2021.01.28
ブランド・マネージャーの仕事⑧
「コンテンツ」を届けよう
川内 祥克 株式会社TCD 取締役副社長 クリエイティブディレクター
◼️イチから始める「ブランディング」
当コラムでは、大手企業に限らず「ブランド」の重要度が増す中、BtoB企業や中小企業、地方メーカー、スタートアップ、業種・規模を問わず、これからブランディングを始められる方々に向けて、実際のブランディングの流れに沿って話を進めています。
今回は第八回目になります。何かしらの取り掛かりのきっかけや、思索のヒントにしていただければ幸いです。
第0回、キックオフ篇も合わせて参照いただければ幸いです
◼️「ブランディング」は「コミュニケーション」
前回より、ブランドの運用フェーズに入りました。
前回、ブランドの情報発信においては、お客さんと価値観を「共有」することが大切であるとお伝えしました。
今回は、そうしたコミュニケーションを行うための「接点づくり」について話を進めていきたいと思います。
ブランディングは、詰まるところお客さんとの対話です。考え(DESIGN)、生み出し(CREATE)、対話(COMMUNICATE)する。この弛むことのない活動がブランドを育んでいきます。
対話する機会、すなわち顧客接点が増えれば増えるほど、ブランドの存在感は強まっていきます。
◼️お客さんとの「接点」を広げるには?
ブランドとしては、お客さんにその商品やサービスを知って欲しい、より多くの人に情報を届けたいという思いが、当然あります。しかし、その商品やサービスを中心にした「情報」は関心のある人にしか届きません。
商品パンフレットや商品サイトなどがそうした情報にあたりますが、それだけでは接点は広がっていきません。
では、どうすればお客さんとの接点が広がるのか?そのためにはまず、情報の「幅」を広げることが必要です。
当シリーズの第2回目にサイボウズのブランディング戦略を紹介しました。その中で、サイボウズは「グループウェア」という機能的価値から「チームワーク」という情緒的価値にブランド価値を再定義した、といった内容をご説明しています。
これは、ブランディングの運用フェーズでも、ヒントになります。「グループウェア」という情報は、「グループウェア」の導入を検討している人にしか届きません。しかし「チームワーク」ならどうでしょう?
一気にその「情報」を求めている人が増えます。つまりお客さんとの接点が広がります。
◼️「コンテンツ」は、情報社会における「通貨」
ではその「情報」をどのように届けていけば良いのでしょうか。
広告予算が潤沢にあれば大々的にTVコマーシャルを出稿したり、人通りの多い場所に大きなビルボード広告を掲載すれば認知度は上がるかもしれません。しかしここでは、そういったナショナルブランドのプロモーションを想定していませんので、もう少し地道な方法を考えていきたいと思います。
お客さんとの接点の輪郭を掴むため、総務省が毎年発表している『情報通信白書(主なメディアの利用時間と行為者率)』や電通、博報堂などが発表している媒体資料も参考になります。
『メディア定点調査2020』、『日本の広告費(解説:インターネット広告費が6年連続2桁成長)』などを参照するのもいいでしょう。
マーケティング業界では、デジタルメディアが広告費、接触時間ともにマスコミ4媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)を抜いたことがエポックメイキングとなりました。しかしそれも昔の話となり、今では常にスマートフォンを片手に、SNSから情報を得、映像を観ることすら手のひらで済ませるのが普通となっています。
そうしたネット社会で中心的な役割を果たしているのが「コンテンツ」です。接点を広げるには、届けたい情報を「コンテンツ化」することが非常に重要になってきます。
◼️どのようなコンテンツを作ればよいか?
ネットで流通しているコンテンツは様々です。ニュースやブログ記事など「文字」がメインのコンテンツ、インスタグラムでは「写真」がメインになります。「音声」を中心にしたポッドキャスト、タレントのYouTubeデビューや、TikTokなどの「動画」コンテンツも話題です。
そこに「#タグ(キーワード)」というインターネット特有の要素が加わります。
これらのうち、どこから手をつければいいでしょうか。BtoCまたはBtoB、製品またはサービス、ビジネスまたはカルチャーなど、対象にもよりますが、まずはブログ記事を作ることからお勧めします。
記事がしっかりしていれば、そこから「動画」に展開することもできます。また「写真」にすべき場面も自ずと決まってきます。一つの記事があれば、ツイッターやフェイスブックなど、SNSとの連携も図りやすくなります。
何より、自社のブログ記事であれば、永遠に存在し続けます。先ほど述べた「キーワード」次第では、キーワード検索の結果ページに出続けます。つまり、一つの記事が恒常的にお客さんとの接点を生み出してくれる存在になるわけです。
「バズる」ことも、時には有効に働くかもしれません。しかしそれは一過性の打ち上げ花火のようなものです。
お客さんにとって有用なコンテンツが良いコンテンツであることは言うまでもありませんが、加えて、長く求め続けられるコンテンツ、テクニカルに言うと検索で上位に挙がるコンテンツが、お客さんにとってもブランドにとっても良いコンテンツだと言えます。
まずは、記事のコアになる「キーワード」を設定することから始めるといいかもしれません。
参考)キーワード検索に見るニーズ変動
Googleトレンドで振り返る Year in Search
──2020 年を見つめてこれからのビジネスを見据える5つのアイデア
◼️最後に
前回は「言葉」の重要性について触れました。今回はその「言葉」を流通させるための「コンテンツ化」について見てきました。こうしたコンテンツ・マーケティングはさらに重要になるでしょう。
今後は、YouTubeなどの映像プラットフォームにおける「キーワード」と「コンテンツ」の掛け合わせが主流になるかもしれません。
そんな未来を見据え、まずは一つの「キーワード」にフォーカスし、コンテンツづくりにトライしてみてはいかがでしょうか。
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[筆者プロフィール]
川内 祥克
株式会社TCD 取締役副社長 クリエイティブディレクター
企業ブランド、事業ブランドやサービス・ブランドの立ち上げ、プロモーション業務に従事。『ブランドのウェブ活用』などのセミナーも開催。