2025.01.28

2025年注目のブランディングトレンド

大杉 涼子 株式会社TCD デザインディレクター

2023年より年始にお届けしている「ブランディングトレンド」について、今年も2025年に注目のトピックをいくつかご紹介したいと思います。


生成AIが変えるクリエイティブの現場

2022年に生成AI(ChatGPT)が登場してから2年が経ち、生成AIは特別な存在ではなくなりつつあります。ビジネスの分野だけでなく、アート、音楽、映画、デザイン、広告といった幅広いクリエイティブ分野でAIを活用する事例が増加しています。

昨年末には、世界的に有名な老舗デザイン事務所「ペンタグラム」が、生成AIソフトの「MidJourney」を用いて制作した米国政府のWebサイト「Performance.gov」を公開しました。このプロジェクトでは、MidJourneyを活用して1,500個ものアイコンがデザインされました。ペンタグラムの挑戦は業界内で賛否を巻き起こし、AIの活用について熱い議論を引き起こしました。
AIはデザイナーの仕事を奪う存在になるのか?それとも、デザイナーを支え、クリエイティブの可能性を広げるパートナーとなり得るのか? ペンタグラムの事例は、AIとクリエイティブの今後の関わり方を考える重要なきっかけを私たちに与えてくれています。

参考サイト)Performance.gov


ショート動画をブランディングに活用

ここ数年、ショート動画があらゆる面で大きな注目を集めています。TikTokやInstagramリール、YouTubeショートなど、短時間で楽しめる動画が急速に普及しています。一般に、情報伝達能力を文字と比較した場合、画像は7倍、動画はなんと5000倍もの情報を伝えるといわれており、企業にとってもブランドの認知拡大や採用などで有効に活用したいツールとなっています。

NASA(アメリカ航空宇宙局)は、Instagramのリールで宇宙の壮大な景色や宇宙にまつわる雑学、宇宙飛行士のインタビューなど幅広く発信しています。企業の宣伝ではなく「楽しくてためになる」教育的価値のある情報を発信し続けることで、多くのファンを集めています。9000万人以上のフォロワーを持つNASAの成功は、ショート動画が企業ブランディングにおいてどれだけ効果的かを物語っています。

参考サイト)NASA Instagram


ブランド体験を豊かにする音声コンテンツ

コロナ禍のステイホーム期間中にradikoやSpotify、Voicyなどの配信プラットフォームが定着し、私のまわりでも音声メディアを楽しむ人が増えました。家事や身支度、勉強中、移動中のすきま時間での「ながら聴き」は、現代のタイパ(タイムパフォーマンス)志向とも相性がよく、リスナーに向けた音声広告も増加しています。

音への関心が高まる中で、音のクオリティにこだわったイマーシブサウンド(没入型音響)を活用したブランディング事例をご紹介します。イマーシブサウンドは、従来のステレオやモノラル音声と異なり、360度の立体音響を作り出すことで、より深い没入感を実現します。オーストラリア政府観光局は、オーストラリアならではの自然と触れ合う素晴らしい休暇体験を紹介する動画「8Dエスケープ」を制作しました。魅惑的な映像と立体音響を用いて、まるでそこにいるかのような臨場感のある体験を提供しています。


個性のあるセリフ書体がカムバック

最後に、グラフィックデザインのトレンドについても少し触れたいと思います。2025年には、AIが生み出すクリエイティブを象徴するような、既成概念に縛られない自由で斬新なデザインが注目されると予想されます。具体的には、ネオンカラーやシンプルながら大胆なレイアウト、3D表現などを取り入れたビジュアルがトレンドとなりそうです。書体についても、ここ数年主流だったミニマリスティックなゴシック体ではなく、個性や伝統を感じさせるセリフ体への関心が高まっています。

たとえば、英国の高級ファッションブランドであるバーバリーはその好例です。同ブランドは2018年にシンプルでモダンなゴシック体のロゴに変更しましたが、2023年には再びリニューアルを行い、1901年のロゴからインスピレーションを得た、温かみと伝統を感じさせるセリフ体へと回帰しました。この動きは、ブランドの歴史と革新を融合させたデザインへのシフトを象徴しています。


2025年のブランディングトレンドの中から注目する4つのトレンドをご紹介しましたが、いかがでしたか? AIやデジタルツールをクリエイティブの現場で効果的に活用してブランドの存在感をいかに高めていけるかが今後の鍵となりそうです。

[筆者プロフィール]

大杉 涼子

株式会社TCD デザインディレクター

大学卒業後に渡米。ニューヨークのFashion Institute of Technology でグラフィックデザインを学ぶ。2013年からTCDにてパッケージデザインや商品ブランディングに携わる。

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