2024.07.29

ブランドエクスペリエンスデザインを「空間視点」で考える

栗原 瑛里子 株式会社TCD チーフデザイナー

ブランドエクスペリエンスデザインを「空間視点」で考える
ブランディングをご検討される際に、ブランド体験を通じてお客様にどのようなメッセージを伝え、どのような気持ちになってもらいたいと思いますか?ぜひ柔軟に、施策を発想してみてください。

1つのブランドのプロジェクトにおいて、各タッチポイントのプランやデザインを、別々のフェーズや担当者で考えるケースがあると思います。そのデメリットとして、良質なブランドをつくる上で大切な、一貫性あるデザインがしにくくなる、という点が挙げられます。
私たちはこうした課題を少しでも減らし、ブランド全体の魅力や事業の価値を、持続的に高めるものにしていきたいと考えています。


ブランドのエクスペリエンスデザインをトータルに考える

また、次のようなご要望や課題はありませんか。
・新商品の魅力を、深く体感していただきたい。
 お客様と接する時間にも自社らしい工夫を加えたい。
・自社商品やサービスについて、お客様目線での生の声を拾い上げたい。
・ブランド成長への取り組みと現在の姿を、一目で分かりやすく、
 ステークホルダーに伝えられるシーンをつくりたい。

など上記は一例ですが、事業に接するさまざまなシーンにおいて、「ユーザーと自社の共有体験の機会を持ちたい」と少しでもお考えの場合は、ぜひ私たちにお伝えください。
プロダクト、WEB、空間など各種施策の「あり方」を、ブランドのエクスペリエンスデザインとしてトータルに検証すると、ブランディングの効果を引き出せることが多くあるからです。


空間体験のデザインにより得られる、主な効果

特に今回のテーマである空間でのタッチポイントは、ブランドエクスペリエンスデザイン全体の中で、「顧客とブランドとのフィジカルな接点」となります。
より的確に、そしてダイレクトに多くの人の感情に働きかけながら、「ブランドの姿勢」「製品への想い」など、生活者や社会へブランドのメッセージを伝えられる手段となることがポイントです。次項では少し分かりやすく、空間体験によって得られる主な効果をご紹介します。

[空間体験のデザインにより得られる主な効果]
・ブランドアイデンティティの表現と浸透
ブランドの独自性を3次元で視覚化することにより、市場での明確な差別化を行います。ビジョンや世界観の再現は、認知浸透を促進します。
・顧客体験の質の向上
顧客にとって快適性が高く、魅力ある空間は、ブランドへのポジティブな感情を醸成します。顧客が滞在した時間で得たプラスの気持ちは、ブランドへの信頼や愛着を深めます。
・一貫性を持ったメッセージの発信による、エンゲージメントの向上
ブランドと出会うさまざまな場面で、統一した世界観によりメッセージを発信することで、顧客は信頼と安心を感じ、ブランドへのエンゲージメントが向上します。
・商品やサービスの魅力伝達・接点の強化
空間内で商品やサービスの魅力を最大限に引き出し伝達することで、その存在や特長を深く印象付けます。体験性を高める見せ方により、コミュニケーションを促進し、ビジネスの機会を創出します。ストアでは、購買意欲を高めることに繋がります。
・メディアや口コミ・SNSでの認知拡大
顧客へ独自性ある魅力的なブランド体験を提供することで、顧客やメディアによる情報の拡大・シェアを促します。知名度向上、新規顧客の獲得に貢献します。

これらの空間でのフィジカルな経験の蓄積は、長期的な顧客との関係基盤の構築、ロイヤルティの向上に寄与します。
実際の空間づくりを行う際には、ブランドの目的や課題、空間が存在する場所ごとに、適切な訴求効果を生めるようにデザインの検討を重ねます。


クライアントと共に深める魅力

MICHEL BELIN ESSENTIEL(ミッシェル・ブラン エソンシエル)
写真は、名古屋を中心に洋菓子ブランドを展開するベーグジャパンの新ブランド「 MICHEL BELIN ESSENTIEL(ミッシェル・ブラン エソンシエル)」立ち上げの事例になります。

「フランスの伝統菓子を本質とするミッシェル・ブランが日本の食材と出会い、織りなす新しいブランド」として、コンセプト開発から商品企画、ロゴ、パッケージ、ストアデザインなど、ブランディングプロジェクトに一貫してTCDが携わらせていただきました。

このプロジェクトのポイントを、担当デザイナーにヒアリングしました。


「ミッシェル・ブラン エソンシエル」は、名古屋の繁華街「栄」の歴史ある複合ビルが、高級ホテルを併設した商業施設へ再構築される際の、新設店舗のブランディングとしてスタートしました。立地は久屋大通という目抜通り沿いの1階で、公園の植栽が借景として見える素敵な空間です。
ミッシェル・ブランのファミリーブランドにすることは決まっていましたが、打ち合わせを重ねる中で、「この地につくるなら、日常の中でリラックスして立ち寄れる、都心ならではのモダンさを備えるデザインとして、ナチュラル感やここでしか出会えない心地よさを演出したい」と方向性が決まっていきました。お客様と対話しながらトーン&マナーや商品構成などを決めていきました。
空間づくりについては、「都会の中心にある緑豊かな公園前」という心地よいロケーションの魅力を空間デザインに取り込み、高級感がありながらリラックスできる印象を目指しました。店舗のブランドカラーを制定し、空間全体のキーカラーとして使用することで、「ミッシェル・ブラン エソンシエル」の世界観へ没入できるようにしました。また店内を回遊していただけるようにアーチ状の陳列台をメインに、壁面や棚、商品にもブランドアイコンとしてアーチのフォルムを使用することで、ブランドの印象を強めることができたかと思います。
ブランディングする際には商品自体のデザインももちろんですが、ロケーションや空間デザインもトーン&マナー醸成の重要なポイントとなります。店舗を通じてブランドの空気感を感じてもらい、購買体験も心地良いひとときとなるよう心がけました。


クライアントとともにブランドらしさを検証しながら思考を深め、1つの空間体験としてトータルにデザインを行うことで、細部まで工夫や遊び心の行き届いた、オリジナルな世界観の構築に繋がったと感じられる事例です。


共有体験が長期的にブランドを育てる

ブランドエクスペリエンスデザインをトータルに考えることは、「ブランドを育ていく」という少し大きい時間のスケールで、ブランドづくりを行うことにも繋がります。
「 MICHEL BELIN ESSENTIEL」の事例のように、事業を多面的に見つめながら、クライアントと共にコミュニケーションを重ね、ブランドらしいアイデンティティの感じられる空間を構築したこともその1つです。

[多面的にブランドの要素を抽出・蓄積し、ブランドアイデンティティを空間体験として統合]


また、空間では物理的な環境だけでなく、ブランドに携わる誰もが主体的にその魅力づくりに関わりたいと思えるような、気持ちづくりへの配慮も大切だと感じています。
そのため、ブランドの世界観づくりの初期段階より、空間で人が過ごす共有体験のシーンのイメージを膨らませ、使い勝手などの機能的な要件を、デザインと一体的に考えながら体験づくりの設計を行います。そうしたプロセスにより、空間ができた後にもお客様はもちろん、提供側にとっても心地よく、楽しみやワクワクが持続する場が生まれるのではないかと考えます。

今回は、ブランディングをトータルに考える上で大切な、「空間視点」でのブランドエクスペリエンスデザインについて少しご紹介しました。
体験性の豊かさを感じさせるアプローチにより、関わる人の心を惹きつけ合い、ブランドの魅力を育んでいくきっかけとなるのではないでしょうか。

[筆者プロフィール]

栗原 瑛里子

株式会社TCD チーフデザイナー

企業ブランドや事業ブランドに関わりながら多方面の空間デザイン業務にも従事。 課題分析とリサーチに基づいたコンセプト設計を行いながら、人が過ごす時に感じる心地よさと感動のある体験づくりを大切にしている。

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