” 一人で逃げないで “

TCD’s Philosophy from the Chairman’s Study

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非常口のサインを至る所で見かける様になって久しい。日本発のこのサインデザインは、ISO(国際標準化機構)でも採用され世界各国で普及しつつ有る様だ。
しかし、私にはこの非常口サインのデザインに少々気になるところがある。
断っておくが非常口サインの是非を問うている訳ではない。むしろ、この種のサインはあって然るべきで、問題は一人でドアーに向かう人のイラストが描かれている点である。これには大いに違和感を覚える。

有事の際「もしあなたの隣に身体に不自由な人が居られたら?」「もし幼い子どもやお年寄りが居られたら?」「その時は?」と思ったりする。人にはその程度の常識の持ち合わせは当たり前のこととしても、昨今のモラルを見る限り少々不安を覚えてしまうのは私一人ではあるまい。故に、日頃から「非常時こそ助け合い」の精神を人の心に浸透させておく必要はないだろうか。
その意味で、世界的なピクトサインになりつつあるこのデザインに、非常口サインとしてヒューマンな視点が欠けている点に疑問が残るばかりか、少々の恥ずかしささえ感じてしまう。

周囲の状況や背景におかまいなく登場してしまう色彩と杓子定規に規制される設置場所と使用サイズ。建築設計や店舗設計を本業としない私でさえ気になるところだ。
本来エマージェンシーは赤色灯で示される。出来れば点滅とサイレンが同調して機能すれば、より小型化が図れもっと効果的になる筈だ。非常口サインに対して「一人で逃げないで」の意味付けと、設置環境を配慮した規制の整備が望まれる。


山田崇雄 株式会社TCD 代表取締役会長、クリエイティブ・ディレクター
[筆者プロフィール]
山田崇雄 株式会社TCD 代表取締役会長、クリエイティブ・ディレクター
1938年大阪に生まれる。1961年~1971年早川良雄デザイン事務所にてチーフデザイナーを務める。1971年独立。1977年株式会社TCD設立。
大阪府アートディレクター、大阪デザイン団体連合会長などの公職を歴任。現在、日本広告制作協会関西代表、大阪広告協会理事、佐治敬三賞審査委員長、広告電通賞選考委員などを通じ、関西のクリエイティブ界を牽引している。