2025.10.16

企業理念に強く共感する社員「1桁」が示す、社内ブランド浸透の難しさ!

麻生 真奈 株式会社TCD プランナー

私たちは、TCDの調査研究ユニット「Culture Insight Labo(カルラボ)」です。ブランディングから生活文化まで、社会や組織の“文化的な動き”を読み解き、その洞察を“TCDスコープ”として発信しています。

今回は、その第一弾として「企業理念の浸透度」をテーマに取り上げます。
理念が社員に届かず、行動に結びつかない──そんな課題を抱える企業は少なくありません。カルラボは、理念が人の意識や行動にどう影響しているのかを明らかにし、“言葉”を“働く力”へと変えるための本質に迫ります。


ブランディング会社TCD(東京・銀座/兵庫・芦屋)の「Culture Insight Labo」(所長:山崎晴司)は、2025年5月、全国の企業に勤める696名(従業員数21名以上・理念策定済み企業所属)を対象に、企業理念(パーパス・ビジョン・バリューなど)の実態調査を実施しました。

理念やパーパスを掲げることは当たり前になりました。しかし、それが現場でどう意識され、働き方や判断にどう影響しているのか─ここに目を向ける企業が増えてきています。
これからのブランディングに必要なのは、「見せる」や「読ませる」ではなく、「どう届き、どう動かすか」。
理念が“生きた力”として機能するためのヒントを、今回の調査から紐解きます。


調査結果サマリー:企業理念浸透の実態

今回の「企業ブランドと働き方に関する実態調査」で判明した、主要ポイントは以下の通りです。

①事前調査を3,000人に実施したところ、企業理念が存在しない会社が半数以上を占めた。

②正社員で理念を「はっきり覚えている」のは14%。現場を支える社員と管理職以上の認知ギャップが大きい。

③企業理念へ強く共感、意識する一般社員は1桁台と低水準。

④理念を「判断基準になる」「モチベーションが上がる」など、ポジティブに受け止めている人は約6割。理念にネガティブな印象を持たない人は約8割にのぼった。

⑤理念に求める要素は“シンプル・具体的・進化”
「新人でも理解できる平易な言葉」「実践できる内容」「時代に応じたアップデート」を求める声が多かった。


理念浸透の3つのポイント

理念浸透という課題を乗り越え、組織で活かすためには、具体的に何が必要なのでしょうか。今回の調査結果から、そのために必要な3つの重要なポイントが明らかになりました。

①思い出せるシンプルさ
・横文字・難しい言い回しは最小限にし、新入社員でも一瞬で理解できる言葉にする
・漠然とした内容ではなく、日々の具体的な行動に繋がりやすいように提示する

②語れるストーリー化
・ 社員が理念を自分ごととして捉え、入社動機やキャリア形成の基盤に結びつけられるようにする
・経営層だけでなく、現場の社員も自身の言葉で自信を持って語れるような、納得感のある内容にする

③行動につながる仕組み
・理念を日々の業務における判断基準や具体的な行動指針として機能させる
・社員が理念を記憶するだけでなく、実践へと落とし込めるような運用を徹底する
・理念の実践が社員のモチベーション向上に繋がるよう、理念に基づいた評価・表彰を行う


【調査ハイライト(抜粋)】

・正社員で理念を「はっきり覚えている」のは14%。現場と管理職以上の認知ギャップが大きい

理念の認知度は職位間で格差が見られました。経営層・管理職の40.3%が「はっきり覚えている」と回答したのに対し、正社員の確実認知層は14.3%まで低下します。
社員の意識を望ましい方向に導く、インナーブランディングを推進するためには、「認知・共感・実践」の3つのフェーズを経る必要がありますが、その入口である「認知」が不十分であれば、その先フェーズである、「共感」や理念の「実践」の足かせになります。現場の主力となる正社員の認知度の低さは喫緊の課題であると言えます。

 

企業理念へ強く共感、意識する一般社員は1桁台と低水準。
理念に強く共感し、実践する連鎖が生まれていない。

・ブランド(理念)の共感度

・日頃のブランド(理念)の意識度

正社員と契約/派遣社員の中で、理念に「とても共感している」・日常業務で理念を「よく意識している」と回答した人はいずれも1桁台に留まりました。理念を自分事として捉え、その内容に納得感や親近感を抱くことが「共感」形成の鍵になります。「共感」されない企業理念は「実践」には結びつかないため、企業理念の社内浸透における最も重要なKPIは「共感」のスコアアップだと考えられます。

本プレスリリースでは紹介しきれなかった、企業理念があることでの、ポジティブ・ネガティブな影響、現場で作用する企業理念について等の詳細資料のダウンロードは「お問い合わせ」から「調査レポートダウンロード」を選択してご請求ください。お申し込み確認後、1営業日を目安に資料をお送りいたします。

※同業他社の皆様におかれましては、お申し込みをご遠慮いただきますようお願いいたします。

理念が単なるスローガンで終わるか、社員一人ひとりの働く支えになるか。その明暗を分けるのは、“言葉のデザイン”と“企業と社員の関わり方”に他なりません。企業が自らのブランドを再定義し、社員との関係性を見直すうえで、今回の調査がひとつのヒントとなれば幸いです。

Culture Insight Labでは、今後もブランド、企業文化、働き方にまつわる実態を深掘りしながら、皆様にとって価値ある継続的な発信を行っていく予定です。


調査概要

■調査対象
従業員数21名以上の会社・団体に属し、且つ企業理念が策定されていると回答した22歳〜65歳
・男性414名、女性282名 計696名
・経営者/役員、管理職(部長以上)、正社員、契約/派遣社員

■調査方法/期間
インターネット調査/2025年5月10日〜2025年5月20日

■調査内容
自分の勤める会社の理念に対する認知や共感、意識度合いを調査

・勤める会社の理念を覚えているか
・勤める会社の理念に共感しているか
・理念があることでポジティブ(ネガティブ)な影響を感じたことがあるか
・理念を日頃どの程度意識してるか
・勤める会社の理念を社内外の人に自信を持って説明できるか など

[筆者プロフィール]

麻生 真奈

株式会社TCD プランナー

新卒入社以来企業ブランディングチームに所属し、企業理念策定やライティング、プロジェクトの進行管理を担う。お笑い・カレーが好き。

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