2025.12.02

“整えること”から始める、デザイン経営

山崎 晴司 株式会社TCD 代表取締役社長 クリエイティブディレクター

なぜ、企業は“デザイン経営”に踏み出せないのか?

デザイン経営とは、「デザインの力」をブランドの構築やイノベーションの創出に活用することで、企業の競争力を高めていく経営手法です。その目的や効果については、これまで様々なメディアによって取り上げられてきました。しかしどこか「自分たちには縁遠いもの」と感じる経営者の方も少なくないのではないでしょうか。

「デザイン」と聞くと、「センスのある誰かがやること」「感覚的な印象で、効果も見えにくい」といった声が聞こえそうです。また、「大企業やグローバル企業向けの話でうちの規模では関係なさそう」というように、うまくいっている既存事業に、一層の付加価値を与えるための「イメージ作り」といった印象が先行し、導入への一歩が踏み出せずにいる企業も少なくありません。

しかし本来、デザインとは見た目や装飾だけの話ではなく、企業の「らしさ」を構造的に整え、他者に伝わるように編み直す力です。つまり、経営そのものに深く関わるべき営みなのです。


社会が求める“構成力としてのデザイン”

その象徴が、東京大学が2027年に開講予定の「UTokyo College of Design」です。このスクールでは、デザインを「問いを立て、知をつなぎ、社会に実装する力」と再定義し、理工・社会科学・教育・経営を横断する形で育成するカリキュラムを構想しています。

    [ UTokyo College of Design:主なシラバス構想 ]

      ⚫️問いを立てる力と実践の融合

      ⚫️分野横断型アプローチによる価値創出

      ⚫️ビジョン構想 → プロトタイプ → 実装の一貫設計

      ⚫️気候変動・AI社会など複雑課題を扱う国際的カリキュラム

※上記は引用先の情報を元に筆者が要約。引用:https://design.adm.u-tokyo.ac.jp/jp/



これは、もはやデザインは「表現」の話だけではなく、「構想と実装をつなぐ社会的基盤」になりつつあることを示しています。

そして、本来のデザイン経営の目的も、経営の中枢や事業の上流工程にデザインの視点を組み込むことによって、戦略・商品・組織・ブランドなど、あらゆる意思決定の起点に「意味をつくる力」「翻訳する力」「共感を設計する力」を宿し、企業活動全体が一つの「らしさ」を持って動き出すようになることを目指します。この「意味の一貫性」こそが、競争力の源となるのです。


なぜ上流工程にデザインが必要なのか

経済産業省・特許庁が提唱する「デザイン経営宣言」では、次のような実践ポイントが挙げられています。

●デザイン責任者(CDO等)の経営チームへの参画

●商品開発や事業戦略の上流工程からのデザイン関与

●顧客ニーズを発見するデザイン思考の活用

●アジャイル型開発による柔軟な実装プロセス


では、なぜこれが競争力に繋がるのか?それは、デザインとは意味を翻訳する専門性だからです。たとえば、「経営の抽象的な意志を、体験として実装する」「顧客の空気感や感情を、カタチにする」「ブランドの思想を、サービス全体に通底させる」といった力が、事業や組織に「意味の一貫性」を宿らせます。これが選ばれる理由になり、ブランドや事業の競争力へと直結するのです。


「整える」ことから始めるデザイン経営

しかし、「デザイン経営」が重要なのは理解はできても、すぐにその感性を組織に宿すことが難しいというのも事実です。そこで私たちが提案しているのが、「まずは“整えること”から始めてみませんか?」というアプローチです。

前述のようにデザインが重要視される一方で、AIの進化やテンプレート型のデザインツールの普及によって、誰でも簡単にロゴや動画、Webサイトがつくれる時代になり、デザインを「つくること」自体のハードルは下がっています。だからこそ、容易に生成された多くのデザインに対して「それは本当に自社の“らしさ”を体現しているか?」「何を基準にデザインを整えていけばいいか?」といった検討や判断、すなわち、自社らしく「整える感性」を組織に宿すことが、これから一層重要になってきます。





上の図が示すように、広告やWEB、商品など個別のアウトプットを「つくる技術」だけに頼ってしまうと、確かにデザインは無限に生み出せますが、ブランド全体に一貫性が生まれません。そこで重要なのが、MVVやパーパスを軸に据えて全体の整合性を見渡す「整える感性」なのです。


ブランドを“感性”でマネジメントするために大切な3つの観点

そして、組織に「デザインの感性」を宿すためには、アウトプットだけでなくブランドの内側をどうマネジメントするかが重要です。 ここでは、私たちがこれまでの実践を通じて重要だと感じている3つの観点をご紹介します。


① 経営意思の言語化
ブランドの原点は、経営者の想いにあります。それが抽象的だったり理念的であると、現場には届きにくくなります。経営層の言葉を「自分ごと化」できるストーリーにすること、MVVやパーパスを、社員が語れる言葉にまで落とし込むことが求められます。


② デザインの質を担保する仕組み
ブランド表現をつくった後の課題として、「どう運用していくか」「表現の統一性をどう保つか」があります。ブランドの文脈に沿っているかのレビュー体制、関係者へのトーン&マナーの共有、ブランドの「解釈ツール」としてのガイドライン設計などが不可欠です。


③ 表現の進化と内製力の育成
ブランドは進化する生きものです。月次レビューや改善提案、ガイドラインの再編集、社内デザイナーへの教育・フィードバックといった取り組みを通じて、質を保ちながら、内側に感性と判断力を育てていくことが重要です。


デザイン経営は「届ける」だけでなく「宿す」支援へ

デザイン経営の実践には、社内にクリエイティブチームを抱えるよりも、まずは「意思と表現をつなぐパートナー」を持つことが近道になることもあります。TCDでは、企業の外部CDOのような立場で関わる「ブランド・ディレクション・パートナー」という支援サービスをご用意しています。これらのサービスは「つくる」ためというよりも、「整え、伝わるようにする」ための仕組みです。


[TCDの「デザイン経営導入支援」メニュー例]

 ⚫️経営層のヒアリングとMVV・パーパスの文脈化及び視覚化


 ⚫️クリエイティブの表現方針の設計(ガイドライン化)

 ⚫️デザイン制作物に対するディレクション

 ⚫️社内デザイナーのスキルアップ支援

 ⚫️定例のブランド表現レビューやガイドラインの改善提案 など



まずは「つくる」ではなく、「整える」から。その第一歩を、TCDが共に歩みます。
“企業「らしさ」は今、整っていますか?” TCDは単なるアウトプットの提供者ではなく、企業の想いをカタチにし、それを社内外に浸透させるプロセス全体を支援していきたいと考えています。

[筆者プロフィール]

山崎 晴司

株式会社TCD 代表取締役社長 クリエイティブディレクター

企業や商品に関するブランドの立ち上げやリニューアルに長年従事。 ブランドに自信と力を与え、ステークホルダーの深い共感を生み出すことを目標に、新商品開発、コンセプトや戦略策定、トータルクリエイティブをサポート。

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