2017.05.01

売れるパッケージデザイン 〜ヒントは店頭にあり〜

鎌尾 典明 株式会社TCD デザインディレクター

こちらの連載では、売れるパッケージデザインについて考察していきます。

売れるパッケージのデザインを考える際、その商品の競合となる商品達が並んでいる店頭に行けば、実に多くのヒントがあります。その場で明確な答えが掴めることも珍しくはありません。
逆に言うと、それなしでデザイン作業から入ろうとするならば、数ある競合商品の中から、ターゲットに選ばれるデザインに辿り着くことは難しいでしょう。
なぜならば、売れるパッケージデザインは、“店頭において競合商品に勝つ事”が必要条件となるからです。

答えへ続く道程は様々あるとは思いますが、今回は、私が普段行っている方法を簡単にご紹介したいと思います。

観察と分析

普段からドラッグストアやスーパーには行くようにはしていますが、パッケージデザインの依頼を受けると、改めて、対象の商品が並べられる売り場を徹底的に観察するようにしています。離れたり近づいたりして、棚全体や一つ一つの競合商品を手にとって見ます。
陳列されるのはどのような棚で、位置はどのあたりになりそうか、照明は暗いか明るいか、競合商品はどのような色使いがなされているか、どのようなUSP(※Unique Sales Point その商品の持つ、他にはない強み)を謳っているのか、価格帯はどうか、ターゲットは誰なのか、売れている商品はどんなものか、そのカテゴリの最近の傾向はどうなのか、等々、売り場に行けばたくさんのヒントが手に入ります。

戦略と仮説の構築

次に知り得た情報を元に、戦略と仮説を構築します。その際、基準として考えるのは次の3つのポイントです。

1.その商品棚における分かりやすさを考える

数多く競合商品が並ぶ中、その商品のUSPを一瞬で理解させるには、どのようなコミュニケーションが最適か、という事です。そのカテゴリーでよく使われている言葉、訴求の強弱、などを元に戦略を立てます。

2.その商品棚におけるインパクトを考える

さらに、その棚の中に並んだ時に、どのようなデザインであれば、記憶に残るようなインパクトを出せるのかを模索します。競合商品の中にはまだない、独自性のある表現でないといけません。いくら強い表現でも、隣に類似する表現があれば、その商品の記憶としては残らないからです。

3.その商品棚における“らしさ”を考える

インパクトがあるデザインだったとしても、そのカテゴリーの商品に見えなければ問題です。インパクトがありながらも“らしく”見えるには、どのポイントを押さえればいいかを考えます。

検証

ここに来てようやく、デザイン制作にとりかかります。ターゲット層の共感を得られるトーン&マナーや、そのメーカーらしさというポイントも、加味していきます。そこからはずっとパソコンで作業、とはなりません。形になったデザインを検証していきます。実際の店舗にデザインを並べるわけにはいきませんので、社内の模擬棚に並べたり、店頭の写真にデザインを合成したりします。そうして狙いが効果的に機能しているかの答え合わせを行うのです。

このように、売れるパッケージをデザインしようとするなら、ライバルの事や、戦う土俵の事を知らずに、勝つことはできません。
そのような視点で店頭を見ると、メーカー各社が、自社製品の優れている点を、他社製品を意識しながら、より良く消費者に伝えようとする努力と思惑が透けて見えてきます。
普段の買い物の時には、選んで楽しい売り場ですが、少し視点を変えて見てみると、そこは各社がしのぎを削る戦場なのです。

[筆者プロフィール]

鎌尾 典明

株式会社TCD デザインディレクター

主に商品ブランディングならびにパッケージデザインに従事。実効力の高いご提案を心がけています。趣味は釣りと最近始めたMTB。

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