2021.05.27

今さら聞けない!マーケティングの基礎知識
消費者行動研究としての「ライフステージ論」の 有効性を検証する

生山 久展 株式会社TCD クリエイティブディレクター

消費者行動研究としての「ライフステージ論」の 有効性を検証する

シリーズ企画「今さら聞けない!マーケティングの基礎知識」も第3回目。今回は前回テーマの「世代論」の対極として論じられることが多い「ライフステージ論」を取り上げます。

「ライフステージ論」とは何か?

一般的なライフステージ

前回取り上げた「世代論」は、その世代共通の「通過体験」によって、世代特有の価値観や消費性向など特徴的な傾向が表れるというものでした。そして今回取り上げる「ライフステージ論」は、出生、入学、卒業、就職、結婚、出産、子育て、退職、死亡といった人生の節目節目によって生活が変わり、その時々ライフステージ特有の消費が生まれることに注目した消費者行動研究です。

入学・就職時に購入する洋服類、就職や結婚などを機に新調する家電製品、子どもが生まれると移動に必要になる自動車、家族が増え手狭になり思い切って購入を決意する住宅などはライフステージ消費の典型的マーケットでした。

また「ライフステージ論」は、節目節目のライフイベントだけでなく、その年齢を迎えたことで生まれる変化にも注目します。分かりやすく言えば、「子どもの頃美味しいとは思えなかったナスが、ある年齢になると好きになる」のように、加齢とともに嗜好や意識、価値観が変わり、消費行動の変化となって現れてきます。

また顧客との関係が長く続くホテルや自動車ディーラーなどの業界では、顧客各々のライフステージでのイベントで発生する消費をすべて自社で取り込み、顧客生涯価値を最大化しようというLTV=ライフタイムバリュー概念も浸透しています。

今注目を集める「ライフステージ」は、消費意欲旺盛な70代

今年齢による変化が大きく、注目されているセグメントが70代です。住宅ローンや教育費から解放された70代は、残りの人生をより豊かなものにしたい、自分自身に投資したいと考えるようになります。可処分所得も高く、価格を気にすることなく自分のための消費を謳歌し始めます。趣味をテーマにした旅行や、ちょっといい肉ブームを牽引しているのも70代だと言われています。とりわけ「70代女子」は、ミレニアル世代以下が「何でもコスパ」なのと対照的。まだまだボリュームの大きい団塊世代が全員70代になった今、ますますマーケティングにおける70代の重要度が高まってきていると言えるでしょう。

ただし一世代前の「戦前世代」や「戦中世代」が70代の頃は、「消費は悪」「自分より家族のため」の意識が強く、購買力の高い魅力的なセグメントにはなりませんでした。より精緻なマーケティングを行っていこうとすれば、その出発点となる顧客理解は、「世代」と「ライフステージ」のマトリックスで捉えていくことが望ましいと言えるでしょう。

格差社会の進行により、「ライフステージ論」の前提が崩れてきた

1970年代は「1億総中流社会」と呼ばれ、当時の日本人の大多数が自分を中流階級であると考えていました。みんな「世間並み」と思っていて、むしろ「横並び」であることに安心していたのです。「ライフステージ論」はこうした、みんなだいたい同じような生活ができる「平等社会」が前提になっていて、それを支えていた社会的な仕組みが「正社員」「終身雇用」「年功序列」「退職金制度」「年金制度」などでした。標準的なライフステージを送る人が大多数を占めていた時代は、「ライフステージ論」の説明力も高かったと思います。

しかし現代の日本は「平等社会」から「格差社会」にシフトしたことで、標準的ライフステージをはずれる人が増えてきています。まずは非正規雇用の増加。この割合は1980年代の10%台から40%近くまで増えています。次に未婚率。1980年代の5%未満(男性)から30%近くへ。そして結婚しても子供を持たない世帯も倍増しています。さらに就職しても3年以内に3分の1が離職。退職金も20年前より1000万円以上減っているというデータもあります。年金支給もどんどん後ろ倒しで、もらえる金額も減らされてきています。

私が社会人になった1980年代は、定年まで1つの会社で働くことが当たり前でした。会社で真面目に頑張ってさえいれば、生活は会社が面倒を見てくれる。そして退職時には手厚い退職金をもらって、年金も60歳から支給されていました。これが標準的ライフスタイルのベースになっていました。しかし今ではこんな人たちは少数派。「標準的ライフステージ逸脱層」の増加によって「ライフステージ論」単体での説明力は低下してきているのは確かでしょう。

「ライフステージ論」も人生100年時代へシフト

あと一つ大きな変化が、長寿社会の到来です。人生80年時代は「約20年学び、約40年働き、約20年余生を楽しむ」という3ステージ型を前提に、キャリアプランや貯蓄、子育ての計画を立ててきました。誰もが100歳まで生きる社会では、ここに20年の「アディッショナルタイム」が追加されることになります。人生80年時代のスキームは通用しなくなります。「LIFE SHIFT」の著者リンダ・グラットンは、世界一の長寿国家である日本は、どこの国よりも早く人生全体の再設計を迫られることになると説いています。IoTやAIなどの技術革新により変化のスピードが速くなっていくこれからの時代では、これまで積み重ねてきた自分の知識・ノウハウだけでは通用しなくなります。20年の「アディッショナルタイム」を、会社に頼らず社会から必要とされ続ける人になるためには、知識・ノウハウをアップデートするための「学び直し」が不可欠になると提唱しています。

私自身も、知識・ノウハウのアップデートのために大学やビジネススクールへ通うことをこれまで何度も考えたことがありますが、100万円を超える投資が必要であり、漠然とした老後へのお金の不安もあって二の足を踏んでいました。
ところが、コロナ禍の時代でオンラインによるサービスが次々に登場してきています。利用しやすいプライス設定のものも多い。よし、思い切って「学び直し」にチャレンジしてみるか。今気になっているのが以下の「1話10分のインターネット教養講座」。月額1,250円というのも魅力的です。幅広い教養を学び、大局観を身につけ、未来洞察など的確な判断ができるようになりたいですね。

[筆者プロフィール]

生山 久展

株式会社TCD クリエイティブディレクター

戦略開発、調査・分析、商品開発、販促展開まで幅広いブランディング業務に従事。30年余の実務経験をベースに、的確な現状分析から本質的な課題解決のプランニングを得意とする。

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