2021.11.18

双方向に広がり、変化するブランドコミュニケーション

荒木 可奈子 株式会社TCD デザインディレクター

ブランドイメージは企業側だけで定義できない時代に。

ブランドイメージのコミュニケーションといえば、以前であれば企業側が発信し、ユーザーがそれを受け取るという、一方通行的な流れが主流でした。
しかし現在では、飛躍的なSNSの発達によって、ユーザーが簡単にリアクションを表現できるようになり、企業が想定する、しないに関わらず、ブランドのイメージや認識が、ユーザーによって変化していく現象が数多く見受けられます。

TCDで商品デザインをお手伝いさせていただいているブランドについても、ユニークな現象が起きていますのでご紹介します。

自然発生するブランドイメージ

小林製薬株式会社の「ハナノア」は、鼻うがいのための洗浄液と器具のセット。ツンとしない専用処方の洗浄液で、鼻の奥に入った「花粉・ハウスダスト・雑菌」などをしっかりと洗い流す鼻腔ケア商品です。花粉症や風邪などでおこる鼻づまり・鼻水・ムズムズ感などのトラブルに対応する商品として人気があります。
ツンとした痛みがなく気軽に鼻うがいできるのが特徴ですが、「痛そう・難しそう」という先入観を持つ方にとっては、初回購入にハードルを感じる商品でした。

少し前、この「ハナノア」が電車の車内掲示で、とてもインパクトのある広告を出されたことで話題になりました。

ブランドコミュニケーション 小林製薬株式会社の「ハナノア」

2017/1月頃にJR山手線等に掲示された車内広告

専用洗浄液でツンとせず、鼻の奥まで通ってしっかり洗浄できることをPRするために作成されたものでしたが、「電車の中で『笑ってはいけない』試練」として、1日で8000回以上ツイートされる現象が起きました。

これをきっかけに「ハナノア」ブランドには、自然発生的にユニークさと親しみやすい印象が広まり、後にユーチューバーやタレントからも拡散されていきました。
もちろんソーシャルから出てきたイメージを、プラスイメージに転化させていくことが必要です。工夫していくことで、一過性で終わらせないブランドの認知強化につなげることができます。

イメージを双方向に活かすブランドへ

TCDは、2005年の「ハナノア」ブランド誕生からパッケージデザインを担当しており、現在ラインナップは立ち上げ時の1アイテムから6アイテムに広がっています。
デザインのポイントとして、ブランド名の看板に「鼻うがい」と「ハナノア」をセットで入れることで、商品カテゴリーとして一連で覚えてもらえるようにしています。
また、医薬品ではなく日常使用する商品なので、親しみやすさのキーカラーとしてクリーンで日用品と感じてもらいやすいグリーンを採用。さらに店頭で商品用途を比較しやすいように、全ラインナップのUSP(Unique Selling Proposition)を同じ高さに揃えて表示し、商品選択がしやすく、店頭の棚で商品が映えるように設計しています。このような工夫をすることで、親しみやすさと共に使いやすさを伝えています。

ユニークさで認知を取りながら、パッケージは真面目に商品の使いやすさを表現する。ユーザーと企業が双方向にブランドイメージを広げていくことが、最近のブランドのカタチと言えそうです。

(私見ですが鼻の中のウイルスを洗浄することは、感染予防にもつながると感じています。コロナやインフルエンザ対策として、この冬はどんどん使っていきたいと思います。)

ブランドコミュニケーション 小林製薬株式会社の「ハナノア」

現在のハナノアラインナップ

[筆者プロフィール]

荒木 可奈子

株式会社TCD デザインディレクター

パッケージデザインを軸足にブランドコンセプトから、商品企画、プロダクト、ビジュアルデザインに携わる。 またストアブランディングとして、店頭から商品まで、売れる店づくりをサポートしている。 甘党の辛党。

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