドが新しい社会の変化に柔軟且つスピーディーに適応しブランド価値を維持・向上するため、その活動をお手伝いする私たちデザイナーに今求めているのは何か。それは多種多様な課題の「経験」をベースに、あらゆる情報に対する「感度」を上げ、クライアントのビジネスに貢献できるアイデアを作り上げる「創造力」を養うことだと感じています。

私たちは今、新型コロナウイルスの感染拡大に直面し、社会の一員としての意識の変革や新しい工夫を迫られています。アメリカの経営学者フィリップ・コトラー氏が、この状況に対して発した緊急寄稿で「今回の出来事をきっかけにして、いろいろなことを変えていくことになるだろう。そして、ここから多くの人々が充実し満足する生活ができる機会が得られる『ニューノーマル』をつくっていくべきだ。」と述べられています。私たちも含めてあらゆる企業やブランドは、「ニューノーマル」に適応するために今後さらなる創造力の発揮が求められることでしょう。

[筆者プロフィール]

山崎晴司
取締役社長、クリエイティブ・ディレクター

日用品や医薬品、化粧品、食品などの様々なパッケージデザイン開発を中心に、グラフィックデザイン、プロダクトデザイン等、マーケティング思考を前提にしたクリエイティブワークに幅広く携わる。また百貨店等における新ブランドの立ち上げに際しての戦略立案や商品パッケージから店頭ツール類、店舗までトータルデザインプロデュースも行う。


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