2026.01.28

ただの案内じゃない!サインデザインがもつブランディングにおける重要性

菅谷勇斗 株式会社TCD デザイナー

リアルとデジタルの融合が見られる現代、消費者はオンラインで情報を得て、オフラインで体験を重ねることでブランド理解を深めます。店舗や施設などの空間におけるブランド体験で最前線に立つのがサインデザインです。サインデザインとは、屋外・屋内の案内板、店舗ファサード、導線表示、ピクトグラム、デジタルサイネージなど、物理空間におけるあらゆる視覚的案内の総称です。素材、フォント、色彩、照明、配置といった複合要素を通じて情報を伝えます。
その役割は、単なる情報伝達だけではありません。第一印象を決定し、「視認性による認知負荷の増大」「文化・言語の壁」といった利用者の心理的負荷を下げ、ブランドのトーンや価値観を即座に伝える役割も持ちます。そのため、ブランディング戦略とサインデザインが乖離していると、ブランドの信頼低下や誤ったブランド認知を招きかねません。反対に、両者が緊密に統合されていれば、情報伝達がスムーズになるだけでなく、ブランドのイメージを空間全体で伝えることができます。

今回は、蔦屋書店、中之島美術館、そしてロンドン交通局(TfL)のサインデザインを取り上げ、それぞれがどのようにブランドイメージと結びついているかをご紹介します。


1.サインで店内を編集する

蔦屋書店は、TSUTAYAが国内の大都市を中心に展開する大型書店チェーンです。蔦屋書店のサインは、書店という編集的なイメージをそのまま空間に落とし込んでいます。店内は美しい木目を基調とした落ち着きのある空間で来場者に上質で穏やかな時間を提供してくれます。
サインで使われているタイポグラフィは、読みやすく本を想起させる明朝体が中心です。特徴的な案内表示やコーナーサインは、パンチングメタルをプレスした透過性のある金属板でできていて、サインの表裏どちら側からでも高い視認性が確保されています。
蔦屋書店では、「文庫」「コミック」「雑誌」といった商品形態で分類するのではなく、旅行、食、アート、ワークスタイルなど、暮らしのテーマに沿った分類で売場が編成されています。美しいサインで編集された店内は来場者に「探す楽しみ」と「居心地の良さ」を同時に感じさせ、蔦屋書店が掲げる「ライフスタイル提案型の書店」というブランドが自然に体験として伝わります。

参考サイト)蔦屋書店


2.公共性と上質さの両立

中之島美術館は、2022年に大阪市の中之島に開館した、大阪の「近代・現代美術」と「デザイン」に焦点を当てた新しい公立美術館です。館内のサインデザインは「公共性」と「上質さ」のバランスを重視して設計されています。
館内で使われている角張ったピクトグラムは、美術館のロゴとも親和性があり、中之島美術館らしさの醸成に一役買っています。タイポグラフィはモダンなサンセリフを基軸とし、可読性の高い字間と行間を持たせつつ、文字のバランスを変えることで案内情報の優先度が直感的に示されています。また美術館のロゴとも親和性のある角張ったピクトグラムも色調は基本的に白黒やグレースケールが中心で、どんな展示内容でも邪魔になりません。サインの素材は耐候性と質感を両立したアルミ複合板や切り文字を採用し、建築の素材感(石材やガラス)と調和させることで施設全体の上質さを保っています。特徴的なのは、導線上の情報密度が来館者の心理負荷を考慮して設計されている点です。
視認距離に合わせた文字スケールやアイコンの配置により、身体に障がいのある方や、国外からの来館者に対してもストレスの少ない誘導を実現しています。こうしたサインデザインのおかげで、上質な空間でありながら、信頼できる公的施設であるというブランドイメージが強化されています。

参考サイト)大阪中之島美術館 開館準備ニュース Vol.10

出典 https://nakka-art.jp/nakka-news/14/


3.サインから都市の顔に

ロンドン交通局(TfL)は市内の地下鉄、バス、タクシーなどの公共交通機関を管理・運営する組織です。ロンドンの交通網、そしてブランドイメージの構築を長年に渡り担ってきた、TfLのサインシステムは世界的にも高く評価されており、都市レベルでのブランド統一と高い機能性を両立させた代表例です。
丸いロゴ(ラウンドル)や地下鉄の“Tube”タイプフェイスなど、識別性の高いアイコンやタイポグラフィがロンドンの顔として世界的に認知されています。市内に巡らされた地下鉄だけでなくバスやタクシー、河川交通まで共通のロゴで統一され、遠くからでも一目で公共交通機関の存在が認識できます。また、地図やピクトグラムなど言語依存を下げるグラフィカルな表現を採用することで、世界中から訪れる非英語圏の旅行者にも直感的に伝わる工夫がされています。
これらの統一されたサインシステムは「信頼できる公共交通機関」というブランドイメージを支え、利用者に安全・効率・親しみやすさを同時に印象づけています。TfLのサインは単なる案内以上に、ロンドンという都市ブランドの顔としての役割を果たしています。


まとめ

サインデザインは単なる案内表示ではなく、ブランドイメージを空間で伝える重要な表現手段です。ブランドイメージを踏まえたサインデザインが、来場者の体験をスムーズにし、優れたブランド体験を提供します。ブランディングにおいてサインデザインも重要な要素として認識することが求められています。街中に溢れるサインデザインに目を向けてみると、ブランディングの新たなヒントが隠されているかもしれません。


[筆者プロフィール]

菅谷勇斗

株式会社TCD デザイナー

2025年にTCDに入社。企業ブランディングを中心にロゴ、企業ツール、WEBサイトなど幅広い媒体での制作に奮闘中。旅行、ライブが好きです。

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