2026.02.25
【ウェビナーレポート】10年後も愛され続けるブランドの作り方
福田 恵里 株式会社TCD チーフデザイナー

イノベーション、戦略、パッケージ。3つの視点から紐解くブランドの未来
製品のスペックが同質化し、「何が良いものか」の判断すら難しくなった現代。一時の流行で終わらず、10年後も変わらず顧客に長く支持されるブランドをどう築くべきなのでしょうか。
先日開催した3部構成のウェビナーでは、そんな時代にブランドが持つべき「軸」とは何か、TCDが手がけた実例を交えて紐解きました。そのサマリーをレポートいたします。

第1部:イノベーション製品開発
「モノを売る」思考から「意味を届ける」思考へ
第1部では、BtoC・BtoB双方の事例から、既存の資産を今の時代の価値へと再定義する手法をお伝えしました。
思考の補助線: 10年後も愛されるブランドには、「技術・強み」「顧客・社会」「パーパス(自社らしさ)」の3つが重なる「真ん中」を見つけることが不可欠です。
社会を覗く「4つの窓」: 漠然とした社会課題を「サステナビリティ」「ウェルビーイング」など4つの視点を通して捉え、自社の技術を再定義します。技術そのものの説明ではなく、「今の社会にどう役立つのか」という、顧客が納得できる価値へと変換していきます。
事例1 和洋椀(WAYOWAN): 食器棚での「重なりにくい」という無意識の諦めをインサイトとし 、「家族みんなの、和にも洋にも合うお椀」という新しい意味を定義 。価格の壁を超え、定番商品へと成長しました。
事例2 FORESTERIOR(フォレステリア): 建材業界で「均一ではない」ことを理由に廃棄されていた端材や未利用材に着目。素材の個性を「デザイン」として捉え直し、木の温もりを届けるアップサイクルブランドとして、これまでの建材の概念を覆す新しい価値を提案しました。

・アップサイクル建材ブランド「FORESTERIOR」の商品ブランディング
第2部:商品ブランディング開発
「点」を「線」へ。共感を生むストーリーの力
第2部では、顧客の頭の中にあるイメージを望ましい方向へ近づける「ブランディング」の実務と、その成功法則をご紹介しました。
第5の資産としてのブランド:顧客が『高くても、私はそれがいい!』と指名買いする理由。それがブランドであり、ヒト・モノ・カネ・情報に続く重要な資産です。
ストーリーへの変換: 掲げたコンセプト(点)を、商品名やデザイン、店舗といったあらゆる接点での「体験」へと翻訳します。 これらが一貫したデザインとして繋がることで(線)、顧客の記憶にブランドが深く刻まれ、揺るぎない価値へと変わります。
事例 かきたねキッチン:柿の種=「お酒のおつまみ」という従来のイメージを覆すコンセプトやデザインで、柿の種を「選ぶ楽しさがあるギフト」へ。コンセプトを体現した一貫性のあるデザインにより、米菓売り場に若年層の行列ができるという新しい現象を巻き起こしました。

第3部:商品パッケージ開発
瞬発力・持久力・パーパスが生み出すブランドの「軸」
最終部では、ブランドの最前線であるパッケージデザインにおいて、本質を守りながら時代に合わせて変化し続けるための設計思想を深掘りしてお伝えしました。
パッケージだけで考えない:パッケージを単なる「包材」と捉えてはいけません。それは企業と消費者の重要な接点であり、自社の「パーパス」を最終的なカタチとして消費者に届けるものです。
2つの役割: 店頭で商品を直感的に判断する「短期的役割(瞬発力)」と、顧客の記憶に深く刻まれ資産となる「中長期的役割(持久力)」の両立が必要です。
事例 無香空間:発売30周年を機に行ったリニューアルでは、王道の「丸型容器」から、空間に溶け込む「四角い容器」へ。強力なUSP(競合優位性)であった「ニオイ喰い(=ニオイの吸着と消臭)」の訴求さえも削ぎ落とし、「香りでごまかさない」という本質を磨き上げることで、ブランド鮮度のアップデートに成功しました。

視点を変えれば、すべてがブランドになる。その一歩をここから。
3つのセッションで共通していたのは、「皆さんの会社の商品や技術も、視点を変えて磨けば、さらに輝く『資産』になる可能性がある」というメッセージです。ブランド開発の必要性に迫られるのは、決して大企業や特別な業界だけではありません。
単に「良いもの」を作るだけでなく、「なぜ今、それが必要なのか」という問いの答えを、作り手としての想いと生活者の声から見つけ出すこと。 そのプロセスこそが、商品や技術を、時代を超えて愛される「ブランド」へと進化させる第一歩になります。
■見逃した方へ:アーカイブ配信のお知らせ
ご好評につき、今回の3部構成ウェビナーのアーカイブ配信が決定いたしました。配信開始は2026年3月を予定しております。当日ご参加が叶わなかった方、また内容を改めてご確認されたい方は、ぜひアーカイブ配信をご視聴ください。詳細は決まり次第、改めてお知らせいたします。
■次回予告:3月開催ウェビナー
次回のテーマは「なぜパーパスが社内に浸透しないのか?」を予定しています。 パーパスの策定、MVVの再定義、インナー施策の実施。その取り組みは、組織の意思決定や成果に本当に結びついていますか?パーパスを飾りではなく、現場の判断につなげるには何が必要か。新年度を前に、インナーブランディングを見直す45分の実践的内容をお届けいたします。
[筆者プロフィール]
福田 恵里
株式会社TCD チーフデザイナー
入社以来、化粧品から日用品まで幅広くパッケージ開発に携わる。課題を自分ゴト化し、クライアントに寄り添うことを心掛けている。クセの強い雑貨を集めるのが趣味。