ブランディング考

2020.10.06

ブランド・マネージャーの仕事⑦
「言葉」が最大の武器になる、顧客との関係づくり

川内 祥克 クリエイティブ・ディレクター



◼️イチから始める「ブランディング」


当コラムでは、大手企業に限らず「ブランド」の重要度が増す中、BtoB企業や中小企業、地方メーカー、スタートアップ、業種・規模を問わず、これからブランディングを始められる方々に向けて、実際のブランディングの流れに沿って話を進めています。

今回は第七回目になります。何かしらの取り掛かりのきっかけや、思索のヒントにしていただければ幸いです。


第0回、キックオフ篇も合わせて参照いただければ幸いです
「いいモノ」から「いいコト」へ。時代はシフトしている



◼️ブランドの魅力を伝える技術


これまで、ブランディングを始めるにあたっての戦略づくり、戦略を実現するためのデザイニングについてご説明してきました。ここまではブランディングの準備とも言うべきフェーズです。今回からは実際にブランドを世の中にデビューさせ、どのようにブランドの思いや魅力を伝えていくか、ブランドの運用フェーズに入っていきます。

ブランディングは、こうしたブランド戦略とデザイン、そしてそのブランドの魅力を伝える技術、すべてのプロセスを高いクオリティで実現することで成功に導くことができます。

運用フェーズでは、メディアのデジタル化が進み、またメディアの多様化に伴い、顧客接点も複雑化しています。そうした環境下で、どのようにブランドのメッセージを顧客に届けるか、伝える技術が重要になります。



◼️アフターデジタル


昨年発刊され話題となった書籍『アフターデジタル』、そしてその続編として今年『アフターデジタル2』も発刊され、そこではデジタルが世の中の隅々にまで浸透したアフターデジタル社会をいかに生き抜くか、様々な事例が紹介されています。

その中でも特に、ブランディングにおいて意識しておくべきマインドセットが、以下の図になります。


以前は、ブランド・コミュニケーションをリアルメディアで行うのか、またはデジタルメディアを活用するのか。リアル店舗とデジタルメディアをどう組み合わせるか。店頭とネットショップをどう融合させるかなど、リアルとデジタルは「別物」として扱われることが常でした。しかし、世の中は既にデジタルを前提に動いていると言えます。特にコロナ禍によってDX(デジタル・トランスフォーメーション)はさらに加速しています。

「ブランド」と「デジタル」の関係も、同じように変化しているのではないでしょうか。


Beforeの世界では、ブランドはリアルの世界に存在しており、デジタルは顧客接点の一つでしかありませんでした。しかし、あらゆるモノ・コトがデジタル化し、情報や評判はもちろん、製造、販売、流通、サービス、あらゆるものがデジタルなしでは存在し得ないとすると、ブランディングにとってのデジタルの世界、特にインターネット上での存在感が重要度を増します。

日本の広告市場におけるデジタルメディアの占める割合、顧客の接触メディア時間、ともにマスコミ4媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)をデジタルメディアが抜いたことは、マーケティング業界にとって大きなな出来事でした。今では顧客は、常にスマートフォンを手にし、SNSから情報を得、映像コンテンツを観ることすら手のひらで済ませるようになっています。

そうしたアフターデジタルの世界を前提に、ブランドの運用フェーズのポイントを挙げると、「情報発信力」と「口コミ発生力」が、鍵になると思います。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)やビッグデータなど、デジタル・マーケティング業界では横文字が飛び交い、A.I.(アーティフィシャル・インテリジェンス)やMA(マーケティングオートメーション)などの新しいテクノロジーも話題を集めています。しかし変わらず重要なことは、ブランドが生み出すコンテンツ、そしてその発信力です。コンテンツがなければ、最新の技術も意味をなしません。



◼️今も昔も、「言葉」が最大の武器となる。


戦略フェーズ、デザインフェーズで定めたブランドの世界を、コンテンツにして顧客に届けること。つまり「言葉」にする技術こそが、運用フェーズのキモになります。繰り返しになりますが、デジタルはそれを届ける手段でしかありません。逆に言うと、デジタル化したことにより、コンテンツを届けやすくなった今だからこそ、結果を大きく左右する技術であるとも言えます。

それでは、デジタル社会での「言葉」にする技術は、これまでとどう違うのか。それは顧客が100%中心の世界であるということが前提にあります。つまりブランドが発信するコンテンツは、顧客にとって伝えやすい「言葉」であり、伝えたくなる「言葉」でないと広がらないということです。それを生み出すことがデジタル社会で必要となる技術になります。

「口コミ発生力」は「共感を生み出す力」と言い換えることができると思います。

「共感」の目指すところは、最終的に何かしらの「行動」を生み出すことにあります。「共感」という言葉が独り歩きしがちですが、「行動」を生み出すという意識が重要です。結果として「行動」が伴わなければ、それは「理解」でしかなく、顧客が動くこともありません。

「共感」をもう少し因数分解すると、何かしらのコミュニティやライフルタイルに「参加」すること。そこで「自己実現」が達成され、「社会性」に繋がっていく。こうした一連の顧客体験が共感を生むのではないでしょうか?

例えば最近、大豆○○や、高タンパク○○といった商品が急速に増えています。これはニーズの裏返しでもありますし、コロナ禍のもと健康意識がさらに強まった結果とも言えますが、そこからもう一歩踏み込み、先の3つの要素に照らすと

 参加性:  健康志向「仲間」
 自己実現性:自然素材「好き」
 社会性:  環境への「意識」

ブランドと顧客とが共有できるファクターが見えてきます。またコンテンツにすべき題材も浮かび上がってきます。そこから生まれるストーリーに参加を促すことで、より深い共感を生むことができるのではないでしょうか。

ネット広告を運用する。ブログなどコンテンツ・マーケティングを実施する。ツイッター・アカウントを運用するなど、どのプラットフォームを活用するにせよ情報発信の際は、何を共有し、どこに共感が生まれるのか、それを意識することが大切だと思います。



◼️最後に


生活者の意識は大きく動き出しています。ブランドの主張(ロジック)を明快にし、言葉にする技術(レトリック)を研ぎ澄ませる。デジタル化が進む世の中だからこそ、言葉によるコミュニケーションという、最も根源的なスキルの質が求められているように思います。

〃言葉は、文字の一点一画を紙に刻む営みから生まれる。〃

確か、書家の石川九楊さんの言葉だったかと思いますが、フリック入力から生まれるテキストに慣れていると、こうした視点が大変新鮮に映ります。

「言葉」はブランドの営みにおける大切な部分であると、改めて思い至ります。



(*)アフターデジタル、アフターデジタル2 著者 藤井 保文 、 尾原 和啓


[筆者プロフィール]

川内 祥克
株式会社TCD クリエイティブ・ディレクター

企業ブランド、事業ブランドやサービス・ブランドの立ち上げ、プロモーション業務に従事。『ブランドのウェブ活用』などのセミナーも開催。


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