2024.11.15

インナーブランディング実践編②
パーパスを日常業務に結びつけるには?

川内 祥克 株式会社TCD 取締役副社長 クリエイティブディレクター


■社内に“自信”を与え、社外に“共感”を生む、デザイン経営


こちらでは、デザインの力を活かして経営や事業の推進力を高めたいリーダーに向けて、インナーブランディングの「運用フェーズ」について見ていきます。

パーパスやMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を定めたものの、なかなか社内に浸透しない。その実現に向けて行動に移せていないといった相談もよくいただきます。

前回は、インナーブランディングに取り組む際に注意するべき5つのチェックポイントをご紹介しました。

今回は、具体的にどのようにして社員の行動や日常業務に結びつけていくか。実際にパーパスやMVVを組織全体に浸透させ、日常業務に結びつけるための具体的な手法を見ていきます。



1. バリュー(行動指針、価値観)を具体化する
2. ワークショップを通じて「自分ゴト」化を促進する
3. アンバサダーを育てる
4. 成果や成功体験を共有する




1. バリュー(行動指針、価値観)を具体化する

パーパスやMVVを日常の行動に落とし込むためには、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)のうち、とりわけバリューを具体化して明示する必要があります。

バリューに定められた行動指針、または価値観が抽象的な状態だと、社員はどのように日常業務に活かせば良いかがわかりません。

行動指針を分かりやすく示すには、例えば顧客対応であれば「顧客の期待を超えるため、隠れたニーズを見つける」といった具体例を出し、部署ごとの特性に合わせる必要があります。

開発部門であれば「品質へのこだわりをどのプロセスで意思決定に反映させるか」など、より現場に即した課題設定ができます。

このように、行動指針を具体化することで、社員はMVVをより身近に感じることができ、日々の業務でどう実行すべきかを考えるきっかけになります。



2.ワークショップを通じて「自分ゴト」化を促進する

社員がパーパスやMVVを「自分ゴト」として捉え、実践できるようにするためには、社員同士でディスカッションする場を設けることが効果的です。

特に、インナーブランディングの初期段階では、社員がパーパスやMVVの意義や目的を自分自身の言葉で理解し表現できるようになることが重要です。

例えばワークショップでは様々な部署をまたいだチーム編成で、パーパスを日常業務にどのように活かせるか、またはどのような行動がパーパスに向かっている行動か意見を出し合います。

違う立場の社員が意見を出し合うことで、新しい気づきや発見に繋がり、アクションアイデアに広がりが生まれてきます。このように自分の立場で考えることで少しづつMVVが「自分ゴト」化していきます。

また、ワークショップで出た意見やアイデアを集約し全社に共有、また経営層からアイデアに対するフィードバック、意思決定を行うなど、インナーブランディングの活動をより業務に直結させていくことで「自分ゴト」化が強化されていきます。



3.アンバサダーを育てる

インナーブランディングを強化するため、組織内でその推進を担うアンバサダーを育てる必要があります。

アンバサダーは、組織の価値観を体現し、他の社員にインスピレーションを与える存在として、日常業務の中で模範的な行動を示します。

そのため、組織的にアンバサダーをフォローアップする、スキル向上の機会を提供するなど、彼らが組織内でリーダーシップを発揮できるよう支援する体制をつくる必要もあります。

アンバサダーをしっかり育てることは、その存在によって、インナーブランディング活動が一時的な取り組みではなく、持続的な文化形成に繋がるようになります。インナーブランディングにおいて最も重要な存在といえます。



4.成果や成功体験を共有する

パーパスやMVVに即したアクションを積極的に共有することも重要です。成功事例を全社で共有し、どういった行動、取り組みが効果的か、具体的な成果を上げているかを全員で振り返り、新たな気づきを得る機会を設けます。

また、成果を上げた社員やチームを表彰することにより、社員がパーパスやMVVに対する実感を持ち、さらなるモチベーションが生まれます。

こうした一連の活動は、社員のエンゲージメントを高め、組織の文化として定着させることへと繋がります。

味の素グループは、まさにパーパスを経営の中軸にそえている企業です。ASV(AJInomoto Group Creating Share Value)を旗印に様々な活動を行っており、パーパスを体現した取り組みにASVアワードという表彰制度を設けています。



今回は、パーパスやMVVを日常業務に結びつけるための具体的なアプローチとして、「行動指針の具体化」「自分ゴト化の促進」「アンバサダーの育成」「成果の共有」の4つのステップをご紹介しました。

既に取り組まれている内容もあったかと思いますが、これらの活動を通して、パーパス・MVV実践の促進にお役立ていただければ幸いです。


[筆者プロフィール]

川内 祥克

株式会社TCD 取締役副社長 クリエイティブディレクター

企業ブランド、事業ブランドやサービス・ブランドの立ち上げ、プロモーション業務に従事。『ブランドのウェブ活用』などのセミナーも開催。

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