2025.12.02

[ブランディング・トーク/vol.1]
アップサイクルから始まるブランドの未来 —ツキ板メーカーの新たな挑戦を振り返る—
大和ツキ板産業株式会社 × TCD


皆様は「ツキ板」をご存知でしょうか?

ツキ板とは、丸太から薄くスライスされた天然木の化粧材。一枚一枚が丁寧に選び抜かれ、自然の木が持つ美しさや温もりを届けてくれる「特別な建材」です。
しかし近年では、塩化ビニール製のプリントシートが市場に広がり、ツキ板を取り巻く環境は厳しいものになってきました。

「本物の木が持つ温もりや風合いを、もっと多くの人に届けたい」
そんな想いから生まれたのが、大和ツキ板産業の新ブランド FORESTERIOR(フォレステリア) です。

この挑戦にTCDが参画し、さらに空間デザイナーを加えた共創プロジェクトは、TCDが提唱する 「イノベーション・デザイン共創プログラム」 を実証するケースとなりました。
そしてその取り組みは、日本商環境デザイン協会(JCD)主催「PRODUCT OF THE YEAR 2025」にて、「サステナブル・プロダクト賞」を受賞するという評価を得るに至りました。

今回は、大和ツキ板産業の丸山氏、空間デザイナーの東氏、TCDのデザインディレクターの日比秀一の3者に、その歩みを振り返っていただきました。


大和ツキ板産業株式会社
企画・デザイン部 部長
丸山 修司

JA LABORATORY
空間デザイナー
東 潤一郎

株式会社TCD
​​デザインディレクター
日比 秀一


新規事業立ち上げの模索から、TCDとの出会い。

丸山氏
「私に与えられたミッションは、本業とは別に新しい売上の柱となる事業を立ち上げることでした。社内で議論を重ね、“既存の技術を新しい市場にどう活かすか”という方向性に辿り着きました。レーザー加工機を活かした試作を重ねましたが、思うような成果は出ず、外部の力を借りる必要性を痛感しました。
そこで『ブランディング』『プロダクトデザイン』といったキーワードで検索を繰り返し、4社を比較検討。その中には、コンサルティング業界最大手や、ブランディングデザインで知名度を高めていた会社、そして地元広島の企業などがありました。その中の1社がTCDでした。
WEB会議で日比さんのプレゼンを受けるうちに、静かな語り口の中に“共につくりたい”という強い意志を感じました。さらに山崎社長から、3カ年のブランド育成ステップや共創体制の提案を受け、初めて“この会社なら任せられる”と確信しました。ここからFORESTERIORの挑戦が本格的に始まりました。」

TCD・日比
「お話を伺ったとき、丸山さんの言葉の端々にツキ板の未来を本気で考えているという覚悟を感じました。単なる依頼ではなく、共にブランドを育てていく挑戦になる―そう確信した瞬間でした。」


依頼から“問い”へ、ブランド変革への第一歩

丸山氏
「最初にTCDさんへ相談したのは、もっとシンプルなものでした。従来のツキ板製品にどんなデザインを施せるか、そしてそれをユーザーにわかりやすく魅力を伝えるためのウェブサイト設計。この2点がメインの依頼内容でした。」

TCD・日比
「そのとき正直に感じたのは、“それだけではツキ板の本質的な価値を再発見してもらうのは難しい”ということでした。もちろん形にはできますが、一過性のプロモーションで終わってしまう。ツキ板の未来につながる問いを立て直す必要があると考え、外部パートナーでもある空間デザイナーの東氏にも声をかけ、プロジェクトチームを発足しました。」


廃材の山の中に見えた“新たな価値の芽”

TCD・日比
「工場や倉庫を見学させていただいたことが大きな転換点でした。そこで目にしたのは、製造過程でどうしても出てしまう端材、そして品質基準に満たず眠っている未利用材の山です。
この光景を見て、これを資源として活かせばツキ板に新しい意味を与えられるのではないかと考え、『アップサイクル』という発想を提案しました。」

丸山氏
「ただ、最初は強い抵抗がありました。ツキ板は、美しい木目を選び抜いて提供するもの。端材や規格外品を製品にするなんて、ブランドを損なわないか?という葛藤が大きかったんです。」

東氏
「一方で、それまでの日本の建材業界では、ツキ板の価値基準があまりにも固定的だと感じていました。美しい木目でなければツキ板とは言えないという考え方が根強く、わずかな節や色の揺らぎさえも排除されてしまう。けれど、空間デザインの現場では、むしろこれまでにない表情を求める声は間違いなくありました。」


“挑戦しないことこそリスク”

丸山氏
「TCDさん、東さんとの議論を続ける中で、資源を活かすことが社会課題の解決につながるという考えに触れました。確かに、私たち自身も持続可能性のテーマを避けては通れないと感じていました。最終的には、挑戦しない方がリスクになると考え、踏み出す決意をしました。」

TCD・日比
「葛藤は自然なことです。でもそこから問いを深めることで、新しい価値を見つけることができる。『端材をどう価値に変えるか?』『空間でどう体験されるか?』と問いを立て続けたことで、チームの方向性が揃っていきました。」

東氏
「同時に、建材業界では特に欧州を中心に、経済成長のためにこのまま資源を浪費してよいのかという問題意識が高まっています。環境負荷を減らし、素材を循環させることが、これからのデザインに求められる本質的な姿勢だと感じました。」


共創のプロセスは、“問い・言語化・体験化”

東氏
「毎月の定例会での試作品レビューは、空間デザイナーとして、使ってみたい素材の探求でもありました。光の当たり方や手触り、施工のしやすさを一つひとつ丁寧に確認しながら、何度も意見を交わしました。
デザイナーの視点や感覚がそのまま製品に反映されたことは、このプロジェクトならではの大きな成果だと思います。」

丸山氏
「その中でも端材をモジュール化し、300×300や600×600のタイル状に展開するアイデアは大きな突破口でした。これで施工が容易になり、デザインの自由度も増したんです。」

TCD・日比
「我々はブランドの骨子を設計し、ストーリーを言語化しました。“端材に新たな価値を与える”という理念を言葉とビジュアルで明確にし、全員で共有できるようにしました。『問い → 言語化 → 体験化』という流れを常に意識したプロセスでした。」

端材を選び、組み合わせ、何度も確かめながら新たな表情をつくり出していく。


FORESTERIORを象徴する3シリーズの魅力

丸山氏
「代表的なものを3つご紹介します。
まず 『Wood Terazo(ウッドテラゾ)』。
端材を細かく砕いて樹脂と合わせ、テラゾ(人造大理石)のような模様に仕上げています。一枚ごとに表情が異なり、モダンな空間のアクセントになります。

次に 『Nature(ネイチャー)』。
未利用材の木目をそのまま活かしたシリーズです。節や色の揺らぎも“自然の表情”として捉え直し、本物の木の温もりを空間に取り込めます。

そして 『mimi(ミミ)』。
丸太をスライスした際に出る“耳”の部分を活かしました。不均一さや境界線が独特のリズムを生み、空間に力強い存在感を与えます。」

Wood Terazo(ウッドテラゾ)

Nature(ネイチャー)

mimi(ミミ)

東氏
「Wood Terazoはモダンなデザイン空間に映えますし、Natureは素材感を強調したいときに最適です。mimiのラフさは空間に個性を生みます。3シリーズそれぞれに独自の魅力があります。」

TCD・日比
「共通しているのは、“これまで価値が見出されなかった部分を魅力に転換している”点です。アップサイクルをデザインに落とし込む取り組みの成果だと考えています。」


JAPAN SHOP 2024 ─ 市場が示した驚きと共感

丸山氏
「JAPAN SHOP 2024での初披露は大きな節目でした。来場者がFORESTERIORに触れ、“これが端材から生まれたとは思えない”と驚かれたことが、特に印象に残っています。実際に商談へ進むケースも生まれ、大きな自信にもつながりました。」

東氏
「やはり実物を前にすると説得力が違います。光を当てたときの木目の奥行きや手触りはプリントシートにはない魅力です。空間デザイナーとして、“新しい選択肢ができた”と実感しました。」

TCD・日比
「展示会は、仮説を市場で検証する場でした。FORESTERIORは素材ではなく、“持続可能性とデザイン性を両立した体験”として受け止められた。ブランドの本質的価値を具体的なかたちで示すことができたと思います。」

JAPAN SHOPの出展ブース。

FORESTERIORを活かしたブース什器。


立ち上げから「PRODUCT OF THE YEAR 2025」受賞、FORESTERIORのこれまでとこれから

【第1期】立ち上げフェーズ
– コンセプト策定
– 製品開発(試作)
– ブランドサイト公開

【第2期】拡張フェーズ
– ユーザーの声を反映した改良
– 製品バリエーション展開
– 展示会・営業活動で顧客接点を強化

【第3期】拡大フェーズ(現在)
– 実績をもとに新しい顧客接点を開拓
– 各種アワードへのエントリー活動
– 営業ツール整備
– 新製品リリースの準備

丸山氏
「1期目はコンセプトを固め、製品を作り、まず世に出すことが目標でした。2期目はユーザーの声を反映しながら製品バリエーションを増やし、展示会や営業で顧客接点を広げました。そして現在の3期目は、これまでの実績を活かして拡大に挑戦しています。」

TCD・日比
「3年目に入り、プロジェクトは軌道に乗ってきたというより、本当の意味で育てるフェーズに入ったという感覚があります。継続的に関わらせていただけていることは、我々TCDにとっても非常に学びが多く、共創のあり方を体現する取り組みになっています。」

東氏
「初期は正直、ある種の実験でした。ツキ板の価値を“素材”としてではなく、デザインとサステナブルの文脈でどう再定義するか。その試みに共感していただける方が少しずつ増え、展示会でも“これは面白い”と反応してくださる方が出てきた。ブランドが育っていく過程を体験できているのは貴重です。」


「PRODUCT OF THE YEAR 2025」受賞という追い風

丸山氏
「私たちはずっと、本物の木が持つ魅力をどう伝えるかに向き合い続けてきました。FORESTERIORは、その答えの一つとして生まれたブランドです。今回、Wood BrickシリーズがJCD『PRODUCT OF THE YEAR 2025』の『サステナブル・プロダクト賞』を受賞したことで、私たちが描いてきた方向性は間違っていなかったと、改めて確信を持つことができました。」

TCD・日比
「賞の対象になったのは製品のデザインですが、その背後にある“開発プロセス”や“考え方”も評価されたように感じています。実際、審査員のコメントにも“自然そのものの魅力を引き出しながら”手作業”の温かさを感じさせられる素晴らしいデザインである。”とあり、それはまさに僕たちが大切にしてきた部分でした。」

ツキ板の端材を手で割き、一枚一枚貼り合わせて作るWood Brick。

東氏
「展示会や建築系メディアを通して、FORESTERIORの取り組みを初めて知ったという方も増えたと思います。今回の受賞は、製品としての評価だけでなく、まだまだ知られていない木の魅力を伝えていく大きなきっかけになればいいですね。」

丸山氏
「実はJCD『PRODUCT OF THE YEAR 2025』以外にも、有名なアワードへ積極的にエントリーしてたんですよね。」

東氏
「はい。やはり、自分たちだけで評価するのではなく、外の視点でどう映るかを試すことも、ブランドを広げる上では重要だと思っています。今回はその試みに、しっかり結果が出て本当に嬉しいです。」


FORESTERIORが教えてくれた、価値を再定義する意味

丸山氏
「端材や未利用材は弱みではなく資源になり得る。FORESTERIORを通じて、その発想の転換ができました。」

東氏
「素材にストーリーがあることで、デザインが力を持ちます。空間に置かれたとき、単なる“板”ではなく“物語を持つ素材”として体験されるのです。」

TCD・日比
「大切なのは“問い”を立てること。当初はグラフィックとウェブの相談でしたが、『端材をどう活かすか?』という問いが新しいブランドを生みました。これは他の業界にも応用できる普遍的なプロセスです。」


最後に

依頼は「製品に施すグラフィックとウェブサイト設計」から始まりました。そこから工場での発見、アップサイクルという新しい問い、葛藤を乗り越えた共創のプロセスを経て、FORESTERIORは「端材から未来をつくるブランド」へと成長しました。
1期目の立ち上げ、2期目の拡張、そして3期目の拡大。この歩みは、ブランドが作って終わりではなく、“共に育て続ける”ものであることを示しています。
TCDの「イノベーション・デザイン共創プログラム」は、技術や資産を新しい価値に再構成するための体系的なプロセスです。
FORESTERIORは、その実証例であり、未来のブランドづくりにおける象徴的なケースとなるでしょう。

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