2025.03.24

DeepSeekのロゴから見る中国ロゴデザインのトレンド

任広飛(ニン・コウヒ) 株式会社TCD デザイナー


近年、AI技術の進化が加速し、テクノロジー業界において大きな注目を集めています。その中で、中国のAIスタートアップ企業が開発した大規模言語モデル(LLM)「DeepSeek」が、業界内で急速に存在感を高めています。

DeepSeekは2023年に、梁文鋒(リャン・ウェンフェン)氏によって設立されました。同氏は杭州を拠点とするヘッジファンド「High-Flyer」を運営し、その資金を活用してDeepSeekを創業しました。同社のAI技術は、高度な自然言語処理能力を持つことから、業界で大きな話題となっています。

DeepSeekが注目されるもう一つの理由は、そのロゴデザインにあります。AI企業のロゴは通常、OpenAI社・ChatGPTのようなミニマルで抽象的なものが主流ですが、DeepSeekは独自に「シロナガスクジラ」をモチーフとしたデザインを採用しています。公式によると、このロゴは「広大な知識の海を探索するクジラ」を表現し、同社の「深い知性と探求心」を象徴しています。クジラは知的な海洋生物としても知られており、AIとの関連性が感じられます。

また、この動物をモチーフにしたロゴデザインは、中国市場におけるデザイントレンドとも一致しています。中国では動物をロゴに使用する企業が多く、その理由には以下のようなものがあります。

視覚的な親しみやすさとブランド認知度の向上
動物キャラクターは消費者が直感的に親しみを感じやすく、ブランド認知度を高める効果があります。

文化的・縁起的な要素の活用
中国文化では、動物は縁起や象徴的な意味を持ち、企業理念や価値観を視覚的に伝える役割を果たします。例えば、アリババグループが運営するECプラットフォーム「天猫(Tmall)」の黒猫は幸運と商業的成功を象徴しています。

ブランド理念や価値観の視覚化
動物を通じて企業の理念を具体的に表現することが可能です。京东(JD.com)の犬は「忠誠心」と「信頼性」を表しています。

中国大手企業にも動物モチーフのロゴが数多く見られます。例えば、

QQ 中国を代表するメッセージングアプリで、ペンギンを採用。
Baidu 中国最大の検索エンジンで、熊を採用。
Luckin Coffee 中国の若者の中で流行っている喫茶店。鹿を採用。
美团外卖(Meituan Waimai) 中国の主要なフードデリバリーサービス。カンガルーを採用。
盒马鲜生(Hema Fresh) アリババグループが運営する生鮮食品を中心としたスーパーマーケットチェーン。カバを採用。
苏宁易购(Suning.com) 中国の大手小売企業で、家電や電子製品を中心にオンラインとオフラインで販売。ライオンを採用。

これらの事例からも明らかなように、中国市場において動物モチーフのロゴは、ブランド差別化や消費者とのエンゲージメント向上に重要な役割を果たしています。

DeepSeekのクジラのロゴも、このような文化的背景に基づいて採用されたものであり、ブランドが持つ深い探求心や知性を効果的に伝えています。

今後も中国のデザイン業界では、動物モチーフのロゴが引き続きトレンドとして広まっていくことが予想され、DeepSeekのロゴはその代表的な成功例として位置づけられるでしょう。


[筆者プロフィール]

任広飛(ニン・コウヒ)

株式会社TCD デザイナー

中国・大連市出身。2018年来日。2023年桑沢デザイン研究所卒業後、同年4月より株式会社TCDに入社。現在、グラフィックデザイナーとしてクリエイティブの可能性を模索中。「人と人をつなぐ体験デザイン」を軸に、文化や価値観を融合したデザインを目指しています。

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