2025.09.30

3秒で“好き”を生み出すパッケージ

荒木 可奈子 株式会社TCD デザインディレクター

店頭で、商品に与えられる注目時間はおよそ3秒。しかもその3秒は、棚に並んだ競合の中で分け合う厳しい3秒です。だからこそパッケージデザインは「全部伝える」より「ひとつだけ強く伝える」が勝ちなのです。

本コラムでは、ブランディングとマーケティングの視点から、3秒で“好き”をつくる実践的なパッケージの制作方法を、すぐ使える形でまとめました。
私が制作時に心掛けていることなどを交えながら解説します。


最初に、3秒の為のたった3つを定める。

「誰に」「何を」「どうしたいか」この順番で一本の線を引きます。

●「誰に」…ターゲットを一人に絞る(例:「時短したい人」「香りに敏感な人」)
●「何を」…違いを一言に圧縮(例:「無香料」「こぼれにくい」)
●「どうしたいか」…行動を具体化(例:「寝ながらケア」「和えるだけ」)

この3点をしっかり定めれば、パッケージの正面に載せる情報は自然と絞られます。商品のチャームポイントをあれこれと伝えたくなりますが、ブランディングは“足し算”ではなく“引き算”です。捨てる勇気が、商品の魅力のブラッシュアップと、購買率の向上に繋がります。


商品の顔となる「3大要素」を決める

3秒で届くのは3つが限界です。商品の正面は以下の3点の訴求に固定し、他の情報は裏面や側面、商品サイトへ導入するようにします。

●商品ロゴ(商品ブランドのアイデンティティー)
●ビジュアル(商品の魅力を伝えるイメージ)
●ひと言キャッチコピー(USP。商品の“魅力”や“差異”を言い切る)

商品の正面は“写真映え”より“伝わり映え”を優先します。
食品ならシズルや旨味の由来、コスメならテクスチャーの艶や使用感、工具なら格好良さなど、商品性が直感で伝わる瞬間を切り取り、演出するのがコツです。


視線の流れを味方につける

人の視線はZの字に動き、左上→中央→右下へ流れると言われます。店頭のアイレベル(目の高さ)やECのサムネイルでも同様の傾向があります。
左上にアテンション、中央にロゴやメイン訴求のような主役、右下付近にキャッチコピーや「3回分」「朝用」などの実用的な文言。これだけで理解速度が一段上がります。
余白は“沈黙の説明”です。私はいつも主役の周りに余白を入れ、見せたい順の大小をつけています。フォントは太さとサイズで階層を分け、ボリュームのコントラストをつけるようにしています。また、読める文字サイズを意識し、背景と文字色の明度差はしっかり確保します。


ブランドは「コード化」し、視認しやすくする

シリーズやSKUが増えるほど、らしさは散らばりがちです。色・形・商品看板やトリミング形式など、“ひと目でブランド群だと分かる目標(コード)”を1~2個決め、全商品に必ず入れるようにします。これが店頭陳列時にSKU幅分のブランド群として目に留まるキッカケとなり、購入者の印象に大きく残ることになります。棚での再認率が上がるため、3秒でもブランドシリーズを伝えることができます。


店頭を検証!すぐできる“3秒チェック”

AIの視線予測(ヒートマップ)や実棚調査など、店頭テストでの調査ができるのがベストかも知れませんが、実施できるタイミングや費用がない場合もあります。私が検討中の際、社内で行っている簡易チェックをご紹介します。いずれもお手軽で簡単な方法です。


●ぼかしテスト
商品を撮影してぼかす、薄目でみるなどで訴求ボリュームを確認。

●棚画像合成テスト
店頭の棚の画像に、検討中のデザインを入れてみる。

●3メートルテスト
実寸モックを作成し3m離して確認する。遠目にも魅力的かを確認。また、正面以外の見え方を3Dで実感し確認。

●生活空間テスト
実際の置き場所(例えば洗面台、浴室やキッチン)で撮ってみる。生活に馴染むかを確認。


“好き”を生み出すパッケージは設計できる

3秒勝負の売り場で、パッケージは最強の広告です。
もし次のリニューアルや新商品の企画などが控えられている方は、ここに挙げた方法をぜひ一つでも試してみてください。「3秒で“好き”を生み出すパッケージ」の考え方は、売り場でもブランド考察でも確実に効果があるはずです。

もし「商品の、どの要素を削るべきか」「店頭の、どの競合に合わせるべきか」「コストがかけられないが店頭考察したい」といったお悩みがあれば、私たちTCDは3大要素のブラッシュアップや、売り場検証などもご一緒できます。まずは棚前の“3秒”を、一緒に設計してみませんか。

[筆者プロフィール]

荒木 可奈子

株式会社TCD デザインディレクター

パッケージデザインを軸足にブランドコンセプトから、商品企画、プロダクト、ビジュアルデザインに携わる。 またストアブランディングとして、店頭から商品まで、売れる店づくりをサポートしている。 甘党の辛党。

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