2015.06.15
Design Column:形[ 具象形 ]
松田徹 株式会社TCD デザインディレクター
TCDのデザイナーとして日々デザインする中での、こだわりについてお話しさせていただくこのコラム。デザインの主な構成要素である、形(点、線、面)、文字、色、素材などのうち、今回は「形」の中の具象形について、TCDのロゴデザイン作品とともに触れていきたいと思います。
「ロゴは会社の顔」と良くいわれます。名前は忘れたけれど顔や仕草は見覚えがある、ということは良くあるのではないでしょうか。人の脳は、名前よりも顔や印象を記憶にとどめやすいといわれています。右脳と左脳にそれぞれ役割があるのはご存知かと思いますが、記憶についても役割があり、右脳はイメージによる記憶で大量に深く記憶し、左脳は文字による記憶で、少量しか記憶されません。ロゴは文字をデザインするロゴタイプ系と、形をマーク化したシンボルマーク系に大きく分かれますが、ロゴタイプ系の情報は左脳で記憶され、シンボルマーク系は右脳で記憶されます。
TCDが手がけた、シンボルマーク系の具象的なロゴをご紹介します。
人をモチーフとした具象的なロゴ
人の形は、動きや“表情”など、多様な表現ができるモチーフである。
1. 大阪府立上方演芸資料館「ワッハ上方」:
目、鼻、口のパーツを自由に並び変えても、笑顔というイメージを変えずに
様々な顔を作れる仕組みになっている。
2. 神戸港クルーズ「シルフィード」:
風の妖精シルフィード。ポーズを印象的に表現。
3. 写真スタジオ「ココロフル」:
記念写真を撮る場合が多い「七五三」を子供のシルエットで表現。
4. 交番マーク(大阪府警):
地域の人と交番の関わりを、「警官に質問する子供」というシーンで表現。
5. 兵庫県立考古博物館:
遺物を手で触れることができる博物館。過去を探る未来をつかむ、子供の手。
6. うまいもん探偵団:
その名の通り、フォークとナイフを持ち食べ歩く探偵を、ホームズ風に。
動物をモチーフとした具象的なロゴ
私たちは動物に対して、ある一定の共通したイメージを持っているので、
その特徴を活かしやすい。造形的にも特徴を出しやすく、また親しみが湧くモチーフでもある。
1. 関西クラシック倶楽部:
本ゴルフ場でよく見られるカワセミをモチーフに。
2. 文化遺産国際協力コンソーシアム:
天平文化の絵柄「花喰鳥」(旧約聖書に登場する喰鳩との説)。
3. 神戸・港ピザ(三輪):
神戸をイメージさせるカモメに、イタリアンカラーのシェフスカーフ。
4. 回転焼肉「ロンド」:
くるっと舞う線でビーフを表現。
5. スマホアプリ「ガイドッグ」(NTTドコモ):
インカムを着用したガイド役の犬キャラクター。
6. 生鮮食品スーパー「まいど」:
生鮮大型スーパーの象徴としてのクジラ。関西的な大胆な表現。
その他(物、植物、自然現象など)をモチーフとしたロゴ
1. 兵庫陶芸美術館:
五つの器の重なりは、「地・水・火・風・空」の連鎖により命が宿る、陶器の自然背景を表現。
2. コウベワインセラー(今井商店):
古代ギリシャから使用されているワイン壺「アンフォラ」。
3. 打出・芦屋の地域情報サイト「decco」:
地域と人をつなぐ、一筆書きの打出の小槌。
4. いずも農業協同組合:
出雲の国の神秘性を、一筆書きの雲で表現。
5. 大手前大学:
開花し成長する花を、人間の姿として象った。上部のわずかな空きは、無限の未来。
6. クラウド会計システム(エーサース):
クラウド(雲)と成長(Grow)する樹木がモチーフ。
[筆者プロフィール]
松田徹
株式会社TCD デザインディレクター
グラフィックを中心としたブランディング及びCI、VIデザイン、パッケージデザイン開発に従事。