ブランディング考

2020.02.27

カタチのつくりかた

日比 秀一 パッケージ&プロダクトデザインセクション チーフデザイナー

世の中にある製品には必ず「デザイン」が含まれています。

我々プロダクトデザイナーは日々様々なものを見て、何を表しているのか、どのような理由でその形になっているのかを考えてしまいます。
製品の機能、形状、素材、色彩、仕上げを観察すると、それが誰のための、どのようなコンセプトを持った製品なのかが見えてきます。
この行為は職業病と言ってしまえばそれまでですが、適切なプロダクトデザインを生み出すための非常に有効なトレーニングにもなります。なぜなら読み解くのと逆のことを行うことが、我々が普段行うデザイン行為そのものだからです。

「シグニファイア」と「メタファーマッチング」

皆様が、カップを手に持っているとします。なぜそのように持ったのか、意識されたことはあるでしょうか。
「持っている」は言い換えれば「持たされている」でもあります。

使用者が使い方を考えずとも、形によって意識を誘導され、間違わずに(あるいは狙ったように)使ってもらう。これは少し前まで「アフォーダンス(誘導)」と呼ばれていましたが極めて広義であり、今では「意図を持った」アフォーダンスを「シグニファイア」※1と言います。
(※1/認知科学者ドナルド・ノーマンによって提唱された)

私たちTCDが携わった案件でこの「シグニファイア」を活用したのが、小林製薬株式会社の「糸ようじY字型」です。

奥歯の歯間にもフロスを入れやすいという特徴を持ったY字型アームを採用し、フロス系口腔清掃具の競合商品に打ち勝ちたいというテーマの中、まずは使う場面でしっかり機能するためにクリアしなければならない項目を書き出しました。

○前歯から奥歯までを清掃することができる。
○狙った歯間に糸を確実に入れられる。
○しっかり安定して持てる。
○適度な力をかけることができる。
○狭い口腔内で容易にコントロールができる。

これらの要件を満たすには、やはり「最適な持ち方」がキーになると考えました。

上の歯、手前の歯、奥歯、それぞれの歯間にフロスを入れやすい本体の持ち方を“意識せず持てる”ように、掴む場所、押し込む場所を作り、まとめ上げました。

また狭い口腔内で本体を効率よく動かせ、奥歯の歯間にアプローチしやすいことを成し得るために、「メタファーマッチング」という手法も取り入れました。「メタファーマッチング」※2とは製品が目指す効果と、保有する機能がマッチするメタファーを選び出し、カタチの参考とすることを表します。
(※2/TCD独自の呼称)

この時マッチングしたメタファーは、口腔のプロである歯科医で使われる道具でした。歯や歯石を削るためのエアータービンや歯間清掃するピンセット、ピックなど。これらに共通するのは「ツル首形状」になっていること。その形状により奥歯の歯間にも、手前の歯に邪魔をされずにアプローチできます。さらには作用点がちょうど手の延長線上に来るため、狙いが定めやすいという利点が生まれました。

この案件では「シグニファイア」と「メタファーマッチング」という手法を使用し、持ちやすく、競合商品より使いやすいカタチへと昇華できたと感じています。

TCDプロダクトでは、今後も新たな課題に対し常に最適な方法を模索し、デザイン開発を行っていきます。
プロダクトデザイン事例についてご興味のある方は、ぜひこちらをご覧ください。
→ プロダクトデザインの実績紹介

[筆者プロフィール]

日比 秀一
パッケージ&プロダクトデザインセクション チーフデザイナー

入社以来、日用品のプロダクトデザインに従事。虫歯は無し。


プロダクトデザインコラム バックナンバー
1. プロダクトデザインと共に育むブランディング
2. ロングライフデザインのススメ
3. カタチのつくりかた

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