2020.03.30

プロダクトデザイナーのパーパス

日比 秀一 株式会社TCD デザインディレクター

この度の新型コロナウイルスは数ヶ月前では考えられないほど、数え切れないほどの影響を社会にもたらしています。
そして「少ない量の、どこでも手に入る材料で、簡易にマスクを作れないか」等、多くの企業や個人の取り組みが、メディアなどでも報じられています。

こうした状況の中で私自身はやはり「プロダクトデザイナーとして何ができるのか?」「我々のパーパスとは?」を考えます。

デザインで生活者の暮らしを豊かにすることを念頭において企業様のお手伝いをしている我々だからこそできることはないか。
答えはまだ出ていませんが、引き続き考えていきたいと思います。

ウイルス関連に限らず現代社会に向けての取り組みの中で、プロダクトデザインが寄与できる部分は往々にしてあると感じています。

目的を叶えて未来をつくるプロダクトデザイン

衛生関連の商品で、最近目に止まったものがありました。

花王株式会社の「ビオレu 薬用泡スタンプハンドソープ」です。
ビオレu 薬用泡スタンプハンドソープ

上向きのノズルを手で覆うように押すことで、手のひらに花びら形の泡が付く商品です。世の中のこのムードの中、手洗いの遵守率をあげるという目的を叶える一つの回答がそこにあると感じました。
手洗いを嫌がる子どもたちも楽しみながら手洗いでき、やがて「習慣」になるという未来が想像できます。

やはりここでもプロダクトデザインが、清潔で安全な社会に寄与しているように感じました。

コンペティションに見るプロダクトデザインのパーパス

先日「コクヨデザインアワード2020」の受賞作品が決定し、発表となりました。
今回のテーマは「♡」。あえて特定の読み方を指定せず、参加者がそれぞれの解釈で「♡」を捉え、問題を提起し、デザインで解決・表現しています。
KOKUYO DESIGN AWARD 2020

グランプリは廃材を再利用した鉛筆の提案でした。
素材のトレーサビリティを記すことで、物体にストーリーがあることを強烈に印象付ける良作だと思います。
私は素材に対する思いやりや愛を強く感じましたし、またSDGsをはじめとする環境に関する視点など時代性に合ったものであることも、審査員の評価につながったのではないかと推測します。

我々のデザインの現場では、省ゴミや、より環境負荷の少ない素材に関する相談も増えてきました。環境に配慮した素材や、使用量を少なくできる設計についても、絶えず勉強を続けていかなければならないと感じています。

今は「おもてなし」より「おもいやり」?

前記した話を総合すると、「自分の行動が社会を作ることを想像する」そして「思いやりを持つ」ことがデザイナーには必要なのではないかと思います。

プロダクトを取り巻く環境には、使う人と使われる場所(環境)があります。
どちらにどう作用し、理想的な状況を作っていくのか。
そしてその状況は人の気持ちに、社会に、どう影響するのか。
上辺だけをよく見せるのではなくその本質をわかりやすく表現し、届けることが使命なのかもしれません。

プロダクトデザイナーはそのパーパスによって社会を見つめ直すことができる重要なポジションにいることに気づかされ、また気を引き締め課題に取り組むことができるのです。

TCDのプロダクトデザイン事例についてはこちら

[筆者プロフィール]

日比 秀一

株式会社TCD デザインディレクター

ユーザーインサイト調査からコンセプト作り、プロダクト&パッケージデザインまでモノづくりをトータルでサポート。製品に関わる人が「心地よい満足」を得られる様に常に心掛けている。

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