2023.12.21

ブランディング会社のスタッフが選ぶ2023年ブランディングトピックス

田中 恵子 株式会社TCD クリエイティブディレクター

今年も「ブランディング会社のスタッフが選ぶブランディングトピックス」として、2023年のブランディングに関する話題をTCDスタッフで振り返ってみました。今年リニューアルされたり発表された約40のブランディング事例から特に注目したものをご紹介していきます。
ブランディングはそのロゴやVIなどのデザインだけではなく、ブランド価値を高めるためのあらゆる活動を指しますが、そうなるととても多岐にわたるため、このコラムではブランドデザインを中心にピックアップしています。


大きな変化への挑戦

ブランディングで大きな変化、と言えばブランド名や社名変更です。今年は大きな名称変更の事例が多く見られた1年でした。

Twitterの名前が「X」に変更へ

最も注目を集めたのはこの突然のリニューアルでした。青い鳥のアイコンから「X」へという大胆な変更。ドメインやロゴマークも名称発表から程なく変更されて驚きました。Twitterのリブランディングで、そのデザインガイドラインの行末が気になっていた側からすると、あれは無くなってしまうのかと残念に思っていたのですが、コーポレートサイトなどをみるとVIなどは継続していそうです。ロゴは変えてもVIは変えないのか、この変更には時間をかけているのか、ロゴデザインとの親和性を考えると後者でしょうか。


「凸版印刷は、TOPPANへ。」社名変更を訴求する広告展開




こちらは日本の大きな社名変更。大手印刷会社の凸版印刷株式会社がTOPPANホールディングス株式会社へ社名変更し、パーパス策定、活発な広告展開を行いました。ブランドロゴ自体は、これまでも用いられてきた「TOPPAN」を継承。印刷の文字も社名から消え、多様な事業への対応と、グローバル展開を見据えていることがサイトからも感じられます。

参考サイト)
凸版印刷は、TOPPANへ。 | 社名変更 特設サイト


日本電産、「ニデック株式会社」に社名変更

こちらも大きな社名変更です。「TOPPAN」と同様に、長く用いられてきたブランドロゴ「Nidec」に社名を合わせる形でリニューアルされました。こちらもグローバルでの表示の統一が目的とされ、新社名の広告展開が行われています。





「LINEヤフー株式会社」が誕生

メッセージサービスのLINEとインターネットサービスのヤフー!が、経営統合から2年が経過し、いよいよ社名も統合しました。新社名は「LINEヤフー株式会社」、ブランドロゴも「LINEヤフー」の表示になりました。従来のLINEロゴの印象を受け継ぎつつも、ややシャープな印象を与えるデザインになっています。合わせてミッション・バリューも策定。ビジョンは?と思ったら、ブランドブックではこれを「OurAim」と表していました。自分たちの達成したい目的、と明確に言い切っています。

参考サイト)
「LINEヤフー株式会社」発足



守り受け継ぐ歴史の表現

変わるだけでなく守り受け継ぐのもブランディングの重要な役割です。2023年はレトロブランディング、というブランディングトレンドをご紹介しましたが、そうした試みも多く見られました。

50万人の投票で選ばれたヌサンタラのロゴマーク

インドネシアの首都「ジャカルタ」が地盤沈下などの理由で、新首都に移転することになりました。これを受けて、10 人のインドネシア人デザイナーが「
首都のロゴ」をデザイン。国民の投票により「生命の木」をモチーフにしたロゴが選ばれました。インドネシアでは古くからモチーフとなっている伝統的な樹をシンボルにしたアイデンティティとなっています。



参考サイト)
Ibu Kota Nusantara



ペプシ生誕125周年を記念してのロゴリニューアル

大手飲料のペプシが伝統を受け継ぐ形で14年ぶりのリニューアル。赤と青のエンブレムの印象をよりはっきりとさせる、力強いロゴデザインとなっています。PEPSIは何度かロゴを変えてきていますが、 1950年以降はこの赤と白のアイデンティティを守ったリニューアルを行なってきています。「ブランドの自信と堂々とした考え方を反映している」そうで、確かに王道感のあるクラシックなデザイン。合わせて更新されたVIは、何かを発信するようなパルスモチーフが取り入れられ、こちらはぐっとモダンな印象になっています。


参考サイト)
ペプシのロゴが変更へ。新デザインは、「未来への大胆なビジョン」を表現


洋菓子のヒロタ「懐かしくて新しい」リニューアル

日本国内では創業100周年にあたって洋菓子のヒロタがロゴやVIをリニューアル。ロゴは創業当時のロゴをイメージしたデザインになり、ブランドモチーフもレトロなチェック柄に。パッケージや店舗にも展開され、ヒロタの懐かしい印象をそのままに、現代的にアップデートしたデザインとなっています。

参考サイト)
ヒロタ創業100周年特設サイト|洋菓子のヒロタ


不二家のビジュアルアイデンティティ刷新

こちらもスイーツのリブランディング。不二家は「おいしい笑顔」を届ける店を目指して「店名ロゴ」をリニューアルし、新たに「スマイルマーク」を制定しました。不二家といえば昭和 25 年に誕生したペコちゃんのキャラクターが印象的ですが、「スマイルマーク」はそのペコちゃんを思い出させる笑顔をモチーフにしたマークに。従来の「ファミリーマーク」はそのままに、3つのマークを使い分けていくという方針のようです。
参考サイト)
不二家洋菓子店の新しいロゴデザインが誕生! そこに込められた願いとは?




歴史を守りながらの挑戦

そして、歴史や伝統を守りながら新たなことに挑戦したい、という時にもブランディングの出番ですね。大きく変わるだけが挑戦ではない、何を目的にどう変わるか、丁寧な計画が必要です。

京都 西本願寺のブランディング

お寺がロゴマークを作る、という試みも多くみられるようになってきましたが、タグラインまで制定しているのは珍しいと思います。社会的な役割を広く内外に伝えるために、ロゴと合わせてタグラインが発表されました。ロゴデザインもかなりモダンで軽やかな印象で、お寺のイメージを大きく刷新しそうです。


参考サイト)
公式ブランドマーク及びタグラインを策定 | トピックス|龍谷山 本願寺(西本願寺/お西さん)


「あずきバー」をどこまで変えるか、変えないか

発売50周年を迎えるロングセラー商品「あずきバー」がリニューアル。こうした商品の場合、小さな変更でも顧客は違和感を感じやすいもの。大胆な変更ではなく、長く愛されてきたブランドのアイデンティティとして何を守っていくかを丁寧に検証しながらのパッケージリニューアルとなりました。
参考サイト)
井村屋の「あずきバー」はなぜリニューアルした?


酒造「八海山」のコーポレートロゴ

100周年を迎えた八海醸造が、グローバル展開を視野にコーポレートロゴを「Hakkaisan」と制定。新たに開発されたものなのに、昔からあったようなどこか懐かしさも感じさせる存在感のあるロゴデザインに。さっそく100周年記念酒などにも用いられ、堂々とした佇まいを演出しています。
参考サイト)
「コーポレートロゴ」公開 – 100周年記念サイト|八海山



振り返ってみると今年は、大きなグローバルブランディングのテーマが少なかったように感じます。Johnson & JohnsonやNOKIAのブランドリニューアルも事例にはあったのですが、そこまで大きな話題にはならなかった印象です。そんな中で、今年最も注目を集めたのは突然のリブランディングとなったXでした。ブランディングは通常、しっかりと時間をかけ計画されるものですが、こんな力技で変われるものなのかと驚かされました。しかし、ブランドとしてうまくいったようには見えないので、やはり計画は大切かなと痛感します。
あと10日ほどで新しい年、あなたは何を計画するでしょうか?それでは、良いお年をお迎えください。

[筆者プロフィール]

田中 恵子

株式会社TCD クリエイティブディレクター

コンセプトからそのデザイン、コミュニケーションまでさまざまなブランド開発プロジェクトに携わる。デザイン領域にこだわらず暮らしをよりよくできるモノゴトをめざす。

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