2019.06.03

ガイドライン作りはブランド運用の要

ブランドガイドラインというと、何か専門的で難しそうなものと思われる方が多いでしょうか。基本的には「ブランドに一貫性を持たせるためのガイドブック」と言えるのですが、かつては会社内のみで運用するものであり、CI担当者とデザイナーが分かればいいようなものだったかもしれません。しかし近年はWEB上で公開している企業もあり、その在り方は変わってきています。たとえばFrancFrancは、より広く自社ブランドについて理解してもらい「デザイン開発におけるコミュニケーションコストを抑えながら、品質やブランド価値を高める」ことを目的に制定しています(FrancFranc Brand Identity Gidelines)。また、SNSのロゴやアプリのUIのように、広く一般に使ってもらうようなサービスは必ずガイドラインを公開しているので、CI担当者でなくてもガイドラインを目にする機会は増えたのではないでしょうか。

TCDではさまざまなガイドラインの制作を行っていますが、それらは目的や役割によって大きく3つに分類することができます。


1. ブランドブック

自社ブランドに対する理解を深めるための社内ツールで、企業理念、経営ビジョン、行動指針や、ブランドコンセプト、スローガン、ロゴの意味などについて記載します。全社にブランドを浸透させるためのツールなので、ブック自体のデザインにもそのブランドらしい見た目や手触りを与えることが大切です。ヴィジュアルやイラストを使って感覚的に理解できる構成にしたり、行動指針にフォーカスしクレドという形で携帯しやすいミニサイズの冊子にしたり、ブランドの原点である会社の歴史や成り立ちをブランドムービーとして映像化したり。誰に何を伝えるのか、その目的と企業の特徴を考慮して、適切な仕様を選択していきます。

ガイドライン作りはブランド運用の要

2. CI / VIガイドライン

ブランドデザインの具体的な使用方法を記載したルールブックです。基本的にはブランドの象徴となるロゴに関する使用ルールが主となります。会社や事業、商品のブランディングを行う上で、ロゴやブランドカラーは最も効果的に認知に繋がりやすい要素です。良いロゴができたとしても、適切に活用できていなければ、認知は得られません。ブランドマーケティングでガイドラインは重要な役割を果たします。

ガイドライン作りはブランド運用の要

CI/VIガイドラインは大きく二つに分かれたページ構成になることが一般的です。まずはロゴをはじめとした各ブランドデザイン要素自体の使用ルールを示す「基本デザインシステム」です。次にそれらを名刺、封筒などのツール類にどのように配置すべきか、どんなデザインにすべきかを示す「応用デザインシステム」です。ガイドラインを見る機会のない方は、使用ルールについてイメージがわかないかもしれません。主なルールの一部をご紹介します。


a. 基本デザインシステム:

・ブランドデザイン要素
ロゴには、ロゴタイプ(デザインされた文字)とシンボルマーク(図形やアイコン)があり、この両方または片方のみで構成されます。まず最初にロゴの構成や制作意図を示します。他にも社名ロゴタイプ(正式社名を示すためにデザインされたロゴタイプ)やスローガン(メッセージ、タグラインなどブランドの考えを短くまとめたコピー)など、ブランディングにおいて重要な要素を一覧化して全体像を示し、各要素の役割を定義します。

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・表示色
ロゴを何色で表現するかを規定します。青いロゴだとすれば、どんな青色かをCMYK、RGB、特色番号などの数字で明確に示して統一を図ります。また、ロゴは様々な媒体で使用されるため、フルカラーで表現できないこともしばしばあります。モノクロで表現する場合はどのように表示するのかなど、多様な状況を想定して表示色のバリエーションを作成します。

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・最小使用サイズ
最小使用サイズとは、ロゴが明瞭に識別できる最小のサイズのことです。ロゴが表示されていても小さすぎて見えづらくなったり、つぶれたりしては意味がありません。効果的なブランディングのために、適切なサイズで表示されるように規定します。

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・余白規定
ロゴの周囲に確保すべき余白の広さを示します。ロゴと他のデザイン要素や文字情報が近すぎると、ロゴの象徴性が損なわれるほか、他の要素に埋もれて目立たなくなることで視認性も下がります。そういった状況を避けるために、プロテクトエリアやアイソレーションエリアと呼ばれる余白範囲を設定します。この余白範囲は、ロゴ全体または一部分の幅や高さを基準値として、基準値の何倍を余白に取るべきかで定めます。ロゴは拡大縮小して使用するので、「余白は何mm」と固定の数値で決められないためです。

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・組み合わせ
ロゴは上記で説明したように複数の要素で構成されることがあり、いくつかの並べ方によるパターンが発生する場合があります。またロゴとタグラインをセットで表示することもありますので、要素同士のサイズバランスや距離を規定します。

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・指定書体
 会社の住所などロゴに付随する表記要素において、一環した印象を与えるために選定するフォントです。ロゴとの相性を考慮し、一般書体から採用することが一般的ですが、「Mercari Sans」のように企業自身が独自に開発したオリジナルフォントを使用する場合もあります。


・使用禁止例
 ロゴなどデザイン要素の使用上誤りやすい例を示します。誤った使用は望ましいブランドイメージの構築の障害となります。

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b. 応用デザインシステム:

応用デザインシステムでは各媒体のデザインやロゴの配置位置について指定します。会社のブランドガイドラインの場合は、ロゴを社標として使用する媒体と、商標として使用する媒体に分かれます。社標とは会社そのものを示すものです。社標としてロゴを使用する媒体は、名刺、封筒、プレゼンフォーマット、社用車など、会社として使用するツール全般になります。
商標は商品・サービスを示すものです。商標として使用する媒体は商品本体、パッケージ、カタログ、広告、WEBサイト、展示会など、商品・サービスの訴求をするためのツール全般です。企業によっては、会社のブランドと商品・サービスのブランドを分けている場合もあります。その場合、商品・サービスのブランドガイドラインは商品・サービスに関連する媒体のみの規定となります。

各ルールはゆる過ぎるとブランドイメージがバラバラになってしまいますし、厳し過ぎると表現の幅を狭めてしまうことになります。応用デザインシステムでは、媒体によって、細かく指定する場合もあれば、参考事例のみを提示して自由度を確保する場合もあります。ちょうどいい頃合いを探るために、さまざまな使用シーンや制作環境を想定し、検証を重ねることが必要です。

また、ガイドラインの使用目的をはっきりさせることも大切です。冒頭でお話ししたようにガイドラインの在り方は様々な形に変わっています。運用マニュアル資料としての役割のみでCIチームだけに公開するのか、ブランドのビジョンやストーリーの説明を充実させてブランドの指針となる内容にして全社に公開するのか、デザイン会社などの外注先にも配布するのかによって、各ルールの伝え方も変わります。


3. クリエイティブガイドライン

主にブランドのコミュニケーションに関するトーン&マナーを統一するためのブックです。ロゴ、カラー、タイプフェイスといった基本デザインを使いながら、そこに「雰囲気」や「スタイル」を付加することで、そのブランドらしい表現が形づくられ、世界観が生まれます。トーン&マナーを与える要素には以下の3つがあります。

a.カラートーン、配色
b.写真やイラストのタッチ
c.キーワード、コピー表現

トーン&マナーは感覚的な側面も強いため、はっきりとしたルール作りは難しいのですが、OK例とNG例を示すことでブランドが目指すビジュアルを伝えることができます。

ガイドライン作りはブランド運用の要

ガイドラインの制定は、ブランディングをしていく上で重要な役割を果たしますが、一度作ったらそれで終わりではありません。時代と共に使用環境は変化し、表現する媒体やトレンドも移ろっていきます。定期的にメンテナンスを行いアップデートしていくことが、永く愛されるブランド作りには求められます。

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