2022.12.21

ブランディング会社のスタッフが選ぶ2022年ブランディングトピックス

田中 恵子 株式会社TCD クリエイティブディレクター

5回目となった「ブランディング会社のスタッフが選ぶブランディングトピックス」。2022年のブランディングに関する話題を、TCDスタッフで振り返ってみました。さまざまなブランディングやブランドコミュニケーション事例、約40ほどのトピックから特に注目したものをご紹介していきます。


グローバルイベントで感じるブランドコミュニケーションの変化

今年の大きなグローバルイベントといえばワールドカップ。みなさん楽しまれたでしょうか?日本の活躍もあってか、前回以上の盛り上がりを感じました。

TwitterやYoutubeがサッカーニュースの入り口となるなど、ソーシャルネットワークが私たちのイベント体験やその共有の仕方を変えました。また、AbemaTVのようなインターネットTVのおかげで、どこにいても試合を見たり振り返ったりすることができるようになりました。カタール・ワールドカップ自体も、その文化を魅力的に表現したイントロがいつも効果的に使われており、とても印象に残りました。今までの大会の紹介映像を振り返ってみると、映像・音響の面で大きく変化していることに驚かされます。


All World Cup Intros 1966 – 2022


また、Googleの検索結果なども2018年からより洗練されており、前回ワールドカップの際のブログと見比べるとその変化や今のGooleのサービスがわかり興味深いです。

参考サイト)
2022年度版 Google で FIFAワールドカップ™ をさらに楽しむ方法をご紹介
2018年度版 Google でワールドカップを楽しもう

グローバルイベントを彩るマスコットキャラクター



この後のグローバルイベントは、2023年のラグビーワールドカップ、2024年のパリ・オリンピックと続いていきます。日本でも2025年に万博開催が決定していますね。この万博のマスコットキャラクターの決定も話題になりました。不思議なシンボルに手足が生えたような、まるで未知の生物です。すでにぬいぐるみやさまざまなグッズ展開もされており、Twitterでも大活躍。着実にファンを増やしていっているようです。また、パリ・オリンピックでも先月、マスコットキャラクターが発表されました。今回は「フリジア帽」という伝統的なフランスの帽子が擬人化(?)されています。
万博のミャクミャク、パリ・オリンピックのオリンピック・フリージュ、どちらもいわゆる動物モチーフではなく、無機物からの擬人化となったのは偶然でしょうか。(カラーリングのせいか、その有機的な形のせいか、集合したビジュアルが何だか似て見えます。)
こうしたグローバルイベントのコミュニケーションでは、ソーシャルネットワークの浸透もあってか、ダイバーシティ的観点を抑えつつフレンドリーさが重視されてきているように思います。

参考サイト)
公式キャラクターについて | 公益社団法人2025年日本国際博覧会協会
Paris 2024 – Les Mascottes



浸透してきたパーパスブランディング



企業やブランドが、社会においてどういった存在なのか、なぜその企業活動を行うのか、といった姿勢を表す言葉「パーパス」。話題になり始めて3年ほど経ちますが、この「パーパス」を軸にブランディングを行った企業の事例が増えてきたと感じます。これまでのミッション、ビジョンといったコンセプトに「何のために」という要素を加えることで、より企業の姿勢を鮮明にできる力があるのではと思います。

参考サイト)
Bandai Namco’s Purpose | 会社情報 | 株式会社バンダイナムコホールディングス
エプソングループ「パーパス」を制定 | ニュース | エプソン
パーパス – マクニカ




財産を受け継ぎ、アップデートしていくリブランディング

創業当時やパワーがあった頃のロゴデザインに、改めて理念や思いを込めてリブランディングしていく事例も最近のトレンドです。顧客の思い出の中にあるイメージに訴えかけることで、懐かしさから再び手に取ってくれたり、創業の思いを改めて社員に伝えたり、歴史あるブランドであればあるほど効果は大きいと思われます。また、このところレトロなデザインが人気なことも、懐古的なスタイルを選択しやすい一因かもしれません。

参考サイト)
ロゴ一新し、ロングセラー商品を改名 ユーハイム100周年のリブランディング | AdverTimes.(アドタイ) by 宣伝会議
コンバースがブランド115周年を機にロゴ刷新 「オールスター」で次世代モデルも | 繊研新聞



また、Instagramも、6年前のロゴリニューアルからリブランディング。こちらはブランド刷新と言うよりも、ブランド進化といった印象です。アップデートの中心となっているのはアイコンのカラー変更と、世界各国語に対応したオリジナルフォント「Instagram Sans」。アイコンは基本の色の組み合わせはそのまま、よりビビッドに。フォントは日本語も実装されており、ブランドマークの角ばった丸みを感じさせるゴシック書体となっています。
参考サイト)
Instagramのブランドリニューアル | Instagramについて




大胆に、よりシンプルに、価値を再定義するリブランディング



クリエイティブディレクターの変更と合わせ、大きくブランドリニューアルしたのはフェラガモです。ブランド名は「サルヴァトーレ フェラガモ」から「フェラガモ」となり、筆記体だったブランドロゴは少しセリフのあるゴシック書体となり、かなりモダンな印象に変わりました。
また、日本での展開は未定ですが、米国とカナダではバスキン・ロビンス(サーティーワンアイスクリーム)がリブランディング。ピンクとブルーだったカラーとポップな印象だったロゴデザインから、シンプルで少し大人びたロゴへとリニューアルしています。

参考サイト)
「フェラガモ」がロゴ刷新、新ディレクターによるデビューコレクション発表へ
Baskin-Robbins Unveils New Logo and Visual Identity From ChangeUp




世界観を生み出すネーミングのチカラ



商品のブランディングにおいて、最初にターゲットとつながるのは主に「ネーミング」です。マスメディアが隆盛を極めた時代には、視覚に訴える表現が不可欠でしたが、文字や音声といった現代のチャンネルでは、ネーミングが優先されるようになってきました。意外性のある言葉を組み合わせたネーミングや、ブランドコンセプトを訴求するための意味深長なラベリングが見られるようになりました。
参考サイト)
「ケイト」に聞いた絶好調の理由 “リップモンスター”やSNS世代に刺さる商品誕生の裏側 – WWDJAPAN
株式会社マンダム|ニュースリリース|~Z世代の声から生まれた、顔のパーツを細工するコスメブランド「CYQ」誕生~





今年はワールドカップや万博関連のビッグイベントがあったせいか、プロモーションやソーシャルメディア活用が特に目立った一年だったと感じています。ユーザーと直接結びつくことが容易になった今、より伝わるメッセージと、寄り添っていく姿勢が必要ではないかと思います。

そして今回のこのコラム、一部をAIでリライトを行なってみました。ブランディングとは直接関わりはないですが、デザインやクリエイティブではAIも大きなトピックだったかと思います。AIでのリライトをそのまま使えるか、というともう少しというところもあるのですが、自分では意識していなかった書きグセに気づくなど、チェックツールとしては十分効果があるなと実感させられました。来年はさらに進化したAIサービスを目にすることになりそうです。それでは、良いお年をお迎えください。

[筆者プロフィール]

田中 恵子

株式会社TCD クリエイティブディレクター

コンセプトからそのデザイン、コミュニケーションまでさまざまなブランド開発プロジェクトに携わる。デザイン領域にこだわらず暮らしをよりよくできるモノゴトをめざす。

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