2025.03.27

ブランドを作るということは、独自の「文化」を作ること

山崎 晴司 株式会社TCD 代表取締役社長 クリエイティブディレクター

ブランドを作るということは

近年、企業の競争は単なる商品やサービスの提供から、ブランドそのものの価値向上にシフトしています。このような状況において、ブランディングは単にビジュアルや言語を整える作業ではなく、企業のパーパスやビジョンが社内外のステークホルダーとの共感を生む基盤となることが重要です。その上でパーパスやビジョンが事業や商品ブランドの根幹を形成することが理想であり、企業と事業、または企業と商品のコンセプトの一貫性が、相互のブランド価値を引き上げることにつながります。

したがって、ブランドを形成する過程では、これらの要素が組織全体に浸透し、共通の文化を築くことが求められます。この文化の醸成は、企業のアイデンティティを強化し、顧客や従業員に対する信頼感を高めるためにも不可欠です。つまり、ブランドに関わるすべての人々には、「ブランド作り」と「文化作り」がほぼ同義であるという認識が必要ということです。ブランドを作ることは、本質的に「文化」と「体験」を創り出すプロセスであり、これらが相互に支え合うことでブランドの価値が成長していくのです。


ブランドを作る上での「文化」と「体験」の重要性

改めて、ブランドを構築する上での「文化」と「体験」の重要性についてまとめてみました。


(1) 企業のアイデンティティ形成
ブランドは企業のアイデンティティを形作ります。企業文化は、その企業が重視する価値観や社会との関わりを示し、これがブランドのメッセージに深く影響します。強いブランドは、その背後にある文化によって支えられ、社員が文化を体現することで、一貫性のあるメッセージが顧客や社会に発信されます。これにより、顧客がブランドに抱く信頼感が高まります。

(2)ステークホルダーとの信頼構築
ブランドは、顧客だけでなく、従業員や株主、地域社会など、さまざまなステークホルダーとの関係を築きます。ポジティブな企業文化があると、従業員は情熱を持って働き、顧客はその熱意を感じ取ることができます。このような文化が信頼を育む基盤となることで、ブランドの価値も同時に高まります。

(3)価値観の共有とコミュニティ形成
明確な価値観を持つブランドは、顧客やパートナー、従業員といった同じ価値観を共有する人々を引き寄せます。これにより、強固なコミュニティが形成され、それぞれがブランドの価値観に共感し合う関係が築かれます。この共有された価値観は企業文化を育て、さらにブランドの一貫性を強化します。

(4)持続可能な成長の基盤
ブランドは時代の変化に応じて進化する必要があります。しかし、企業文化がしっかりしている場合、変化への適応力が高まります。柔軟な企業文化は新しいアイデアや取り組みを受け入れる土壌を提供し、これによりブランドの進化が促進されます。このシフトによって、ブランドは持続可能な成長を実現できるのです。


良い企業パーパスの要素とは

そして、文化の基盤となる効果的な企業パーパスには、以下の重要な要素が含まれます。


「社会的貢献」
企業がどのように社会や環境に貢献するかを明確に示すことが求められます(例:「持続可能な未来を創造する」)。

「顧客中心主義」
顧客のニーズや期待に焦点を当て、彼らにとっての価値を提供する姿勢が重要です(例:「すべての人に健康で豊かな生活を提供する」)。

「従業員のエンゲージメント」
社員が共感し、誇りを持てるようなメッセージを発信することが必要です(例:「多様性を尊重し、全ての人が活躍できる職場をつくる」)。

「イノベーションの追求」
常に新しいアイデアや技術を取り入れ、挑戦し続ける姿勢が求められます(例:「未来を切り開くテクノロジーで人々の生活を豊かにする」)。


これらの要素が企業のパーパスに反映されることで、ステークホルダーは深い共感を持ち、ブランドへのロイヤリティが向上します。


ブランディング組織の構成例

また、ブランディングの成功には効果的な組織構成が不可欠です。以下は、理想的なブランディング組織の構成例です。


ブランディング戦略チーム:
・ブランド戦略責任者
・マーケティング専門家
・データアナリスト(市場調査や消費者インサイトの分析)

クリエイティブチーム:
・デザイナー(グラフィックデザイン、UI/UXデザイン)
・コピーライター(ブランドメッセージやキャッチコピー作成)
・コンテンツクリエイター(ブログ、動画、SNSなどのコンテンツ制作)

コミュニケーションチーム:
・PRスペシャリスト
・ソーシャルメディアマネージャー
・インフルエンサーやパートナーシップ担当者

外部専門家:
・ストラテジック・コンサルタント(市場動向や競合分析)
・デザインエージェンシー(ブランディングデザインの外注)
・フィードバック専門家(ユーザーリサーチやテストグループの運営)


このような構成により、社内の専門知識を活かしつつ、外部のクリエイティブな視点を取り入れ、ブランド戦略の質を高めることが可能になります。


「Total Cultural Dynamism」に込めた思い

弊社の社名である「TCD」の意味は、実は50年近い歴史の中で時代に合わせて進化してきました。そして現在は、「Total Cultural Dynamism」の頭文字となっています。この概念には、企業が持つ多様な文化的要素や価値観を統合し、それを活かしてダイナミックな成長を実現するという思いが込められています。もちろん私たち自身も、社員一人ひとりの個性や考えを尊重し、それがTCDの目的やビジョンに合致し、理想的な文化を育むことできるよう努力を続けています。

企業が持続的に成長し、社会において意義のある存在であり続けるためには、ブランドを作ることを「文化」と「体験」として捉え、社内外のステークホルダーとの共感を深めることが不可欠です。さらに、その実現には、外部のクリエイティブな専門家の力を積極的に取り入れ、効果的な組織構成を整えることが企業の成功につながります。これこそが私たちTCDの目指す存在意義であり、これからもブランド作りにおける文化と体験の構築のサポートに努めてまいります。


[筆者プロフィール]

山崎 晴司

株式会社TCD 代表取締役社長 クリエイティブディレクター

企業や商品に関するブランドの立ち上げやリニューアルに長年従事。 ブランドに自信と力を与え、ステークホルダーの深い共感を生み出すことを目標に、新商品開発、コンセプトや戦略策定、トータルクリエイティブをサポート。

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