2012.02.03
ポスタールネッサンス ~サヴィニャックに学ぶ~
山田 崇雄 株式会社TCD 代表取締役会長
TCD’s Philosophy from the Chairman’s Study
情報化社会という言葉が使われて久しい。そしてそれを加速するデジタルメディアが全盛を極めている。怒濤のごとく押し寄る「情報」の波は留まるところを知らない。溢れる情報の海で人々は「情報の探索」に膨大なエネルギーを費やしている。
必要な情報は何処か?正しい情報は何か? メディア環境の激変によるマスメディアの後退と、それに相応するかの様に台頭するブログ、ツィッター、SNSなどのソーシャルメディアの中で、人々は「情報の探索」と言う神経戦を強いられる。状況には心休まる時が無い。
と書いたところで往年のメディアが無性に懐かしく思い出された。街頭の楽しいポスター、新聞紙面を飾る美しい広告。アナログメディアに人々は気持ちを和ませ、その行間にメッセージを読みとり、想像を働かせて十分な情報を得ていたものだ。そっと微笑んで待ち受ける情報に接して、人々は初めてその情報に創造的かつ主体的な役
立たせ方を見出すのではないだろうか。街を彩り情報を送るポスター、忌まわしい記事の中に見つける一輪の花の様な、そんな広告の復活を望むのは私一人ではあるまい。
ここで、改めてサヴィニャックに思いを馳せた。レイモン・サヴィニャックはユーモラスな表現スタイルで、親しみのあるポスターを創り続けたフランスのグラフィックデザイナ
ーである。彼のデザインは常にシンプルでエスプリに溢れており、見るものに笑顔で語りかけてくる。こうした「視座」こそ、複雑化、混沌化した情報環境に見直され、求められるべきコミュニケーション・アプローチではないだろうか。
[筆者プロフィール]
山田 崇雄
株式会社TCD 代表取締役会長
1938年大阪に生まれる。1961年~1971年早川良雄デザイン事務所にてチーフデザイナーを務める。1971年独立。1977年株式会社TCD設立。大阪府アートディレクター、大阪デザイン団体連合会長などの公職を歴任。現在、日本広告制作協会関西代表、大阪広告協会理事、佐治敬三賞審査委員長、広告電通賞選考委員などを通じ、関西のクリエイティブ界を牽引している。