ブランディング考

2020.10.14

ウイルス感染予防のプロダクトとは
突如出現した生活必需品のニーズを考える

須田 史義 パッケージ&プロダクトデザインセクション チーフデザイナー

中長期的に感染対策の行動が求められるようになった社会で、感染予防のプロダクトを検証し、これからの暮らしの中でどのように魅力的な商品として展開すべきかを考察します。

ウイルス感染予防のプロダクトとは

変化する社会に生まれた新たなニーズ

生活で使われる商品は、社会の変化に伴って変わってゆきます。通常であれば、店頭商品の変化や人づてに新商品に気づくのですが、現在必要とされているウイルス感染予防の商品は、突然生まれた需要に急ごしらえで用意されたかの様に見えます。これらは本当に人々の満足する商品となっているのでしょうか。

例えば、飛沫感染を防止するマスクも、これまでとは違った機能や利便性を求められるようになりました。マスクは主に花粉症や風邪の流行期に使用されていましたが、暑い夏での使用には、装着感が快適な通気性や冷却機能が要求されます。またビジネスにおいては、会議や接客でのマスク着用は一般的ではありませんでしたが、現在は常時着用していることが相手への気遣いと判断されます。新たなシーンで求められるマスクは、そのデザインも新しいものになるはずです。

様々な状況を深く洞察することで、新たなニーズへの気づきを得ることができ、より良い商品を育てていくきっかけになります。

感染対策製品の分類

ウイルス感染予防のプロダクトとは

マスクに限らず、今まで出会うこともなかった製品を見たり、使ったりするようになりました。店舗カウンターのクリアパーテーションはもはやお馴染みです。他にも、極力接触せずにドアを開けることができるドアノブレバー、非接触で使用できる体温計など。それらを分類すると4つのカテゴリーに分けられます。

1.飛沫感染の防止
マスク、フェイスシールド、マウスシールド、カウンター用パーテーション、空気清浄機

2.接触感染の防止

接触感染対策グッズ(手袋やドアノブレバーなど)、非接触自動ディスペンサー

3.除菌、洗浄
携帯用除菌スプレー、除菌シート

4.体温測定
赤外線体温計、サーモカメラ

分けられた4つのカテゴリーは「ウイルスに感染しない、ウイルスを拡大させない」という目的のための手段(為すべき方法)です。アプローチの方法で、1と2は「ウイルス接触の予防」、3と4は「感染疑いの判断や対処」と分けることができます。また、1と4は人が対象で、2と3はモノ(飛沫付着部)が対象になります。様々な役割がある製品も体系的に捉えることで、その特徴が明確に理解でき、商品のアイデアを生み出す一助となります。

フェイスシールドやマウスシールドは一般的に使うことはなかったものですが、街中で見かけると、改めてウイルスの存在を感じます。ウイルスは物理的に存在しますが、見て確認することができないため、それが付着したかどうかが分かりません。そのため、これら製品は感染予防の正確な情報を元にした機能を有することが大切です。

不便なモノ、不要なモノ、不足しているモノ

求められる商品の価値は実用的な機能面だけに限りません。使用される状況によって様々な特徴が要求されます。

・ 付加価値
使用環境や状況に応じて生じる基本機能に付帯した価値

・ 感覚的価値
モノの働きには直接関係はしない感覚的な魅力

・ 環境配慮
省エネ、省資源、リサイクル性、有害性などの配慮

・ 新技術
新しく開発された技術や素材の活用、他分野の技術の流用

先にあげたマスクの例であれば、夏場の快適性は基本的な感染防止機能にプラスした付加価値にあたります。また、ビジネスで使いやすいデザインという価値は、情緒的な面での使用シーンでのマッチングです。

また、使い捨て商品として見ると、環境負荷も考慮する必要があります。脱プラスチック社会への試みとしてレジ袋有料化が始まったにもかかわらず、道端に捨てられたマスク(多くの使い捨てマスクはプラスチック製)も環境を破壊する要因になります。人々の意識が高まれば、生分解性素材を使った、繰り返し使える布マスクの需要は高まると思います。

一方で、新技術や異なる分野の技術を取り入れると、これまでの常識を超えた利便性や効果をもつ製品が開発できます。マスクも長時間使うと清潔が保たれているか疑問ですが、光触媒や紫外線の除菌技術でマスクを殺菌できるツールは人々に安心感を与えることができます。もし、医療用マスクの高機能フィルター素材が安価に生産できれば、一般でも高いレベルで感染予防ができるようになるでしょう。

コロナ時代のプロダクトアイデア

コロナ時代のプロダクトアイデア

ここまで感染予防のプロダクトを考察してきました。それらを踏まえ、ウィズコロナ社会のニーズに沿った商品アイデアを考えました。

アイデア1:体温も測れるアルコール噴霧ディスペンサー
体温計測もアルコール消毒も非接触でできるなら同時に行えれば便利です。店頭や会社の入り口、家庭でも玄関に備え付けるだけで、手のひらの消毒と体温測定が一つの動作で可能です。

アイデア2:マスク収納用ポケットが付いた衣類
常時着けなくてはならないマスクも、食事の時や屋外に出た時などは外す状況もあります。そのときに困るのはマスクの置き場所です。清潔に保たなくてはなりませんが、マスクケースを持ち歩くのも面倒というときに、収納しやすいポケットが衣服に(ファッショナブルに!)付いていれば大変便利です。

アイデア3:映像用スクリーンを兼ねたカウンターシールド
店頭で買い物するときに、クリアシールド越しに見るレジの金額表示は確認しにくいものです。シールドをスクリーンとして金額を投影できれば、スクリーンとパーティションの2つの役割を兼ねた製品になり、用途が広がります。

感染対策製品のカテゴリーをまたいだアイデア商品や、他の製品に便利をプラスする付加価値として、または製品の役割を拡大したソーシャルツールというように、しっかりと考察することで様々な可能性を見出すことができます。「あればいいな」と想像したに過ぎないアイデアですが、次の時代を切り開くビジネスは、こんな商品のタネから芽生えるのかもしれません。

今後、ビジネスや日常で感染予防の商品は、相手を思いやる(相手に不快感を与えない)エチケットとしても、さらに様式化が進んでいくと予想されます。そのような社会傾向は、マナーが要求されるという難しい側面もあります。しかし、生活に必要なプロダクトは、感染対策の商品であっても人々に心地よさを与えるものでありたいと願っています。
近頃、マスクを自分なりにデコレーションしてSNSなどにアップすることが若い世代を中心にブームになっているようです。シールやサインペンでカラフルに彩られたマスクからは現状を楽しもうというパワーを感じます。
感染対策を積極的に楽しんだり快適にする工夫は、大きな視点で捉えると社会をポジティブに変えてゆく力になると思います。そのような工夫が「人々の暮らしに資するプロダクト」となり、マーケットを形作ってゆくと考えています。

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[筆者プロフィール]

須田 史義
パッケージ&プロダクトデザインセクション チーフデザイナー

TCDにてプロダクトデザイン、パッケージデザインに携る
クライアントと一体となり商品ブランドを作り上げている
オルタナ、インディー音楽が好き


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