2019.04.26
パッケージデザイナーが振り返った「平成パッケージ」
山本 みき 株式会社TCD クリエイティブディレクター
30年間の「平成」の時代に幕が下り、「令和」へ。各界で平成を振り返えられている中で、パッケージデザインの平成を簡単に振り返ってみました。
Mac以前の平成時代
「平成」時代、デザイン業界を大きく変革した存在のひとつが、MacintoshによるDTPでした。
Macintoshが使用される前のパッケージデザインの制作現場では、モノクロコピーやトレスコープで写植を縮小や変形をかけて、ペーパーセメントを塗ってレイアウト。もちろん料理写真などのイメージ画像もモノクロ。レイアウトが決まったら、カラー指定をして、エアブラシやクロマティック、アイロテックでカラーダミーを作成して…
家に帰ったら行方不明になった写植の文字や、パントンのオーバーレイの切れ端がセーターにくっついていた!なんていうのは、当時のあるあるエピソードでした。
この変革期にデザイナー1年生だった私も、Macintosh操作は学校で学んでいたものの、レイアウトは上記の作業で作成。ディレクターにピンセットでピッとはがされ修正される、などという経験をしました。
当時のパッケージデザインは、フラットなデザインが主だったように思います。
(TCD資料室保管:小林製薬株式会社 素焼きコロン/平成前半)
Mac登場による大変革
切って、貼って…の作業が、Macintoshによりモニタの中で行われるようになると、カラー出力でダミーを作成、と大幅に制作時間の短縮につながりました。
(とはいえパッケージデザインでは箱やピロー袋の作成など、切り貼りの作業がなくなった訳ではありませんが…)
今まで手がかかったグラデーションがあっという間にできたので、デザイン業界にグラデーション乱用時代の到来です。パッケージデザインも立体的なロゴの商品やグラデーションが多用された製品が店頭に多く並んでいたよう記憶しています。当然、デジタル入稿も主流となり、デザイナーのセーターに写植がくっつくことはなくなりました。
(TCD資料室保管:小林製薬株式会社 香り薫るサワデー/平成20年頃)
その後は、Macintoshの機能向上にともない、表現技術も印刷技術も向上。実際には存在しないようなビジュアルがCGで描かれたパッケージを、店頭で目にするようになりました。
業界にMacintoshが導入され10数年後、今度は手描きをイメージした、アナログの優しい雰囲気のデザインも求められるようにもなりました。「おいしそう」「効きそう」だけでない、情緒的アプローチです。
スマートフォンが登場し、新しい時代へ
近年ではスマートフォンの普及急増により、生活者は情報を容易に手に入れられるようになりました。SNS利用が増え、共感性の観点から、消耗品のパッケージデザインさえも生活者の情緒的アプローチの反応が強くなったように思います。
また、求めなくても情報が多く入ってくる時代になったからこそ、パッケージデザインにおいても、情報は端的さが求められている。
平成を振り返り、近年のパッケージデザインをそう分析しています。
そして、これからの令和時代にどんなデザインが生まれるのか、注意深く見守っていきたいと思います。
[筆者プロフィール]
山本 みき
株式会社TCD クリエイティブディレクター
日用品を中心にさまざまな商品パッケージ開発に従事。「モノ」より「コト」を大事にしたパッケージデザインを目指し日々尽力している。