2021.03.22

ともに醸成し、育てていくリブランディング ヤヱガキ酒造株式会社 『やえつむぎ』

山本 みき 株式会社TCD クリエイティブディレクター

やえつむぎ

2020年に突如訪れた環境の変化から早1年。自らが健やかな生活を送ることについて考えた方々も多いのではないでしょうか。
また、ネットショップでの商品購入も増えたことでしょう。
ヤヱガキ酒造株式会社の「やえつむぎ」は、日々積み重ねることで健康な身体をつくることをコンセプトに、おいしく、無理なく栄養がとれる食品を提供する通販ブランドで、TCDがトータルにリブランディングをサポートしました。

1666年創業の酒造メーカーが手がけており、メイン商品は兵庫県産の紫黒米玄米(しこくまいげんまい)を原材料とした飲む酢。ワインのような赤い液色で、ポリフェノール、クエン酸、18種のアミノ酸が含まれ、果実ジュースのような味わいです。ご要望は、ターゲットの若返りでした。

鍵となるのはコンセプト

まずSTP分析により、戦略の立案とブランドコンセプトの策定を行います。このブランドを形作っていく調査フェーズとコンセプト開発フェーズは、企業として生活者や社会に約束することを明文化し、それを現実にするための基本のマーケティングプランとなります。
クライアントの想いは、「やえつむぎ」は醗酵食品だけでなく、ヤヱガキ酒造が厳選した食材も販売しているため、たんなる醗酵食品ブランドではないこと。また、サプリメントやビタミン剤のような、いつもの食事にプラスし、栄養を補う食材ブランドにもしたくない、ということでした。その想いを起点に、何度もヒアリング、打ち合わせ、検討を重ね、開発プロジェクトの中でも多くの時間を費やしました。
こうして、毎日の食事の1品を換えるだけで、今よりも美味しく今よりも身体に良い生活を送ってもらう「足さない食品」を提供する、無理なく自分らしく自然体なライフスタイルを応援するブランドが生まれました。


(ブランドイメージボード)

音にこだわるネーミング

このブランドを担当されているヤヱガキ酒造食品部の方々は、現在の顧客がご年配の方も多く、お電話でのお問い合わせ対応をされています。日々顧客の声を聞かれている彼女たちから、旧ブランド名は漢字表記で、顧客から呼ばれることは少なかったと伺いました。
そこで、ネーミングはブランドコンセプトが生活者に伝わりやすいだけではなく、聞き取りやすさ、発音のしやすさにも考慮しました。その結果、ブランド名はひらがな表記にした「やえつむぎ」が採用となりました。

ロゴマークは「一日一日、一つ一つ、心身に良いことを積み重ねていく姿」、「八重(やえ=たくさんの重なりを意味する言葉) 」を体現したデザインとなりました。

ユーザーとの接点を意識したパッケージデザイン

日々積み重ね、紡がれた毎日が1枚の織物のように形成されていくことをイメージするパターンで構成されたデザインは、長年にわたるヤヱガキ酒造独自の醗酵技術と、こだわりの原材料に恥じない佇まいにしました。
店頭販売ではないため、実際の商品と顧客との接点は自宅に届いた時です。輸送箱から取り出した初対面の時に「いいものを買った!」という気持ちになれる上質感、また毎日見るデザインだからこそ、シンプルで飽きのこないデザインを目指しました。

やえつむぎ

やえつむぎ(検討デザインカンプ)

こうして、約1年間にわたるリブランディングが完成しました。
今後はブランドを作るフェーズから、育てるフェーズへと進んでいきます。
私たちTCDは、ブランドはクライアントの資産であり、この資産を更に価値あるものへと育てていくサポートをし続けることも重要と考え、日々クライアントと伴走し続けています。

やえつむぎ
https://www.yaetsumugi.com/
ヤヱガキ酒造株式会社
https://www.yaegaki.co.jp/sake/

[筆者プロフィール]

山本 みき

株式会社TCD クリエイティブディレクター

日用品を中心にさまざまな商品パッケージ開発に従事。「モノ」より「コト」を大事にしたパッケージデザインを目指し日々尽力している。

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