2023.05.31

デザイナーが見る、デパ地下スイーツブランド

笹倉 彩加 株式会社TCD デザイナー

デザイナーが見る、デパ地下スイーツブランド

TCDでは、百貨店で展開されている洋菓子、和菓子ブランドのデザイン開発を数多く手がけています。 いわゆるデパ地下と呼ばれる場所では、大切な方への贈り物、友人への手土産、自分へのご褒美といった少し特別なものを探している方が多いのではないでしょうか。品質の高さはもちろん、贈り物としての見た目の美しさやワクワク感といった満足を求めて、デパ地下まで足を運んでいることと思います。

スーパーマーケットのように棚であらゆるブランドが並んで販売される場所とはまた違って、デパ地下にはそれぞれのブランドに店舗があり、限られた面積の中でブランドの世界観を伝えるために工夫が凝らされています。

今回は、TCD芦屋本社から電車で約30分の場所にある「阪急百貨店 阪急うめだ本店」を訪れました。地下1階の食品フロアには洋菓子、和菓子合わせてなんと88店舗もあり、連日多くの人で賑わっています。 そんな阪急うめだのデパ地下を歩いて、特に印象深い3つのブランドをご紹介したいと思います。


可愛さを補強するストーリー

tartine

参考:https://tartine.jp/

売り場でも一際目を引く「Tartine(タルティン)」は2019年のオープン以降、行列が絶えないお店です。ブランド名は「タルト」と「ツイン(双子)」を由来とし、双子の女の子と彼女たちを取り巻くキャラクターを主人公に、少しユーモラスで可愛いらしい世界観を表現しています。

彼女たちが描かれているのは後ろ姿だけであり、それによって表情や人間性など、見る側が想像を膨らますことができるポイントとなっています。このキャラクターたちの感情を押し付けないニュートラルな雰囲気は、どんな気分の時でも手に取りやすくしている要因の一つではないでしょうか。

商品それぞれにミニストーリーがあるのも、お菓子をより楽しむことができるポイントです。ストーリーを軸にすることで、揺るぎない世界観と将来への広がりが感じられ、単なる可愛さだけではなくブランドへの愛着につながっています。


文化・伝統を大切にした世界観作り

Rodda’s(ロダス)

参考:http://www.roddas.jp/

スコーンとクロテッドクリームを販売する「Rodda’s(ロダス)」の本社はイギリスにあります。世界的にも有名な乳製品メーカーであり、長年にわたって受け継がれたレシピで製造されたクロテッドクリームは、アフタヌーンティーには欠かせない存在となっています。

ブランドのシンボルは、ミルクを運ぶ女性を中心に鳥やサイロ、船などが描かれており、そのデザインから製品の歴史や起源を感じることができます。パッケージにもシンボルの絵柄が展開されており、白地に青いシンボルが乳製品らしい清潔感を演出し、金のロゴが上質さを引き立てています。

そんな「Rodda’s」ですが、対面販売のショップがオープンするのは日本が世界初です。店舗の様子を見てみると、製品を引き立たせるために非常にシンプルなデザインが採用されており、木の質感を用いた什器や、店員のカンカン帽とシャツに蝶ネクタイといった要素が特徴的です。このナチュラルで上品な印象は、これまでの文化や伝統を大切にして築かれており、製品への安心感やブランドへの信頼感を生み出しています。


ロングセラー商品であることを活かした高級路線

おさつどきっ

参考:https://www.uha-mikakuto.co.jp/uha-osatsudoki/

2023年4月、UHA味覚糖が「おさつどきっ」を出店しました。「おさつどきっ」といえばスーパーでもよく見かけるロングセラーですが、百貨店で販売されているのは、通常より厚いさつまいもを使用した、スイーツのようなリッチな味わいの商品です。

パッケージを見てみると、通常の「おさつどきっ」の中央にある大きな「ど」の印象はそのままに、ワントーン+金のロゴでシンプルかつ高級感のあるデザインに仕上がっています。「ニッポンのスナック」と銘打っているだけあって、ロゴに組み込まれた太陽や畑の線画は、自然な和の雰囲気を感じさせます。さらに、上下のパターン柄としてザクザクシリーズは尖った直線を、しっとりシリーズはゆるやかな曲線をあしらうことで、パッケージ自体が商品の食感の違いを直感的に伝えているのもポイントです。

このように、すでに親しまれている商品をより上質にアレンジし、ギフトとして展開しているブランドは「ハッピーターンズ」「コロロ」「発酵カルピス(R)パーラー」など、阪急うめだ内に数多くあります。「みんなが知っているあのブランド」だからこそ、これまでのイメージが塗り替えられるような新鮮さを持たせることで、よりブランドの印象が深まります。

たくさんのブランドがひしめく百貨店ですが、それぞれの店舗をじっくり見ながら、その世界観や成り立ちについて思いを馳せてみてはいかがでしょうか。「可愛い!」の先に、より深い楽しみや新たな魅力が見つけられると思います。

[筆者プロフィール]

笹倉 彩加

株式会社TCD デザイナー

お菓子や日用品を中心としたパッケージデザインを担当。可愛いものが好き。

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