ブランディング考

2020.04.27

今だからできる商品のアイデア
豊かな在宅生活を考えることから新商品の着眼点を見つける

須田 史義 パッケージ&プロダクトデザインセクション チーフデザイナー

今だからできる商品のアイデア

外出が抑制されている今、できることは

感染症対策で出社が限定される未曾有の状態が続いています。商品を開発し販売に至るまでのプロセスで、様々な立場のビジネスパーソンが頭を悩ませていることと思います。プロダクトデザイナーは日々新商品のアイデアを模索しています。私たちもこのような状況下で何ができるのかを考え、新たなプロダクトの視点を発見し、新しいビジネスモデルのヒントを得ようと試みています。ここでは、自らが在宅ワークを実行しているただ中、業務外で取り組んだ実験的な商品デザインをご紹介します。

在宅ワークの課題と向き合い商品アイデアを探す

在宅ワークの問題点をブログやSNSなどからピックアップしてみます。

外出できないことで運動不足になる
リモートコミュニケーションに時間を取られる
人と会う機会が減ることで刺激が不足する
生活のリズムが乱れる

など挙げれば切りがありません。要するに在宅のストレスをいかに解消するかが課題になります。問題解決の参考になるのは北欧のプロダクトデザインです。北欧に住む人々は長い冬の期間、家の中で過ごす時間を豊かにしようと生活の中で活用できるデザインを生み出してきました。照明や食器、身に着けるファブリックなどが代表的です。家で過ごす豊かな時間をデンマークでは「HYGEE(ヒュッゲ)」という言葉で表現し、自宅での生活を大切にしています。居心地よく家で過ごすためにどうすればよいのでしょう。植物が好きな私は仕事中も植物を身近に置きたいと考えました。ベランダにプランターを置いて植物を育て楽しんではいましたが、仕事で使っている部屋からはベランダを望むことができません。外の自然を身近に感じるために「外を内に持ってくる」という考えに至りました。都市の狭小住宅である自宅の部屋には植物を置くスペースがありませんが、カレンダーを掛けるように、気軽に植物を壁面にレイアウトできれば、家の中でも少しは豊かな時間を過ごすことができそうです。

スピーディーなプロトタイピング

思いついたらすぐにスケッチとプロトタイプを作成します。アイデアはすぐに頭から消えてしまうので鮮度があるうちに素早く具体化しなくてはなりません。イメージしたのは手の中に収まるほどの小さいコロッとしたモノです。プロダクトにとってサイズは重要な要素です。この場合は大きさによって設置する場所や育てる植物が限定されてしまいます。いくつかスケッチした中で、シンプルに植物を楽しめるようにミニマムなフォルムに決定しました。丸い底が宙に浮いた様子がユニークです。壁に掛ける構造はカレンダーと同じように押しピンを使います。アイデアスケッチからスピーディーに3DCADで形状を立ち上げ(15分で完成)、3Dプリンターでプロトタイプを作成します。この試作品で壁掛けの具合を確かめることができます。ピンに掛けやすく取り外しやすい、掛けているときは簡単に外れないことが条件です。大きさについては、現物を実際に見ると植物を入れる穴の内径が小さく、土を入れる容積が充分ではありませんでした。検証結果を元に形状を修正し、デザインを確定しました。

DIYでできるプロダクト

今回は手作りのプロダクトなのでホームセンターの素材を使ったモノづくりです。道端にある植物をそのまま家に持ち込んだ印象を目指してコンクリートの素材感を活かしたプランターとします。コンクリートを流し込むためのシリコン製の型を製作し、いくつか成形しました。コンクリートはアルカリの性質を持つので、プランターとして使用するためにPHを調整する処理も行いました。完成したプロダクトに少ない土壌でも育つ多肉植物を植えると、仕事をするデスク前の壁でも気軽に植物を楽しむことができます。在宅ワーク時にひとときの憩いを演出するプロダクトになりました。

簡易な市場調査としてのフリマアプリ

製作しただけで終わらせずにプロダクトを市場に出し消費者の反応を調査します。某フリマアプリに出品、原価や送料等を考慮し3個セットで販売しました。消費者の関心がダイレクトに数値化される点にこうしたアプリの利用価値があります。一週間たった現在、商品を見た人は150件、そのうち「いいね」は6件獲得できましたが、購入されることはありませんでした。商品に改善の余地があるのではないかと推測します。値段が高い、デザインの魅力が不足しているなどです。例えば、コンクリート部分にモダンなグラフィックを施して趣向性を明確にし、ターゲットを絞ることができます。ユーザーニーズに沿ったコピーでアピールすることも必要かもしれません。簡易的ですが、市場の反応を考察することで商品を改善する機会となります。

✳︎現在は販売を終了しています。

新たな可能性は探れたのか

この小規模な試みがビジネスとして新しい可能性となったのかといえば、実際はさらなる研究が必要です。SNSの調査で消費者のシーズを深く洞察する方法や、テスト販売の仕方など、デジタルマーケティングを工夫することで精度の高い商品開発が可能と思います。商品企画にデザイン思考が持てはやされ数年が経ちました。この試みでもその考え方を実践しています。デザイン思考、アジャイル開発、メイカーズムーブメント、イノベーションなど言葉は変わりますが核心部分は同じです。身の回りにある素材や技術、プラットフォームを利用して生活に関わるアイデアを形作り、人と共有して改善することです。環境が変わり言葉は洗練されますが、「どんな状況でも可能性を探求し、創造を柔軟に実践していくこと」で新たな「商品」が生まれ、生活を豊かにするビジネスが展開されていくと考えます。

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[筆者プロフィール]

須田 史義
パッケージ&プロダクトデザインセクション チーフデザイナー

TCDにてプロダクトデザイン、パッケージデザインに携る
クライアントと一体となり商品ブランドを作り上げている
オルタナ、インディー音楽が好き


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