2017.02.07

企業ブランディング2017〜「働き方改革」は究極のインナーブランディング〜

生山 久展 株式会社TCD ブランディングオーソリティー

こちらの連載では、企業ブランディングについて三回にわたり考察していきたいと思います。第一回目は、「働き方改革」についてです。

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安部政権は今、「働き方改革」を最重要政策に掲げています。社会問題化している過労死、過労自殺への対策ということもありますが、日本人の長時間労働を是正し、生産性を向上させ、日本の国際競争力を高めることが狙いだと言われています。かつて長時間労働は日本人の勤勉さの象徴であり、長く働くことが美徳とされた時代もありました。しかし、現在では多くの企業で労働時間を短縮する取り組みを始めています。長時間労働はメリットよりもデメリットが大きいという認識が拡がってきたことと、一旦「ブラック企業」という噂が立てば優秀な人材の確保が困難になることも理由の一つでしょう。

所謂ゆとり世代、さとり世代と呼ばれる人たちが社会人となり、働く価値観や会社への希望も旧世代とは大きく変化してきています。彼らの価値観や希望に単に迎合するのではなく、それを企業のエネルギーに変えていけるような経営が求められていると思います。

そんな中で、先日あるセミナーでサイボウズという会社のワークスタイル改革のお話を聞く機会がありました。サイボウズは97年創業のITベンチャー。WEB経由で情報共有ができるグループウエアで急成長を遂げてきた会社です。当時は長時間労働が常態化し、05年の離職率はなんと28%に達したそうです。創業者の青野社長は、多くの人がより長く働ける会社を本気で目指して、ワークスタイル改革の取り組みを始めます。そのコンセプトは「社員が希望する働き方をすべて取り入れる」というもので、100人いれば100通りの人事制度を作るという画期的なものでした。

社員は「時間と場所」を自由に選択することができます。時間については「時短」だけでなく、「時長」も認めています。若い人の中には、今は自分を成長させる時期だと考えていて、時間を気にせず仕事に集中したいと考える人もいます。こうした人の働く意欲にも応える制度になっています。一方、場所については会社か在宅かを選択するわけですが、在宅勤務でも情報を共有できる優れたツール(自社製品)を持っているために、よくネックになるコミュニケーション面での問題はないそうです。また「時短」を選べばやはり給与はその分下がるのですが、成果に応じた給与の見直しを実施しています。子育てや介護など止むを得ず「時短」を選択する人の業務効率、生産性は高いことが多いため、このパフォーマンスをしっかり評価しているそうです。これ以外にも様々な改革を進め、15年の離職率は4%にまで引き下げることに成功されています。この辺りの話は青野社長の著書「チームのことだけ、考えた」に詳しく書かれていますので、興味のある方はぜひご一読ください。

チームのことだけ、考えた。
チームのことだけ、考えた。
青野 慶久 (著)
1,620円(税込)

最近、経営者や管理職の方から、新しい世代の社員の気持ちが分からないという話をよく耳にします。彼らは決して働く意欲がないわけではありません。彼らの価値観や気持ちを汲み取りながら、適切にモチベーション向上に取り組むところと、「最近の若い者は・・・」と愚痴ばかりこぼして何もしないところでは、後になって企業力に大きな差がついてしまいます。サイボウズのレベルまでの取り組みは難しいかも知れませんが、やれることから少しずつでも前に進めてみませんか?社員が安心して働けて、健全なモチベーションを引き出すワークスタイルシフト-今企業に一番必要なインナーブランディングはこれかも知れませんね。


関連リンク:
サイボウズ株式会社

企業ブランディング2017

[筆者プロフィール]

生山 久展

株式会社TCD ブランディングオーソリティー

戦略開発、調査・分析、商品開発、販促展開まで幅広いブランディング業務に従事。30年余の実務経験をベースに、的確な現状分析から本質的な課題解決のプランニングを得意とする。

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