2015.12.21
creators method 6:森を見よう、花も見よう。
山田崇雄の「creators method」第6回目は「森を見よう、花も見よう。」です。
前回は「対角線」というキーワードを読み解く中から、クリエイターに必要な広い視野への言及がありました。これは「木を見て森を見ず」ということわざに近い教訓があります。「森を見よう、花も見よう。」と言うのは、このことわざの続きのようなものです。情報全体を広く見ることに固執し過ぎると、つい大事なものを見落としてしまう事があり、またその逆も然りだと。「全体と、全体を構成する美しい部分。この両方を同時に見る事が大切だ」と山田は言います。
森を見るように視野を広げ、全体を捉える事はとても重要です。しかし同時に、森という全体を構成するものの中には、繊細で美しく輝きを放つ「花」が存在している事も忘れてはなりません。この「花」というのは木でもなければ枝でもない、もっと小さな単位。森という全体を構成する要素としては少し異色ですが、とても繊細で美しいものです。しかし、いくら「花」が美しいからといって、そればかりに没頭してもいけません。「花」のみで積み上がっていった全体は決して森にはならず、単なる「花畑」で止まってしまうのです。
仕事に置き換えて考えるならば、その案件にまつわる様々な情報を掴み、顧客が言いたい事をある程度感じ取り、全体的な方向性の判断ができる状態で満足してはならないという事です。ただ単純にそうした方向性だけで終わらせず、「本当にこの人が美しいなと思うものは何だろうか」とよりその顧客に近づいて本質を深めていく必要があると言います。とはいえ、単に全体的な情報を集めずに顧客が美しいと思っているものだけで判断を進めてしまうと、それは単なる「独りよがり」というもの。全体的な方向性と美しい部分の両立を捉える事が必要なのです。
森は遠くからでないと見えません。一方、花は近づかなければ見えません。行ったり来たりを何度も繰り返すのです。我々クリエイターは客観的に物事の全体像を捉え、方向性を意識しながらも、顧客の懐に飛び込んで主観的な美意識や繊細な事情を汲み取り、両者の調和を模索していくのです。それは顧客と一緒に仕事をする上でのマナーとも言えるでしょう。