芦屋・銀座通信〜東京ミッドタウン日比谷と地域ブランディング

「芦屋・銀座通信」では、TCDのオフィスがある兵庫・芦屋と東京・銀座からリレー形式でコラムをお届けします。

 今回は、銀座から少し足を伸ばして、2018年3月29日にオープンした東京ミッドタウン日比谷をお散歩してみました。

 私の個人的な好みから、まずは東京メトロ千代田線の日比谷駅の改札前に堂々と広がる迫力の地下アーケードからご紹介いたします。

地下アーケード

 東京ミッドタウン日比谷は、三井銀行(現・三井住友銀行)本店が入っていた日比谷三井ビルディングと、同じく三井不動産運営の三信ビルディングの跡地に建てられた施設。日比谷はかつて日本橋と並ぶ三井グループの一大拠点だった場所です。
 この地下アーケードは、2007年に解体された三信ビルディングへのオマージュになっています。市民による保存運動も長く続いた程愛されたビルであっただけに、特徴的であったバルコニーや鳥の彫刻など、細かい所まで再現されています。かつての姿を知る人なら、その面影が一気に甦ってくることでしょう。千代田線を降りると、異次元空間に迷い込んだのかと思うような独特の空気が漂っていたのが懐かしく思い起こされます。
 三信ビルディングは1930年(昭和5年)の建築時、「どこよりも新しいものを」とのリクエストで建てられたのだとか。竣工時の地下アーケードは天井が青く塗られ、12星座が描かれていたのだそうです。戦後GHQに接収されて天井が白く塗られたそうですが、オフィスビルとしては、ずいぶんハイカラな発想ですね。その昭和モダンを受け継ぎ新しく甦ったアーケードは、カフェやスイーツ店がずらりと並んだスタイリッシュな空間に仕上がっています。

 東京ミッドタウン日比谷の建築は、低層階は三信ビルディングのデザインをモチーフとし、高層階は鹿鳴館のインスピレーションから、頂点や壁面に柔らかなカーブを取り入れているのだとか。そんな所からも歴史に軸足を置いて前へ進もうという開発思想が伺えます。

HIBIYA CENTRAL MARKET 3F

 昭和つながりで、ユニークなエリアをもうひとつご紹介します。施設内に、突如昭和モダンの街が出現したかのようなこの一角。
HIBIYA CENTRAL MARKET

 三信ビルディングにあった伝説の喫茶店「ニューワールドサービス」を思わせる、手描きの筆跡が残る電照サインに誘われて、路地のような細道を入っていくと、中は思いのほか大きく広がっています。そこにはコーヒースタンド、世界の雑貨と本、オープンな居酒屋、イベントスペース、理容店、眼鏡店、ギャラリーのようなアパレルショップなど、9つの異なるショップの懐かしさと、洗練と異質感が、ぎゅっと、そしてゆるく、ひしめき合っています。
 雑多だけれども、なんとなくひとつの街らしいエリアとしてまとまりを感じるのは、やはりアジアらしい、そして日比谷らしいところでもありますね。

LEXUS MEETS…”HIBIYA” 1F

 もうひとつ、ユニークなエリアがこちら。
LEXUS MEETS…"HIBIYA"

 外観に輝く黒地にプラチナムのLEXUSロゴを見て、こんなところにカーディーラー? と思いきや、「LEXUSのあらたなライフスタイル空間」というこの場所には、カジュアルなカフェが。そしてその奥にはスタイリッシュな雑貨が売られ、LEXUSの試乗までできるそう。
 高級車ブランドが顧客とのタッチポイントを広げるために設えたブランド体感施設は、他にもメルセデス ミーBMW GROUP Tokyo Bayなど、ここ数年でいくつか登場しています。けれど、「車」を軸にシソーラスを広げた空間づくりとは真逆の、「暮らしの中にLEXUSがいる」といった提案となっている点がユニークです。
 こうして作り上げた世界観は、東京ミッドタウン日比谷の広報誌で「気がついたら入店していたと言った具合に、誰でも気軽にLEXUSのあるシーンに触れることができ、親しみを感じてもらえる、そういうストアにしています」と語られる通り、これまでのLEXUSブランドから受けるイメージと比べると、設えも品揃えや価格もカジュアルで身近。この場所を通じてLEXUSがどんな身近な存在になっていくのかが楽しみです。

 その他にも日本初出展のレストランなど、魅力的なお店がたくさん入っていますので、ぜひ体験してみてください。

超・借景戦略 あふれる緑

 そして、この施設の大きな特徴が、日比谷公園に面しているという利点を最大限に生かした緑の多さです。

TOHOシネマズ日比谷の緑

TOHOシネマズ日比谷からは日比谷公園を一望

Green2

左:6Fのパークビューガーデン / 右:2F日比谷公園に面したバルコニー


 屋上庭園はもちろん、飲食店も通路も、日比谷公園側はほぼ全面、どこでも緑を感じることができる超借景戦略をふんだんに取り入れています。風が抜けて、とにかく気持ちが良い施設です。これからの季節、風に吹かれながら、昼間からシャンパンを・・・なんて最高ですね。

 館内をぶらぶらと歩いていると感じる、もう一つの特徴が、空間使いの贅沢さ。

Hall

 通常の商業施設であれば化粧品や服飾雑貨が所狭しと並ぶであろう施設中央三層吹き抜けの地階エリアは、どーんと空間が空いています。なかなか見ない造りですが、今はオープンしたてということもあり、休日はこの1Fにエスカレーターを待つ人が列を作っています(写真は平日)。

Hibiya Festival

左:管楽器アンサンブル「ブラス・ホリデー」/ 右:歩きやすい高さと、座って観劇しやすい高さの階段。芸が細かい!


 1Fエントランス前にはゆったりとした石畳の広場。ここはイベントスペースとしての機能を考えられているそうで、ゴールデンウィークから1ヶ月間、この「日比谷ステップ広場」を中心に、日比谷の街をあげた観劇フェスティバルHibiya Festivalが開催されています。

 ふと見ると、道向こうの日比谷シャンテまで含めて一つの街並みと感じられる空間になっています。晴海通りから宝塚劇場前を抜けて帝国ホテルまで続く石畳の道も、外観や館内の壁を構成するゆらゆらとした曲線と同調するかのように緑を交え緩やかなカーブを描いて敷き替えられ、境界のゆるい一体感をつくり出しています。日比谷シャンテは2017年秋から半年かけて行われたリニューアルが3月23日に完了し、白かった外観が落ちついたブロンズ調に。

 日比谷シャンテの入っているビル名は、東宝日比谷ビルといいます。あの映画・演劇の東宝本社があるビルです。東宝は昭和初期から東京宝塚劇場、有楽座、日本劇場、帝国劇場など、日比谷一帯で事業を展開しており、その本拠地となるところ。
この日比谷再開発の機会に、日比谷、有楽町の東宝系映画館を東京ミッドタウン日比谷内のTOHOシネマズ日比谷に集約して、日比谷を、日本が世界に誇れる映画・演劇の街 “日比谷ブロードウェイ” にすることを目指していくと宣言しています。
 こうした動きにあわせて帝国ホテル 東京では、3月1日からエンターテインメントの街日比谷と帝国ホテルの歴史の変遷を紹介する企画展を開催。また4月20日から歌舞伎座、新橋演舞場を含む日比谷・銀座・築地の劇場、ホール、ギャラリー、画廊、映画館が連携して「東京アート&ライブシティ」というプロジェクトがスタートし、情報発信が始まっています。

 「商業施設がひとつ建った」 だけではない、「三井」「東宝」など、この地をルーツに持つ企業が垣根を越えて共に牽引役となり、エンターテインメントを街のアイデンティティとして組み込んだ、一大地域ブランディングの始まりだったのですね。 そして、三井不動産による東京ミッドタウン日比谷のプロモーションメッセージは「映画みたいな街が生まれる」

 ゴージャスやラグジュアリーの追求でもなく、日本というより「日比谷」を追求したプロジェクト。今後どんな展開をしていくのか楽しみですし、個人的にもどんどん利用していきたいと思います。
がおー!
(シャンテ前のゴジラ像も、全長3mの「新・ゴジラ像」にリニューアルしてお出迎え)

GOZILA

©TOHO CO., LTD.


関連リンク:
東京ミッドタウン日比谷
https://www.hibiya.tokyo-midtown.com/jp/

HIBIYA CENTRAL MARKET
https://hibiya-central-market.jp/

LEXUS MEETS…
https://lexus.jp/brand/lexus_meets/

日比谷シャンテ
http://www.hibiya-chanter.com/


[筆者プロフィール]
大久保 佳代  株式会社TCD シニア プロジェクトマネージャー
アパレルブランド、インテリアメーカーの広報を経て、2001年TCD入社。
ブランディング、プロモーションなど、幅広いプロジェクトに従事。
着物や古典芸能など、日本の文化を探求中。