ブランディングとデザインの関係(3)

こちらの連載では、ブランディングの主にコミュニケーション・フェーズにおけるデザインの役割について考えていきたいと思います。今回は、第3回目になります。

●ユーザーをヴィジュアライズする

 一回目はブランドの見え方について、二回目は顧客とブランドとの接点について考えてきました。今回はブランドの価値を体験的に伝える方法を探っていきたいと思います。

どのようなビジネスでも顧客を知る事がマーケティングのスタート地点となります。ブランドを伝える上で「相手」を知ることは非常に重要で、調査やインタビューを通して顧客インサイトを明らかにしていきます。
そうした上で、どのようにコミュニケーションを行っていくか。バーンド・H. シュミットの『経験価値マーケティング』では、以下のように紹介されています。

  1. SENSE:顧客の五感に訴える
  2. FEEL:顧客の内面の感情に訴える
  3. THINK:顧客のクリエイティブな思考を促す
  4. ACT:身体や行動、ライフスタイルに訴える
  5. RELATE:他者やグループへの所属・承認欲求に訴える

さて、こうしたコミュニケーションを効果的に行うには、セグメントやニーズなどのターゲット層としてではなく、その人自体のキャラクターを知る必要があります。
例えば以下のシートは、とあるターゲットのスタイル・イメージ集です。このようにターゲット層をビジュアルに定着することで、ブランド戦略をより効果的に実行することができます。

userstyle

服の好みは?休日の過ごし方は?住んでいる部屋のイメージは?どういった事に喜びを感じるか?などなど、「相手」を知り、それをビジュアル化することでターゲットを文字通りパーソナルにすることができます。

●同じく、ブランドもビジュアライズする

 ブランドも人と同じように、「アイデンティティ」がありそのブランドを取り巻く「環境」があります。
ブランディングでは、まず市場やユーザーなどの調査を通してブランド・コンセプトを固めていきますが、実際そのコンセプトを体現していくのは、商品そのものであり、ブランド・プロモーション、店員の接客であり、第一回目でご説明した通りあらゆる接点でブランド表現がなされ、それが体験となって蓄積していきます。
ここでも「ブランド・ミッション」や「ロゴマーク」「スローガン」といったブランドのベーシックな階層から、「ルック&マナー」や「トーン&ヴォイス」といった、よりパーソナルに近い階層へとイメージを膨らませていきます。「イメージ」的な要素を規定していくことで、その「アイデンティティ」はより明確になり、またチーム内で共有することでブランドに活力をも与えていきます。

brandstyle

こちらでは、パーソナリティだけではなくビジョンやプロダクト・アイデンティティ、行動や感覚的なものも視覚的に表現していきます。

●ブランドとユーザーの間の感情

 さて、ブランドのパーソナリティとユーザーのパーソナリティが見えてきた先に、あるべき体験が見えてきます。その体験を考える際には、以下の10項目が参考になるのではないでしょうか。
こちらはHarvard Business Reviewで、消費行動を引き起こす感情要因の内、全製品カテゴリーにおいて顧客価値に非常に大きな影響を及ぼす要因として紹介されました。
この10要素を導き出した研究では、消費者を動かす一般的な心情を300ほど見つけ、その影響を測定するため、100万人の消費者調査と300業界、400を越えるブランド資料を調査するのに2年間、さらに10億を越えるデモグラフィック、購入データを調査、検証するのに6年間かけられたそうです。

usermind

感情要因は製品カテゴリーやブランド、顧客セグメントや顧客とブランドとのつながりの強さにおいても、感情要因は異なるとされていますので、どこにフォーカスするかもブランド戦略のひとつになります。

●蓄積されていくブランド体験

 先にも触れた通りブランド体験とは、あらゆる接点を通して発信されたブランド表現が、ユーザー側に蓄積されていくものです。映像で詩的に伝える。グラフィックでシンボリックに伝える。数字やデータでわかりやす伝える。写真や文章で情緒的に伝える。人を通して温度をもって伝える。社会課題を通して伝える。体験の提供の仕方は様々ですが、ユーザーとブランドとのパーソナリティを定め、そしてどうした感情に訴えていくか。

こちらはV&Aで開催された「Shoes:Pleasure and Pain」の展示会の映像ではありますが、FOSTER & SONのものづくりがひしひしと伝わってきます。

「ブランディングとデザインの関係」としては今回が最終回となりますが、ブランド・コミュニケーションを考えはじめる方々にとって、少しでもヒントとなれば幸いです。また改めて、コミュニケーションの設計や実施についてお伝えしていければと思います。


筆者プロフィール
川内 祥克 株式会社TCD クリエイティブ・ディレクター
企業ブランド、事業ブランドやサービス・ブランドの立ち上げ、プロモーション業務に従事。『ブランドのウェブ活用』などのセミナーも開催。