2022.11.30
2023年注目のブランディングトレンド
大杉 涼子 株式会社TCD デザインディレクター
早いもので、2022年も残すところあと1ヶ月となりました。コロナ禍によって人々の消費活動やブランド体験は大きく変わりつつあります。ここでは、2023年に注目すべきブランディングトレンドをご紹介いたします。
■より人間味のあるコミュニケーションへ
コロナ禍によりDXの重要性が叫ばれ、自動化や効率化が進んでいますが、その流れと逆行するように求められているのが「人間味」です。オンラインでの顧客とのつながりが重視される中、多くの企業が信頼を築くために人間的な温かみやクラフト感のあるデザイン、正直で考えさせられるようなコンテンツを提供しています。アクションカメラが人気のGoProは、アスリートに密着した質の高いコンテンツを制作し、顧客を惹きつけることに成功しています。
参考:https://gopro.tumblr.com/tagged/NickTroutman
■主張のないブランドは淘汰される
企業やブランドが私たちを取り巻く問題(社会問題、人種問題、環境問題など)に対してどういう価値観やスタンスをとるかを表明することをブランド・アクティビズムといいます。フィリップ・コトラーは、全ての企業は「Common Good(全ての人にとって利益となること)」を追求する必要があり、提供価値のアピールだけでは顧客の心を掴むことは不可能だと語っています。求人サイトのIndeedは、職場のジェンダーギャップに関する調査を踏まえて働き方の不満を浮き彫りにする一連のキャンペーンを実施し、話題となりました。
参考:https://mainichi.jp/articles/20221031/k00/00m/040/348000c
■ノスタルジアを喚起するレトロブランディング
ここ数年、Z世代を中心に注目されているレトロ。デジタルネイティブであるZ世代は手触りのあるものに惹かれる傾向があります。また、不確定な時代には、シンプルで平和だった時代に戻りたいという欲求が湧き起こることから、2023年もレトロブームは世界的なトレンドとして継続します。アップルは、iPhoneのCMでセサミストリートのキャラクター、クッキーモンスターを起用し、Siriのハンズフリー機能をユーモラスに訴求しました。
参考:https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1603/17/news072.html
■求められる環境への配慮
環境問題に取り組まないことは、ブランドにとって大きな損害であるという考えが浸透。大手企業を中心に多くの企業が環境に対するアクションを表明しています。デザインの観点で見ると、今まで主流だったアースカラーやソフトなデザインの方向性から、シンプルな単色パレットが主流となり、未来的なイメージを表現したものにシフトしています。イギリスのエシカルスキンケアブランド「Carbon Theory」は、モノトーンにピンクのアクセントカラーを用いた実用的なデザインが印象的です。
参考:https://carbontheory.com/
ブランドが提供価値を必死にアピールしたり、ブランドストーリーを語るだけでは、顧客の支持を得ることは難しい時代。真摯でフレンドリーな振る舞いと社会的な責任が、より一層ブランドに求められる時代になってきているようです。
[筆者プロフィール]
大杉 涼子
株式会社TCD デザインディレクター
大学卒業後に渡米。ニューヨークのFashion Institute of Technology でグラフィックデザインを学ぶ。2013年からTCDにてパッケージデザインや商品ブランディングに携わる。