2022.01.21

ブランディング会社のスタッフが選ぶ2021年ブランディングトピックス10

田中 恵子 株式会社TCD クリエイティブディレクター

4回目となった「ブランディング会社のスタッフが選ぶブランディングトピックス10」。今年も2021年のブランディングに関する話題を、TCDスタッフで振り返ってみました。挙がったトピックスは約30と前回よりは増加。2020年版のこのコラムではコロナでブランディング関連の話題が少ないと書きましたが、引き続きコロナ禍という状況で、多くの新しい取り組みが見られました。

ヤマトホールディングス「ネコマークが、変わります。」

最もスタッフ間で注目を集めたのがヤマトホールディングスのリブランディングでした。65年という長い間親しまれたブランドマークの刷新。親猫が子猫を運ぶ意匠はそのままに、デザインをモダナイズ。その検証過程はサイトでも見ることができます。


参考サイト)
クロネコのマークが少し変わります。|ヤマトグループ

Facebookが社名を「Meta」へ

人と人との繋がりを支えてきたFacebookがメタバースこそ社会のつながりの進化と捉え、「メタバースの実現」というビジョンを掲げて社名を「Meta」へと変更しました。Metaがメタバースをどう捉え、そこで何を実現して行こうとしているのか、マーク・ザッカーバーグが基調講演で豊富なムービーと共にプレゼンテーションしておりわかりやすいです。


参考サイト)
Metaについて | メタ

新しいプライベートブランド「ファミマル」デビュー

2020年はローソンがプライベートブランドのデザインを一新しましたが、2021年はファミリーマートがリニューアル。ブランドコンセプトからネーミング&ロゴの基本方針、デザインコンセプト、形状などがWebサイトで解説されています。「負けていたのはイメージでした」という新聞広告がまさにブランディングの重要性を語っていますね。


参考サイト)
新プライベートブランド「ファミマル」

ダイソーの新ブランド「Standard Products」デビュー

2019年にリブランディングしたダイソーが「ちょっといいのが、ずっといい。」をコンセプトとした新業態のショップをオープン。ダイソーは100円の多種多様な雑貨などがメインですが「Standard Products」はワンプライスではなく300円から1,000円ほどの商品を展開。デザインはごくシンプルで機能性も備えたものがラインナップされています。ダイソーが提案する新しいスタンダード、どう定着していくのか興味深いです。

参考サイト)
新業態「Standard Products」オープンのお知らせ | お知らせ | ダイソー

コカ・コーラの新デザインシステムとブランドプラットフォーム

コカ・コーラがスペンサーロゴを大きくあしらい、ブランドカラーの「赤」がより印象的なシンプルで力強いパッケージデザインにリニューアル。この取り組みはグローバルなもので、約5年ぶりの大幅刷新となりました。
合わせて「Real Magic #日常は魔法だ」というブランドプラットフォームも立ち上げられ、ここではスペンサーロゴが包み込むような形状になった「Hugロゴ」がキーモチーフとしてキービジュアルやキャンペーンに展開されています。


参考サイト)
赤は、おいしさのしるし。”が、さらに印象強く「コカ・コーラ」3製品が約2年ぶりにパッケージ一新 2021年9月13日(月)より全国で新発売 | プレスセンター | 日本コカ・コーラ株式会社

Coca-Cola Launches ‘Real Magic’ Brand Platform | Coca-Cola News

「Autodesk」ブランドリニューアル

AutoCADなど設計やエンジニアリング系ソフトウェアを扱うAutodeskがロゴ、ルック&フィールを刷新。カラフルで立体的だったブランドロゴがモノカラーのシャープな印象のシンボルになりました。このマークはブランドが持つ「実行力」のイメージを具現化したものだそう。また、BrandHubサイトではそのコンセプトムービーやデザインシステムを見ることができます。

参考サイト)
Autodesk Brand Hub
オートデスク、ロゴおよびルック・アンド・フィールを刷新

「Audi」新デザインシステム

ここ数年、カーブランドのリブランディングが相次いでいますが、2021年はボルボ、プジョー、ルノーがリニューアル。どれも車オーナーからすれば大きな刷新だったかと思いますが、ブランディング観点では「Audi」に注目したいです。
「Audi」のブランドマークのリニューアル自体は2017年に実施されましたが、2021年にはブランドマークやロゴが様々なウェイトに展開するデザインシステムを導入し、シンボルマークでは珍しくトリミングも可能に。デジタルデバイスや仮想空間など広がり続けるビジュアル領域に対応できるフレキシブルなシステムになっています。

参考サイト)
Redefining Progress

100周年の「シマノ」新たなコーポレートブランドロゴ

自転車部品や釣具などのメーカー「シマノ」が100周年を機にブランドロゴをリニューアル。ロゴタイプそのものは変更せず、コーポレートロゴに大地、空、海を表したトリコロールラインを配置し、コーポレートとプロダクトのブランドマークを切り分けています。

参考サイト)
シマノコーポレートブランドロゴの改定について | シマノ

「ファイザー」ロゴデザインリニューアル

製薬企業大手のファイザーが12年ぶりにロゴをリニューアル。創業以来、ロゴ中心だったブランドマークにシンボルが加わりました。新しいシンボルはPを思わせるリボン状のもので、錠剤の形を分解し、DNAのらせん構造をモチーフにしたそうです。ロゴタイプそのものも、丸みがあったものからよりシャープな印象なりました。
リブランディングの発表の際に、ムービーでコンセプトを紹介する手法は、業種に関わらず普及してきた気がします。



参考サイト)
Identity Elements | Corporate Identity Site

「スワロフスキー」のリブランディング

クリスタルメーカーのスワロフスキーは32年ぶりにブランドロゴをリニューアル。繊細なデザインだった白鳥モチーフが、シンプルなラインのアイコンとなって生まれ変わりました。新ブランドマークはクリスタルでも表現され、Instagramのムービーなどでカラフルに煌めく魅力を伝えています。
店頭イメージもブランドマークと合わせてアップデートされ、「ワンダーラボ」をコンセプトに鮮やかで遊び心のある空間へと生まれ変わっています。


[筆者プロフィール]

田中 恵子

株式会社TCD クリエイティブディレクター

コンセプトからそのデザイン、コミュニケーションまでさまざまなブランド開発プロジェクトに携わる。デザイン領域にこだわらず暮らしをよりよくできるモノゴトをめざす。

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