2025.09.08
食器「YURUMARU」 〜Z世代の食生活に寄り添う商品開発〜
日比 秀一 株式会社TCD デザインディレクター

今回はTCDがお手伝いした商品開発支援の事例をご紹介いたします。
長年デザイン開発やプロモーション開発をお手伝いしている株式会社アサヒ興洋が手掛けられた新しい食器シリーズ「YURUMARU」がこのほどデビュー。TCDではコンセプト作りとプロダクトデザインの領域で協力させていただきました。
「YURUMARU」は20代女性をターゲットに、現代の彼女たちの暮らしに寄り添う食器として開発がスタート。一人暮らしが増え、ライフスタイルが多様化する中で生活するZ世代の価値観を理解し、日常に自然に馴染む食器を作り出すことを目指しました。
実際の声から見えてきたリアルな課題
私たちは机上の空論ではなく、実際のユーザーの声を聞くことから始めました。社内のZ世代スタッフを対象に座談会形式でインタビューを実施。事前に使用食器の写真や実物を準備してもらい、食器のコーディネート、洗浄、収納などの実用面から、購入時の選択ポイント、普段の食生活や料理、生活全般まで、幅広い角度からデザインのヒントを探りました。
そこから見えてきたのは、「1人で食事する時はラフに使える食器を多用しがち」「忙しいと食生活に余裕がなくなるが、本当はきちんと食事をとりたい」といった本音や理想と現実の間で葛藤する気持ちでした。「一人暮らしで余裕がないと、食器も適当になりがち。機能的にも精神的にも手軽に使える食器があればいい」という気付きを得ることができました。
「心の余裕を生む食器」という発想
「機能的にも精神的にも軽やかに使える食器があれば心に余裕が生まれて、ストレスフリーな食事を楽しめるのでは?心に余裕のある食事はQOLを上げてくれそう。」この仮説をもとに私たちが提案したのは「ラフに使えて、ちょっと映える、こなれ感のある食器」というコンセプトでした。
完璧より自然体を重視し、さりげなく魅力的でありたいというZ世代の美学と、多様性を受け入れる包容力を込めました。
形状は「角を強く丸めた四角」を基調としました。四角なので食卓で場所を取らず実用的でありながら、角を丸めることで優しく、ゆるいフォルムを実現。
「ゆるやかな丸み」「曖昧な境界線」で、Z世代が求める「肩の力を抜いた自然体の美しさ」を表現しました。また、一人暮らしでは食事の量が少なくなりがちなことを考慮し、縁や仕切りをなだらかにして、少量のおかずでも中央に寄って美味しそうに見える設計にしました。これにより料理がきれいに見え、食事の時間が楽しくなり、食生活の質向上につながります。

想定を超えた市場展開
興味深いことに「YURUMARU」は、幅広いターゲット向けにシンプルでスタンダードなグッズを展開する「STANDARD PRODUCTS」で発売されることになり、販売も好調とお聞きしています。
これはZ世代女性をターゲットとした当初の想定を超えた展開でしたが、私たちが作り上げた「肩の力を抜いた自然体の美しさ」や「包容力のある多様性」という価値観が、実は現代社会全体で求められていることを示しています。結果的に世代や性別を超えて愛されるポテンシャルを持った食器になったことを嬉しく思います。
深いリサーチに基づくコンセプト作りと、機能性と美しさを両立したデザイン開発により、時代に求められる商品を生み出せた成果となりました。
ぜひ「STANDARD PRODUCTS」各店で実物を手に取ってご覧ください。
[筆者プロフィール]
日比 秀一
株式会社TCD デザインディレクター
ユーザーインサイト調査からコンセプト作り、プロダクト&パッケージデザインまでモノづくりをトータルでサポート。製品に関わる人が「心地よい満足」を得られる様に常に心掛けています。