ネーミングと商標 002:洒落たコードネーム「GoogleとKitKat」

前回、Microsoft社のコードネームを紹介しながらネーミングや商標のお話をしてきましたが、IT業界ではMicrosoft以外でもコードネームがよく用いられています。
例えば、AppleのMac OS XシリーズではTiger やLeopardなど、ネコ科の動物の名前が。GoogleのAndroidシリーズには、CupcakeやIce Cream Sandwichなどのお菓子の名前など、一定のテーマに基づく簡単な名前が用いられています。

このGoogleのスマートフォンOS, Android4.4 の開発コードネーム名をご存知でしょうか?
コードネームはなんと「KitKat」。あのNestle社の商標です。

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上の図にあるように、ある時期からGoogleのAndroid開発コードネームはアルファベット順にお菓子の名前から選ばれてきています。「K」の順番に来た際には、開発チームのメンバーの好物だった「KitKat」をどうしても使いたかったようで、GoogleからNestleにブランド名の使用(商標の通常使用権)を打診し、Nestleがこれを快諾。Googleの本社にもマスコットキャラクターのオブジェが登場しNestleからもコラボレーションKitKatが登場する等、コラボレーション展開が進んでいます。

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http://www.bbc.com/news/technology-23926938

また、こんな動画もご存知でしょうか?開発陣のジョークかもしれませんが、Nestleが公開した「KitKat 4.4」の動画。Chief Breaks Officerという方がKitKatをスマートフォンのように紹介しています。

コードネームを発端にしたこの2社のコラボレーションは、Googleにとっては自社のオープンでユニークなアイデンティティを上手く表現し、且つ開発陣のモチベーション維持も同時に果たしていることでしょう。またNestleもロングセラーブランドにありがちな固定化したブランドイメージから離れ、先進性や挑戦といったアグレッシブさを感じさせる事に成功していると思います。

日頃、特にネーミング開発のお手伝いをする際、「商標」というテーマにおいて「他社との権利関係の問題だけは発生しないよう滞り無く進めたい」という話をされる方がいます。そのような場合、わずかなハードルをクリアすればコミュニケーション展開が飛躍的に拡がるにもかかわらず、「専権」に拘りすぎて閉塞的なスクリーニングに陥り、結果アイデアが日の目を見ないケースが多くなってしまいます。

これではブランディングにおけるシンプルな目標のひとつ「ファンを増やすこと」を達成できません。ブランディングの観点からすると商標権は本来「ファンとの繋がりを守る」ための権利なのですから、目標を達成する為に権利をどのように活用できるかまで見通してネーミング開発をする意識も重要でしょう。

GoogleとNestleのように互いのブランド資産を友好的に活用するのは一朝一夕では難しく、どの企業にも出来る事ではないかもしれません。しかし、「少しだけ開かれた考え方」を持ちアイデアを見通す事が、ブランドコミュニケーションを飛躍させる上で重要ではないかと思います。


[筆者プロフィール]西川将史 株式会社 TCD チーフプランナー
心理学 × マーケティング × 写真 × デジタルガジェット × サッカー × 子煩悩 ×のコラボでブランドプランニングをオモシロク。甘党。